二人で一人前だそうです。
大変遅くなりました。
もしかしたらしばらくは週一ペースになるかもしれませんが、気長にお付き合いください。
コミュニティールームに向かい、受付作業を済ませ、私達はKAGUYAさんに連れられて一室に入っていった。
部屋の中央にはテーブルが置かれ、4人掛けできる程々の広さだった。
『立ち話もあれだろうから座ろうか。さて、どこから話し始めればいいだろうか?』
『そうですね。まず、そちらのメッセージからお願いします。』
KAGUYAさんは部屋にある椅子の一つに座り、おねぇちゃんはその反対側に相対するように座った。
私はおねぇちゃんの隣に座って言われた通り、盗聴や盗撮が無いかあたりを見回す。
『わかった。これが預かっているメッセージだ。』
KAGUYAさんが手元を操作すると、目の前にパネルが開き、結構な量のメッセージが表示された。
内容はクラン結成について書かれている。
一般的なモノ。というか、情報の隠匿性が高い内容になっているので問題はなさそうだ。
『・・・。ここに記載されている内容で問題ありません。』
『差し当たって~週末の~内容だね~。』
『マスターからは、まずは機体に慣れるところからスタートしたほうがいいんじゃないか?と言われている。』
『そうですね。シミュレーターを動かしてみましたけど、かなりピーキーになってしまっています。』
『ピーキー?武装や装甲をセットしたらそこまで素体自体には割り振れないんじゃないか?』
『武器や装甲があればの話ですね。なにぶん始めたばかりなので。』
『なるほど、初期装備のカスタマイズが関の山という事か。こちらのマスターに相談して融通してもらうか?』
『いえ。多分何とかなると思います。』
『それじゃ、訓練内容についてだが・・・』
おねぇちゃんとKAGUYAさんが話している間、コミュニティールームの内装を見回してみる。
特段情報会話が漏れているような感じはないが、一つだけ気になるモノがあった。
それは何も書かれていない装飾された紙とインクが配置されたトレーだ。
『では、週末の流れは疾風さん主導で。』
『了解した。地上戦をメインとして立案するように進言しておく』
ちょうどおねぇちゃん達の話し合いも一区切りついたようだ。
『ねぇ~。これって~何~?』
私はその気になったものを手に取ると、二人の話しているテーブルに置いた。
『ん?ああ。これは誓約書作成ツールだな。』
『決め事とか武器作成の授受、その他電脳世界のアタシたちが取り交わす契約とかを、公文書として記録させたいときに使うものね。』
ん~。また知らない知識だ。
『やはりそうなのか?』
『そうみたいです。』
私が質問したことに対しておねぇちゃんとKAGUYAさんは神妙な顔をしてうなずきあっていた。
『どういうこと~?』
『いい、Kaya、私たちはサポートAIよね?』
『そうだね~。』
『そのサポートAIはユーザー達の質問にこたられないといけないのよね?』
『それは~そうだよ~。お兄ちゃんの~知らない部分を~補うのが~私達なんだから~。それでも~新規の~疑問とかがあったら~ママにお伺いたてないといけないけどね~。』
『じゃぁ、”過去に凡例があるのに知らないことがある”という今の状態はどうしてなのかしらね?』
言われてみればそうだ。このツールだって、初期情報としてインストールされていてもおかしくないモノなのに、私は”知らなかった”という状態だった。
『ってことは~インストール~失敗~?でも~そんな事例こそ~過去にないし~あれ?』
知っているべき内容を知らない。つまりインストールミス?でも過去に事例が無い。
それに、ここに来る前、おねぇちゃんの方もコミュニティールームについて知らない部分があった。
という事は私達二人ともインストールミス?短時間で連続して?それこそありえない。
『あれ~?えっと~?ん~?』
『落ち着いてKayaまずはお母さんに聞いてみましょ。』
あ、そっか。それが確実な方法か。
一瞬思考がループしそうになった。
『それがいいだろうな。』
そう言ってKAGUYAさんは立ち上がった。
『どちらに行かれるのですか?』
『プライベートな問題になるだろうから席を外す。』
『・・・いえ。今しばらくお付き合いいただけますか?』
そんなKAGUYAさんをおねぇちゃんが止めた。
『俺は構わないが、かなりデリケートな問題になってくると思うのだが良いのか?』
『ええ。お母さんのことだからすぐ回答が来ると思うので、今後の方針についても相談させていただければと思います。』
結構、頑なに周りからの援助を排除していたおねぇちゃんにしては、珍しく周りの意見を聞こうとしている姿勢に思わず目が丸くなる。
『ちょ~っと~こっち来て~。・・・・・いいの~?おねぇちゃん。』
不安になったのでおねぇちゃんを部屋の隅に呼び出し、そっと耳打ちする。
『仕方ないわよ。知らないことだらけだとアイツにも迷惑がかかるし。これがもしインストールミスとかなら、再インストールで済むでしょうけど、もしアタシ達のリセットが必要になるとかだと、その状況を知っている人が必要になるわ。アイツにも迷惑がかかるし。』
『わかった~。』
そう言って再び中央のテーブルに向かい椅子に座りなおした。
なるほど。本音は2回言ったところだね。
『それでは、早速お母さんに知識の偏り・・・というよりは分散についてメールしてみます。』
『ああ。ここであったことは口外しないことを誓おう。』
そう言ってKAGUYAさんはさっき教えてもらったツールを使って外部に漏らさないことを記載していた。
その間、おねぇちゃんはママに向けて、メールの作成、送信を済ませた。
メール送信後はKAGUYAさんが作成した誓約書に目を通し、自身の署名、私にも署名するように渡してきた。
私が名前を書いていると、おねぇちゃんにメールの着信音が鳴った。
相変わらずママは仕事が早い。
おねぇちゃんはそのメールをじっくり読むと、メールが映っているパネルを私の方にスライドさせてきた。
えっと~。・・・・簡単に言うと、二人で一人のサポートAIなのだから、それぞれに知識が入っていたらそれは個別のサポートAIとして成り立ってしまうので、あえてバラつかせたって事だね。
追加で各々が知識をため込んでいく事は問題ないとも書いてある。
つまり、私たちはAIらしく自分で勉強もしないとだめって事らしい。
最後に姉妹仲良くお兄ちゃんをフォローしなさいっても書いてある。
『どうだ?まさかリセットが必要そうなのか?』
KAGUYAさんが心配そうに聞いてきた。
『いえ、問題・・・はあるのですが、私達姉妹の仕様だそうです。』
『・・・・そうか。どうしてそんな仕様になったかは分からないが、大変そうだな。』
『勉強する分には問題ないみたいなので、これからいろいろと勉強していく事になりそうです。』
『まぁ、何かあったら相談してくれ。』
『その時はよろしくお願いします。Kayaもそれでいいでしょ?』
やっぱりすごい。お兄ちゃんに迷惑をかけないためなら己の信念さえ捻じ曲げるとは・・・。
『Kaya?』
『あ~。うん~。問題ない~。』
『それでは週末はよろしく頼む。』
『こちらこそ。』
私たちは別れの挨拶を済ませると、同時にマイルームへの扉を開いて帰宅した。




