side 金霧進④
そして、いざバトルが開始され、軽い打ち合わせの後に行動を開始する。
サポートAIが双子姉のMayaの機体が先行を始め、次いで俺、殿にソウの陣形で移動する・・・のだが、一直線すぎる。
ソウがKayaの後を追う様に移動しているので、正面がKayaで埋まっている状態だ。
俺が間で左右に動くことで索敵範囲を微妙に増やしていく。
「なるほどねぇ。ここら辺もゲームが終わったら話すか。」
『マスター。Mayaが先行しすぎです。』
「だな。ちょっとスピード落としてもらうか。」
通信をダイレクト設定にして目の前を移動する機体に繋ぐ。
「お~い。姉AIちゃ~ん。移動早すぎ。ソウの射程圏外でドンパチ始めても意味ないぜ?」」
『・・・はい。わかりました。移動スピードを下げます。』
なんか返事まで一呼吸あったようだが、あれか?開始時の自己紹介で双子とか言っていたけど、2機を動かすための裏技的な呼称表現?はじめ予想したとおり、2機の機体を1体のサポートAIが制御しているから微妙なタイムラグがあるのか?
そう思っていたが、いざ接近戦が開始されると、よどみのない動きで相手を牽制していく。
そしてソウはと言うと、遠巻きに移動しながらベストポジションと思われる場所に移動していく。
いや、違うな。ソウが行くところがベストポジションになるように姉AIが立ちまわっているのか?
でも、定石通り過ぎる。
機数は2対2なのに、敵機の注意がこちらに向いている様なのは、定石すぎて遠距離ではなく近場に居る俺が仕留めると思っているようで、もう1機の事は気にかけていない?
・・・いや、違うな。敵も1機見つからないという事はそいつはスナイパーで、こちらと同じ戦術だろう。
となると、狙われる前に片づける必要がある。
通信設定をダイレクト設定にしたままなので、そのまま話しかける。
「姉AIちゃん。敵のスナイパーが狙っている!」
『わかっています!』
大分感情的なAIのようだ。さっきまではお澄ましの猫かぶりだったか?
でも、その方が機械的に返されるよりいい。
そして姉AIが攻撃をぴたりと止め、一歩脇にずれると、図ったかのように一条の粒子光が敵機を貫いた。
「ソウ!その武器スゲエな!」
「いや、これの設定してくれたの全部MayaとKayaだから。」
「は?ってことは初期武器のカスタマイズ?ますますスゲエ!」
本当にAIは優秀なようだ。普通、初期装備でここまで威力が出せる設定なんてできない。
ただ、それよりも今はスナイパーだ。
コッチにスナイパーがいることがばれたという事は、早々に現状を片付ける必要がある。
ソウには悪いが、ソウの初勝利のために2機目は我慢してもらおう。
通信チャンネルをオープンにしてソウに断りを入れる。
「ソウ、悪いけど、早めに対応したいから、こいつはさっさと撃破しちまうな?」
「その一言が頼もしいよ。」
そして2対1になったこの状況も相まって、さっさと残りの敵も倒すことができた。
それを確認してソウがこちらに合流しようと移動を始めたタイミングでいきなり前転機動を行ったかと思うと、爆発が起きた。
「なんだ!?地雷か?」
先ほどまでその場で戦闘をしていたから、もし地雷だったとしたら、踏まなかった俺らは運がよかった?
『小山の上~長距離射撃~レールガン~。』
「あいよ!」
妹AIからの簡潔な情報に返事をして通信をまたKaya機にダイレクトに接続する。
「姉AIちゃん。2射目までのインターバルが分からない。速攻で決める必要がある。俺は小山の反時計回りルート。姉AIちゃんは時計回りルートで。」
『わかりました。』
距離がある方を俺がサポートするようにして二手に分かれて索敵を開始する。
距離を詰めつつ小山を迂回し、敵影を探す。
『おねぇちゃ~ん。戻ってきて~。』
妹AIの通信に、見事敵に出し抜かれていたことに気づいた。
「くそっ!待ってろソウ!今行くからな!!」
攻撃場所を移動することまでは考えたが、直線でソウを狙ってくるとは思わなかった。
俺自身は単機戦がメインのため、チーム戦になった時の読みの甘さがあったらしい。
「KAGUYA。スラスター全力可動。左足、右足、背面、ローテーション。両肩はバランサー」
『了解。』
持てるスペックと経験を駆使し、ソウのもとへ急いで戻る。
追いかける途中、モニターに映る森に焼かれたような跡が見える。
ソウなりに粘っているようだ。
レーダーを見ると、まだ敵機のマーカーが外側に張り付いている。
『ローテーション、ワンセット終了、脚部スラスター回復率80%。継続して使用します。』
KAGUYAが状況を報告してくれる。スラスターの使いどころを細かく設計すると、スピードは若干遅れるが、長時間スラスター移動することができる。
これも後でソウに教えよう。
「見えた!」
フィールド限界まで粘り、最後の最後まで諦めなかったアイツを落とさせるわけにはいかない。
「ソーーーーウ!伏せろーーーーー!!」
オープンチャンネルで通信を行いつつ、武器を近距離粒子兵器に切り替える。
敵もこちらに気付いたようだが、まずは目の前の敵を撃破しようとソウに向き直った。
「KAGUYA!」
『承知!』
俺の声に合わせてKAGUYAはローテーションで使っていたスラスター全て解放して一気に加速する。
ランカーたちでは当たり前の技だが、敵はそれに対応することができず、俺の攻撃で上半身と下半身は泣き別れとなり、爆発していった。
爆発が収まりると、ソウが機体を立ちあがらせた。
機体のあちこちには被弾した後が見られボロボロ。でもこいつは最後まで諦めなかった。
そのおかげで俺が間に合った。
長い間このゲームをしてきたが、チーム戦も悪くないのではないかとおもえる一戦だった。
「ナイスバトルだったぜ!ソウ!」
だからだろうか、この言葉は飾ることなく、すんなりと出てきた。




