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優秀な人って、自分で気づかないんですよね。

おねぇちゃんと別れ、私は理科系の教科書を出版している会社の電脳空間に移動することにした。

マイルームの扉の宛先を出版会社にして、恐る恐る扉を開けると、そこは図書館のような空間が広がっていた。


『うわ~。すごいね~。』


思わずつぶやいてしまったが、ルームの中央にゲートと思われるものがあり、その向こうにはおびただしい量の本という本が蔵書されていた。


『お客様、本日はどういった御用だったでしょうか?』


見ていて飽きないその光景に気を取られていると、不意に声をかけられた。


『あ、すみません~。』


声のした方を振り向くと、そこにはスーツで身を整えた若い男性アバターが立っていた。


『えっと~。私~fantasy worldというゲームに住んでる~Kayaと~申します~。今回~こちらより出版されている~教科書の利用についての~相談と~利用許可を~いただきたく来ました。』

『承知いたしました。それではこちらにどうぞ。』


そう言って男性アバターは丁寧に右壁側のボックス席に案内してくれた。


『それでは担当のモノ(AI)が来ますので、しばらくお待ちください。』


席の案内が終わると、男性アバターは一礼してその場を去っていった。

私たちの電脳空間とは大違いである。

これも必要な知識の一つなのだろう。


『お待たせいたしました。ようこそ(わたくし)たちの世界へ。本日担当させてもらいます、サクラと申します。』


待遇の良さに驚いているうちに、担当と思われるの女性AIがやってきた。


『はじめまして~。私~fantasy worldというゲームから~来ました~Kayaと言います~。口調が~間延びしていて~申し訳ありません~。』

『いえいえ。問題ありません。それで、今回お伺いいただいたのは弊社から出版している教科書の利用についての相談と、利用許可とのことでしたが、どういった使い方をされるのでしょうか?』

『はい~。まず~マスターから~・・・』


その後、マスターからテスト勉強を手伝ってほしいことを相談されたこと、教科書から問題を出してほしいと伝えられたこと、利用するにあたってこちらの許可が必要なのであれば許可してほしいこと、その他制限があれば教えてほしいことを伝えた。


『なるほど、承知いたしました。ユーザーと仲がいいのですね。』

『ほどほどですよ~。』

『いい事だと思いますよ。さて。まず、利用に関してですが、すでに原本を持っているのであれば、問題なく無料でご利用いただくことができます。まず、こちらのアプリケーションをPCの方にインストールしていただき、教科書最後に記載されているIDとパスワードを入力してください。そうすることで既にご購入いただいている教科書の圧縮データをダウンロードすることができます。そしてそのデータを取り込んでいただければ問題ありません。』

『わかりました~。ちなみに~そのIDとパスワードは~ユニークなIDって~ことですよね~?利用制限とか~どれくらいに~なるのでしょうか~?』


ダウンロード制限などあったら慎重に事を運ばないといけないと思い、確認すると、女性AIは身を乗り出して私の耳元に顔を近づけた。


『実は、教科書単位の設定なので、IDとパスワードさえ知っていれば、誰でもダウンロードできちゃうんですよ。』

『え~。』

『なので、ダウンロードしたものをコピーして販売や再配布などはしない様お願いいたします。』

『もちろん~法律にのっとって~扱わせてもらいますが~大丈夫なのです~?』

『お恥ずかしい話、私どもも人間たちに警告しているのですが、知識者が増えるのは良い事だ。とあまり響いておらず。』

『大変なんですね~。』

『はい。・・・さて。話が脱線して申し訳ありませんが、以上の説明で問題ないでしょうか?』

『はい~大丈夫だと思います~。』

『では、テスト勉強頑張ってください。』


サクラさんと握手をして、二人でロビーの出入り口に向かった。


『本日はご来社いただきありがとうございました。』

『失礼します~。』


サクラさんから最後に挨拶をしてもらい、マイルームに帰ると、すでにおねぇちゃんが帰ってきており、3冊ぐらいの本をテーブルに置いていた。


『ただいま~。おねぇちゃん~それは~?』

『ん~?社会と英語、それと一応数学の教科書よ。』


おかしい。私、まだ1社目なんだけど。


『私の所の出版社は~アプリをインストールしなきゃ~いけないみたいだったけど~おねぇちゃんの方は~直接渡してもらったの?』

『いいえ。同じよ。これもアプリから落としてきたわよ。』


どうやってこの短時間で3社も回って、かつ、お兄ちゃんからIDとパスワード情報をもらったのだろう。


『あ、これ理科系の教科書のIDとパスワードね。』


どこから調達してきたのだろう。


『大丈夫よ。ちゃんとした手続きで取得しているから。』


私が訝し気に見ているのに気付いたのか、おねぇちゃんは説明を始めた。


『まず、社会系の出版社でアプリのインストールとID,パスワードが必要なことが分かって、帰ってきて速攻アイツに全教科書のIDとパスワードをメールで送ってもらうよう頼んで、英語の出版社に行って社会系の出版社と同じで問題ないかを確認したのよ。ちなみに数学は英語の出版社と同じだったからアプリを検索したら出てきたので、一応ダウンロードしたってわけ。』


できる人の会話だった。

私だったら一々英語と数学分けて訪ねていただろう。


『お、国語は社会系と同じ出版社でアプリがあるわね。これも一応ダウンロードしておきましょ。』


そして私が1社訪ねている間に残りの教科書の情報が集まってしまった。


何気に初めてゲームタイトルを出したかも。

今まで出てきてもおかしくなかったのに。。。

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