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騎士の娘は公爵の「お手付き」を目指します  作者: 中里勇史


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3/4

女騎士は気持ちが悪いです

 私は、「女では騎士になれない」ということを理解した。騎士とは君主に軍事奉仕を提供する身分である。その奉仕の見返りが領地だ。軍事奉仕が務まらない女に騎士身分を与えないという法律は、理にかなっている。


 弟は、武芸を習い始めた。木製の小さい剣を振り回したり、子供用の弓を引いたりしている。騎士の家では、こうして子供のときから騎士たる鍛錬を施す。同時に、家臣である従者の子も育成する。従者の中に見どころがある者がいれば推挙して、君主によって騎士に叙任してもらうこともある。

 騎士とは、身分であり、階級だ。最下層とはいえ貴族のはしくれであり、平民ではない。騎士に叙任されるということは、貴族になって領地を与えられるということだ。「騎士になりたい」と言っても騎士にはなれない。騎士になるには騎士の家に生まれる必要がある。あるいは騎士の従者として手柄を立てるかだ。

 騎士の養成所があるわけでもない。騎士に必要な武芸や作法は騎士の家で親や従者から学ぶしかない。その辺の平民が「教えてください」と言っても教えてはもらえない。私の弟は、騎士階級である父の子として生まれたから、騎士としての武芸と作法を学ぶことができたのだ。元服するまで生きていれば、騎士として叙任されるだろう。


 そういえば、「美しい女騎士」が悪人を懲らすという痛快な伝説や叙事詩がある。村祭りのたびにどこからともなく現れる吟遊詩人は、美しき女騎士の活躍を歌い上げる。

 これについて父の意見を聞いてみた。父は「ただの作り話である」として、一笑に付した。

 だが、幼少期から努力したら、騎士には叙任されないにしても馬を駆って戦う女戦士のようなものになることはできるのではないか。

 父は「絶対不可能とは言えぬ」と言う。生まれつき向いていなかった、努力が足りなかったなど理由はさまざまだが、騎士の家に生まれながら武芸が身につかぬ男もいる。

「であれば、生まれついての資質や努力によって武芸を身に付けた女がいてもよい」

 と父は言う。

 半ば伝説であり真偽は分からないが、騎士の夫と共に戦場に行って敵将の首を三つも挙げたという女性の話もあるのだそうだ。


 だが、と父は付け加えた。

「そうした女が美しいのかどうかは分からぬ」

 この点にも私は思い至らなかった。頭を石で殴られたような衝撃を受けた。いや、石では痛過ぎる。麦わらの束くらいにしておこう。

 叙事詩などに女騎士が登場すると、漠然と「女神のごとく美しくて若い女性が白馬に乗って剣を振るっている」場面を思い描いていた。だが、私が知る騎士は皆、固い筋肉が盛り上がっており、巌のようにゴツゴツしている。

 騎士として重い甲冑を着て重い武器を使いこなす以上、女騎士とて筋肉でガチガチに覆われていなければならない。その姿はもはや男と変わりがない。仮に顔は美しかったとしても、体は父と同じということだ。

 顔は美女だが体は父……と想像して、気分が悪くなった。食欲も失せた。

 その夜、夢を見た。顔だけ美女になった全裸の父に追い回される夢だ。


 とても気持ちが悪かった。

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