怖いってこういうことだったんだ。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・」
ブラックアウトした画面から格納庫の映像に切り替わったが、状況についていけず、ただ荒れた呼吸をするしかできなかった。
「ちょっ、ちょっと!大丈夫なの!?」
「お兄ちゃん〜大丈夫~?」
「はぁ・・・はぁ・・・・はぁ・・・」
モニター脇からフェードインしながらMayaとKayaが話しかけてくれるが、いまいち頭に入ってこない。
「ねぇ!ねぇってば!!なんでこんなになってんのよ!!」
「起きて〜お兄ちゃん〜。」
「・・・」
モニターいっぱいに2人の顔が大きく表示され、その表情はアニメチックといえど、心配してくれているのがありありと伝わってくる。
そこに考えが着地すると、やっと二人に返事していないことに気づいた。
「あ、ああ。大丈夫。」
ただ、どう返して良いか分からず、短く返すに留まった。
「ホントに!?アタシ達の事分かる!?今日は何日!?今何戦目!?」
「大丈夫だって。君たちはMayaとKayaで双子の姉妹、今日は10月4日、今は2戦目が終わったところ。」
「スリーサイズは〜?」
「男は基本測りません。」
「大丈夫そうね。緊急abortを使うだなんて何があったの?」
「じつは〜。」
情報共有のため、ゲーム開始からabortするまでの経緯をKayaがMayaに伝えた。
どうも最後の振動の嵐は、敵からの榴弾砲が胸部に直撃し続けていたために起こっていたらしい。
そのため、転倒していたり、機体の向きがアッチへコッチへと変わっていたりで、操作を受け付けなくなっていたらしい。
「そう、アタシが到着する前にそんなことが起きてたのね。いい経験ができたみたいね。」
てっきり馬鹿にされるのかと思っていたが、Mayaは特に笑うこともなく淡々と答えた。
今までのMayaの行動からすると、珍しいものを見ているのではないだろうかと思ってしまう。
「ん?何?」
「いや、もっとしっかりしろとか色々言われるのかと思った。」
「こっちこそ間に合わなくて悪かったわね。今私たちの機体設定は超長距離からの攻撃対策はしていなかったのよ。だからKayaも対策のしようがなかったって状態だったろうし。対策しようにもそこにつぎ込むリソースがなかったってのもあるんだけど・・・いえ、これらは言い訳ね。」
なるほど。対策してない+素人操縦だとあんな状態になるらしい。
「それに、そんな怖い思いしたのを揶揄うほどAI腐ってないわよ。」
「は?」
「あんた、気づいてないの?手、震えてるわよ。」
「え?」
Mayaに指を差されて手を見ると小刻みに震えていた。
手だけでなく、足元も痙攣しているのかと思えるほど震えている。
そうか。
パニック状態だったから気付けなかったけど、”パニック状態”だったということは、その”原因”があったということだ。
自分がどんな状態だったかわからず、自由もきかず、ただただ振動と爆発音に翻弄され続け、なにをしても抜け出せなかった。
落ち着いた今なら、改めて分かる。
あれは・・・ものすごく怖かった。
ちょっと持病のため更新間隔が伸びそうです。