初の公式戦④
初の公式戦、初のチーム戦、初の勝利、お兄ちゃんの初めて尽くしのデビュー戦は無事、1回戦を終えることができた。
コックピットのモニターが戦闘フィールドから格納庫の画面に切り替わる。
『ふぃ~。勝てた~。』
コックピットから格納庫に出てお兄ちゃんのモニターが出るのを待つ。
おねぇちゃんもコックピットから出てきたが、何やら不満そうな顔をしている。
あんなに活躍していたのになんでだろう?
そう思っていると、お兄ちゃんの映像がモニターに映し出された。
『初勝利~おめでと~』
「ありがとうKaya。Mayaも敵を引き付けてくれたおかげで1機撃破することができたから、ありがとう。」
『別に。それが役割だし。』
そっけなく返すが、おねぇちゃんのほっぺたは若干赤くなったように見える。
「それにしても訓練と違って結構疲れるんだね。」
『限界~?』
「いや、まだ大丈夫。」
『無理しないでよね。アンタが大丈夫と思っても、こっちで無理だと判断したら訓練の時みたいに強制的に終了させるからね?』
「わかった。」
まぁ、疾風さんに迷惑はかけてしまうが、さっきの戦闘中の会話のやり取りを聞いていると、その辺は問題なさそうな気がする。
『どうする?共有スペースで向こうのメンバーと打ち合わせする?』
「できるの?」
『チーム戦を行っている時だけ解放される共有スペースのミーティングルームってのがあるのよ。まぁ、大体はこの時間で次の戦いに向けて装備の変更とかをするんでしょうけど、アンタの機体はそんな事は必要ないから、相手がいればだけど、ミーティングルームで次の戦闘の打ち合わせができるわね。』
次の戦闘まであと4分ほど。
確かに、私たちの機体は選択肢がないので、基本的には暇な時間になる。
「それじゃ、行ってみようかな。えっと~。」
『画面左上の方にパネルっぽいアイコンがあるでしょ?これがミーティングルームのマークよ。』
「ああ、あったあった。それじゃ、そっちに移動する。」
そう言うと、お兄ちゃんが映っていたモニターが"in meeting room"という表示に切り替わった。
『それじゃ、Kaya、アイツのおもりお願いね。』
おっと、おねぇちゃんは何を言っているのだろう。
『おねぇちゃんは~いかないの~?』
『アタシは何も聞くことはないもの。』
『ん~。なんか~あった~?』
『何もないわよ?ただ、アタシのやることは決まってるんだから、特に向こうとすり合わせることなんてないもの。』
『ん~。わかった~とりあえずお兄ちゃんに~付いて行くよ~。』
『ええ。よろしく。』
平静を装っているけど、なんとな~く苛立っている?そんな空気を醸し出している。一人で何か考えたいことがあるのかな?
ひとまずお兄ちゃんの方に付いて行って、後で聞いてみよう。
そう思ってミーティングルームに向かうと、意外な人物がいた。
「えっと~KAGUYAさん?でいいのかな?」
『おお。それで構わん。』
ミーティングルームにはサポートAIのKAGUYAさんしかいなかった。
「金霧は?」
『ああ、マスターなら機体調整をしておるよ。』
「そうですか。あ、さっきの戦闘、最後に助けてくれてありがとうございました。」
『なに。マスターの操縦技術がすごいだけで、俺はちょっとしたサポートをしただけだ。』
「それでも、撃破されずに済んだので。」
『なるほどな。お前さんがそういうならそうなんだろうな。』
「はい。」
だいぶ思考が成熟しているというのだろうか、KAGUYAさんは落ち着いたような雰囲気をまとっていた。
はじめの気難しい感じはこちらの気のせいかな?
『ところでそちらは?』
「ああ、ごめんなさい。彼女は俺の機体の補佐をしてくれているKayaって言います。」
『初めまして~。Kayaです~。」
『Kaya、Maya・・・。』
「ああ、Mayaは彼女の双子のお姉さんだそうです。あれ?Mayaは?」
『なんか~機体調整が必要みたいで~残るって~。』
「なんだ。言ってくれればよかったのに。」
『・・・・・。』
私とお兄ちゃんの会話にKAGUYAさんは驚きの顔をしていたが、いまいち理由がわからない。
理由を尋ねようとすると、彼は首を少し横に振ってボタンを取り出した。
『そうそう。マスターからそちらのマスターに伝言を預かっていたのを忘れていた。』
「え、金霧から?」
『ああ、こちらになる。」
そう言ってKAGUYAさんがパネルを起動すると、そこには疾風さんが映し出された。
”次の戦闘でのスタイル変更をするから、KAGUYAに伝言を頼んだ。今日は、お前が試したいもの、やってみたいもの、好きなようにやってみればいいよ。こっちは全力でサポートするからさ!次も勝とうぜ!!”
そう言って疾風さんの映像は切れた。
「これをわざわざ持ってきてくれたんですか?ありがとうございます。」
『いやいや。マスターが本当に楽しそうで俺もうれしいよ。どれ。そろそろ次の戦闘だな。よろしく頼むよ。』
「はい。よろしくお願いします。」
KAGUYAさんは言うだけ言ってミーティングルームを出ていった。
『なんか~兄貴分っぽかったね~。』
「な~。思わず敬語で話してしまった。」
『雰囲気に~貫禄があったね~。それじゃぁ~私たちも格納庫に~戻って準備しようか~?』
「ああ。次も頼むよ。」
お兄ちゃんと再び格納庫に戻ると、おねぇちゃんはすでに自分の機体のコックピットに入って準備していた。
ん~。今日の予定が全部終わってから聞くか~。




