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プロローグ
※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
「僕には愛するシルビアがいる。よって、君との婚約を破棄する。」
入り口正面の階段の踊り場の上から、僕と腕を絡ませた横の男が目の前の銀髪を指差して言う。
どこまでもテンプレートな流れと頭の悪い話し方に笑いそうになる。いや、笑ってしまった。まあ、この流れに持って来させたのは僕だから、僕の頭もよろしくはないが。
目の前の麗しい姉の潤んだアメシストと視線が交錯する。
ああ、僕の命より大切な可愛い姉様。
本当は僕が幸せにしてあげたかったけれど、姉様には姉様のことを何よりも大切にしてくれる隣国のイケメンなスパダリ王子がそろそろ現れるはずだから。
それを分かっていても姉様の辛そうな姿は見ていて辛い。
けどきっと姉さんのことだから、『妹』の幸せを願って、横の男の確定事項に承諾するだろう。
それに僕は何としても、姉様とこの右手にいる男との婚約を阻止しなければならないのだ。
たとえ、僕が性別を偽っていることがバレて殺されたとしても。