初の公式戦⑨
コックピットの映像が宇宙に変わり、3戦目が始まって早々に疾風さんから通信が届いた。
「ソウ、まずは基本的な移動や索敵に慣れるとこからだ。俺は今から10秒間だけ動いて、そのあとは動かないから、まずは俺を探してみてくれ。」
「わかった。」
お兄ちゃんは返事をして移動を開始した。
私はその間、なるべく機体が上下しない様に補助をしつつ、疾風さんの影を探す。
おねぇちゃんは上に下にとあたりを警戒しながら付かず離れずの距離を保っている。
「ソウ、宇宙での索敵時はスラスター光が自分の位置を相手に教えることになる。だから、あまり見えない様に一度吹かしたら、慣性の法則で移動する。それを使ってみるんだ。」
疾風さんがお兄ちゃんにアドバイスをする。
という事は向こうからこっちは丸見えの状態という事だ。
けど、全周囲モニターのどこを探しても見当たらない。
『Kaya!直上!!』
おねぇちゃんの通信にお兄ちゃんと私が上を向くが、私には太陽が見えるだけだったが、不意にロックオンサイトが浮かび上がった。
それを確認してモニター中央にロックオンが移動するように機体制御を行い、シールドを構える。
「いい連携だな。よし。今度は俺のロックオンが外れない様に動いてみろ。高さは変えないから、余裕があったら射撃攻撃をしてみるのもいい。」
「わかった。」
お兄ちゃんは疾風さんの機体からロックオンが外れない様に必死に目で追いかける。
それに合わせ、私はモニターの中央に配置できるように姿勢制御を行う。
「ソウの機体に乗ってるAIちゃん。俺を中央に持ってこようと機敏に動きすぎだ。ソウが酔っちまう。」
まさか私が制御しているのを読まれるとは思わなかった。
ってそれどころじゃない。
慌ててパネルを開き、お兄ちゃんを写すと、その眉間にシワが寄ってきている。」
「モニターは全天なんだ。少し余裕をもって。画面から見切れそうになったら動かすくらいでちょうどいい。じゃないとソウの目の良さだと情報過多で酔っちまう。」
私が考えた宇宙酔い対策が、お兄ちゃんの宇宙酔いを誘発していたらしい。
『わかりました。』
疾風さんに言われ、今までほぼリアルタイムに移動させていた機体制御を中央モニターから外れそうなタイミングで制御するように遅らせると、お兄ちゃんの顔がだんだんと良くなってきていた。
そうか。人間と私達の処理速度の違いについては認識していたけど、目から見た情報が早いから、その情報を頭で処理するのも早いと思い込んでいた。
「Kaya、攻撃できる?ちょっと慣れてきた。」
認識を改めようとすると、お兄ちゃんから攻撃の提案をされた。
まさか画面の動き一つでここまで余裕を持てる様になるとは思っていなかった。
『できるよ~。連射速度は7秒~。』
「よし。やってみる。」
そういってお兄ちゃんは動き回る疾風さんに向け攻撃を開始した。
「いいね!いいね!遠距離のポイントは牽制、本命、両方ともに使える点だ。1戦目の時みたいにスイッチするのもいい。次は簡単でいい。自分が移動しながら俺からロックオンを外さない様にしてみろ。ああ、そうそう。もう一機のAIちゃんも攻撃してきていいぜ!」
『・・・。わかりました。』
「わかった。」
疾風さんの通信に今まで傍観していたおねぇちゃんが攻撃を始める。
お姉ちゃんの機体は近接から中距離まで、私と疾風さんとの間に入るようになる。
なるほど、移動しながらロックオンを外さないという事は、間にいるおねぇちゃんという障害物をいかによけるか?という訓練をさせるという事か。
本当によく考えている。
ランカーがどれほど高いスキルを持っているのかというのを思い知らされる。
お兄ちゃんも無意識なのか、おねぇちゃんが邪魔にならない位置に移動しようとしているので、あえて機体の姿勢制御を緩めにして移動しやすいようにする。
『私が相手の動きを止める様に動きます。あなた達は止まったところを狙ってください。』
外面のいいバージョンのおねぇちゃんから通信が入り、移動先を絞るような攻撃を続ける。
「おっと。さすがAIちゃん。いやらしいところに攻撃を仕掛けてくるな。」
だが、そこは流石のランカー。
コチラの意図とは別方向へ転進するため、ロックオンは外れないにしても照準が間に合わない。
そして戦闘時間いっぱいまでこちらからの一方的な攻撃だったにもかかわらず、3戦目は引き分けとなった。
思いの外戦闘シーンの描写が続いてしまいました。
話のテンポを上げていけたらなぁと思いますが、私自身がのめり込んでいってしまうので、落とし所が・・・




