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冷遇武家の次男坊、乱世に揉まれる。今川了俊物語  作者: 山根丸


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15/17

今川範氏

 ・・・


 ?


 貞世は、扇を弄ぶ。


 素人目にもわかる良い造りのソレ。


 なぜくれたのだろうか。


 ふむ。考えたところでわからない。初陣祝いだというから素直にうけとっておこうか。


 貞世は考えるのをやめると、扇を懐にしまった。


 口からでまかせを言う息子に愛想をつかしたのだろうかとも思うが、それにしてはどうも・・・妙だ。


 父の奇妙な様子に首をかしげる。殿村に問いかけようとしたその時、若い男に声を掛けられた。


「やあ、貞世。」


 きゅっと眉をひそめたが、すぐに直して青年に向き合う。


「ご無沙汰しております。兄上。」


 この男に、何を言われるかわからない。


「久方ぶりだね。」


 駿河今川家当主、今川範国の長男。今川範氏。


 貞世の兄にして、一番嫌いな男である。


 ※


 イスに座るよう促される。


 一刻もはやくこの場から逃げ出したいが、そうもいかない。


「さて、貞世。」


「・・・はい。」


「無様だね。」


「・・・は。」


「君が連れていった兵を見たよ。20は残っているかな。」


 34人です。兄上。大和に残した兵を含めると42人です。


「民は国の礎だというのに、武功のためにないがしろにするとは。」


 そんなことはしていません。


「君は《《幼い》》けれど、だからしょうがないなんてことはないんだよ。」


 他家も集まる一画で、これ見よがしに赤鳥紋の刺繡が入った外套をひるがえし、声高らかに範氏は言った。


 はあ、とため息をつくと、姿勢を正す。


「僕らの教育不足で、兵にはすまないことをした。」


 範氏は、爽やかな容貌をしている。人当たりもよく、真面目で穏やかと評判だ。


 だが、こいつは一時が万事この調子だった。


 なにくれとなく貞世を貶める。この世の悪事は貞世のせいだと言わんばかりの数々。


 そのすべてを、「貞世のため」という建前でやっているのでたちがわるい。


 自分でやることもあるし、取り巻きにやらせることもある。


 貞世が邸に居場所がない、その最大の原因がこの男だった。


 うざったいことこの上ないのだが、今日は僥倖といえた。ここでこいつに「武士としての価値なし。」とでも言ってもらえば、兄に言われたことを免罪符に出家できる。


 だが、こいつは建設的な話は一切せず、ただただ貞世をけなし続けると、満足したのか去っていった。


 後には、周囲が起立しているなか一人座る貞世と、ざわざわした好奇の目。


 ・・・嫌いだ、あいつ。





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