side 金霧進①
ソウと約束していた待ち合わせ時間の約1時間前。
俺はいつも通りクレーンゲームのプライズを眺めながらフラフラとゲームセンター内を歩いていると、今まさにプライズの入れ替えをしている筐体があったので、興味本位で覗いてみた。
「なっ!」
すると、そこには俺がランカーを努めるゲームの初心者パックが配置されていた。
「あ、進君。ちょうどいいところに来たね。話題作りにと注文していたんだけど、すっかり忘れていてね。今しがた届いたから並べてたんだよ。と言っても、今の君にはもう必要ないものか。」
もう馴染みとなった店長さんがもう必要ないだろうと声をかけてくれるが、これは滅茶苦茶ほしい!
なんせ、手先が不器用なアイツにピッタリなうえ、ユニバーサルコネクターがいたるところに配置されているからカスタマイズの幅が圧倒的に広い。
本当だったら開始時にソウに進めたかったのだが、品薄で転売が横行しているので、定価1500円なのに、軽く5000円オーバー。下手すると10000円近くまで跳ね上がっている状態では勧めることはできなかった。
「おっちゃん!これ!1回いくら!?」
「そうだなぁ。400円で回そうかと思っているけど。。。何だい?やるのかい?」
「ああ!この前始めたばっかりの友達にあげたいんだよ。そいつ不器用でさ。本人曰く、組み立て途中の可動範囲確認でどこかしらを壊してしまうらしいんだよ。」
「あらま。稀にみる不器用さ加減だね。」
「だから、こいつを勧めたかったんだけど、いろんな所を見ても定価の2倍以上じゃん?それで勧められなかったんだ。おかげで自前で1から作ってもらったんだけど、サポートAIから速攻でダメ出し食らったらしいんだ。」
「なるほどねぇ。なら・・・・ついでにバイトしてみないかい?このクレーンで、進君みたいなゲーマーで上級者がどれくらいのアームの強さなら乱獲されずに済むか調査したいんだ。」
そして店長さんからの申し出に俺は飛びついた。
つまり、店長の計らいで、タダで練習ができるという事だ。選択の余地などあるわけない。
「やる!絶対やる!」
「そうかい。なら30分くらい付き合ってね。」
その後、ひたすらクレーンを動かし、クレーン台からプライズを落としてはアームの調整と落としたプライズを再度クレーン台に乗せる。という作業を繰り返した。
「なるほどね。アームの強さは大体こんなもんかな?」
きっかり30分後、無事調整が終わった。
そして俺も十分に練習ができた。
「進君ありがとうね。はい。これバイト代。」
「え?」
そう言って店長はアームの強さを調べるために使っていたプライズを俺に渡してきた。
「練習とはいえ何回も落としちゃってるわけじゃん?まぁ、中の品質はあまり変わらないけど、外箱にはかなり傷があるし、B級品として扱うとよくて半額くらいかな?で、僕の店の時給は1530円で30分だから大体760円くらいかな。現物支給がダメだったらお金でもいいけど・・・どうする?」
か、かっけぇ!店長かっけぇ!!
ただプレゼントするんじゃなくて、ちゃんと報酬として俺が受け取る事のできる理由と、周りにそれを納得させるだけの理由をさりげなく用意するとか、しかもあの短時間で!
俺には無理!もう格好いいとしか言えない。
「現物でお願いします!」
「うん。僕も不良在庫を抱えずに済んで助かったよ。あ、そうだ。さっき言ったとおり、うちの時給で換算すると少し足りないね。確か、カウンター下にラッピング用紙があったから1枚持っていくといいよ。セロテープやリボンも同じ場所にあったと思うから好きに使っていいよ。」
店長・・・俺、ずっとこのゲーセンを使い続けるッス。




