初の公式戦⑧
すみません。
予防接種の副反応でしばらく動けず、空いてしまいました。
次の試合開始時間が近づいてきたので、疾風さん達と別れて格納庫に戻った。
『おねぇちゃ~ん!次の~フィールドも~宇宙だって~!!』
戻ってもまだ自分の機体前でパネルと睨めっこしているおねぇちゃんに声をかける。
『そう。何とか間に合ったわね。』
"in meeting room"と表示していたモニターにお兄ちゃんが映し出されると、それに合わせておねぇちゃんもモニター前に移動してきた。
『で、打ち合わせはどうだったの?』
「ああ、次からの2戦なんだけど、宇宙戦の訓練として金霧とマンツーマンの試合をしてもらえることになった。」
『ランキング戦?』
「いや、フリーバトルって言っていた気がする。」
『・・・ああ、なるほどね。気を使ってくれたわけね。』
おねぇちゃんは少し考えるそぶりを見せると、納得いったように話をつづけた。
「どゆこと?」
『ランキング戦だと、文字通り勝てばアンタのランキングが上がり、負ければ下がる。フリーバトルならその縛りもないって事。』
『つまり~ランキングを気にせず~私たちの連携訓練が~できるってことだよ。』
「なるほど。」
そう。今回肝になるのは、負ければ自動でランキングが下がるということだ。
プレイスキルはさっきの2戦で見せてもらったが、お兄ちゃんが逆立ちしたって勝てない相手だ。
そんな相手とランキング戦でもしようものなら、ランキングが下がるだけで、こちらに旨みはない。
逆に疾風さんは勝てばランキングが上がるので、レクチャーすることでお兄ちゃんの好感度を上げつつ自身のランキングも上げられるチャンスなのだが、それをしないという事は程々に信頼できる人間なのだろう。
『先輩ユーザーだからって随分気前がいいわね。』
「あ~金霧はランカーだしなぁ。その点ではめっちゃ頼りになるな。」
お兄ちゃんから聞き捨てならない言葉が飛び出してきた。
『・・・ちょっと。その情報は初めて聞いたんだけど?』
「あれ?そういう情報って電脳世界で共有されているんじゃないの?」
あ~。確かに。1つのゲームとして成り立っているのだから、ランキング情報は公開されているし、すべての情報が共有されると思い込んでいても仕方がないね。
ただ、誤解されがちだけど、私達の世界ではそんな情報は共有されない。
何せ、AIも人間も個人として活動する1個体としての認識なので、必要情報は自分たちで調べる必要があるし、公開されていない情報や、知ってはいけない情報も多々ある。
そんな秘匿性の高い情報まで全体で共有しようものなら、その情報を保存する記憶容量は莫大なものになってくる。
『それは~個人的な情報になるから~私達が必要と思って調べない限り~わからないんだよ~。』
「ゴメン、てっきり知っているもんだとばかり思った。」
『・・・・はぁ。で、何位くらいの人なの?』
「確か30前後だって言ってた。」
『トップランカーだね~。』
『トップランカーね。』
流石にその情報は前もって欲しかった。
おかげで1戦目の時の動きや、2戦目の一人で3人を相手取れる技術を持っていることに納得できた。
ただ、お兄ちゃんのことを恨みがましい目で見てしまうのも許してほしい。
「ご、ゴメンね?」
『・・・はぁ、とりあえず、アンタが宇宙戦に慣れない事にはランキング戦にも出れないだろうし、とりあえずは相手に感謝して始めましょ。』
お姉ちゃんは諦めた様なため息をついてコックピットへと向かい、私もそれにならう様に自分の機体へと足を向けた。




