初の公式戦①
おねぇちゃんのおかげでメモリ使用にゆとりがあり、演算処理がスムーズにいく。
コックピットで出撃情報を整理して開始を待つ。
「今回は~地上戦か~。」
フィールド設定はランダムで決められるので、今回はラッキーだったようだ。
訓練で地上戦はすでに経験済みなので、宇宙よりはだいぶましに思う。
おねぇちゃんと相手のAIとで機体情報の交換が済んだようで、私にも相手機体の情報が開示される。
それを見て思うのは、オールラウンダーと言っていた内容が伊達じゃないということだった。
自身を中距離に配置し、味方の危機にすぐ駆け付けられるように足回りにスラスターを配置するだけじゃなく、高出力と思われるバックパックも積んでいる。
お兄ちゃんの話だとこれを作った人に素体の作り方も学ぶと言っていたから、次に出来上がるモノは以前よりは良いものが出来上がると思う。
そんなことを考えていると、コックピットのモニターが森林フィールドの映像に切り替わった。
レーダーを見ると3機が固まった状態でスタートするようになっていた。
模擬戦の時とはえらい違いである。
すると切り替わって早々に映像の視点が低くなった。
うん。基本って大事だね。
そして参加者の画像が小さいパネルで中央に現れた。
おねぇちゃんとお兄ちゃん。それと知らないAIと人間。この人間がお兄ちゃんの友人で、AIがKAGUYAさんね。
・・・KAGUYAさんは何で機体と同じ映像アバターなんだろう?
「よっす。俺が疾風。で、AIがKAGUYA。よろしくな。」
「・・・・よろしく。」
お兄ちゃんの友人のあいさつに続けてKAGUYAさんが挨拶をするけど、だいぶ気難しい性格みたいだ。
「よろしくお願いいたします。すでに紹介していただいているかもしれませんが、私はMayaで、もう一人が妹のKayaになります。」
そしておねぇちゃんの対応はきれいなものだった。
なんだろう。お兄ちゃんが少し不憫に思える。
「Kaya、Maya、出撃前にも話したけど、金霧からは好きなように動いていいと言われているから、どんな感じで狙う?」
「まずは索敵ですね。私がおとりに先行します。ア・・なたは遠巻きに移動してください。」
あ、一瞬戻った。
「じゃぁ、俺たちはその間くらいで敵が隠れてないかの索敵をするよ。」
「ええ。お願いします。」
「わかった。そいじゃ、勝ちに行こうぜ!」
疾風さんがそう締めくくると、おねぇちゃんと疾風さんは滑るよう移動を開始する。
それにつられてお兄ちゃんも移動を開始したのか、モニターの映像が移り変わっていく。
陣形としては・・・どう表現すればいいだろう。
三角形は三角形なんだけど、◁な感じ?上から順におねぇちゃん、疾風さん、お兄ちゃんの順で、疾風さんが右に左にと警戒を行ってくれるから、◁と▷を交互に繰り返す器用な陣形になっている。
お兄ちゃんが映っているパネル映像を見てみると、大分緊張しているようだ。
多分、足を引っ張らないか不安なのかな?模擬戦でも一回も勝てなかったし。
通話設定をお兄ちゃんだけに接続する。
「大丈夫だよ。おねぇちゃんと~疾風さんがいるんだから~まずはチーム戦に~慣れよう?」
「あ、ああ。でも、ここまで御膳立てされてると、さすがにね?」
それもわかる。
「お兄ちゃん~忘れてるよ~?」
「え?なに?なんかミスってる!?」
「えがお~。」
「・・・・」
「これは~ゲームだから~楽しむことが~大事~。」
「・・・そうだったね。うん。忘れてた。」
お兄ちゃんにも少し余裕ができたようだ。
その時前方から爆発音が聞こえた。
「始まったようだ~ね~。」
レーダーを確認すると、おねぇちゃんより向こう側にいるのか、敵を示す光点は見当たらない。
爆発のあった場所とお姉ちゃんの火線の位置から、攻撃は左奥からかな?となると、そこを狙撃できそうな場所は・・・・。あの小山かな?
でも、そうなると、移動に時間かかるし、狙撃後の移動もバレバレ。だったら右のちょっと坂になっている場所を起点にすれば動きやすいか。
そう結論付けてマップに目印を置く。
「お兄ちゃん~ここ~。」
「わかった。」
そう告げるとお兄ちゃんは目印に向かっておねぇちゃんを中心とした弧を描くように移動を開始した。
うんうん。ちゃんとこの前指摘したことを覚えてるね!
ただ、もうちょっと落ち着こうか?
モニター越しにキョロキョロと頭を動かしているのが分かって落ち着きがなさすぎるよ?
おねぇちゃんのほうは疾風さんがフォローを入れてくれているおかげで問題なく捌けているみたいだ。
「あ、見つけた!」
お兄ちゃんがそう言ってロックオンしたのはおねぇちゃんが対峙している機体だ。
多分中距離系。っておおきいなぁ。装甲を厚くしているのかな?
私はロックオンと同時に機体を制御して武器の準備を始める。
マウントしている粒子ライフルを右手に構え、装甲が厚くなっているだろう機体を貫通できるように粒子収束を行って威力を上げる。狙いは少しずれてもいいように機体中央。有効射程圏内で威力減衰率は問題なし。
「・・・OK~。」
私がそう言うと、お兄ちゃんは右手のグリップにあるトリガーを引いた。
ライフルの銃口から圧縮された粒子が解放され、敵に吸い込まれるように向かっていく。
それと同時にマップに新たな目印を置く。
「ひとまずこっち~。」
「わかった。」
お兄ちゃん初の公式戦での攻撃は見事に敵の胴体に命中。撃破できたようだ。
ただ、すぐ移動してもらわないといけない都合上、撃破確認をさせてあげられなかったのが残念だ。
「ソウ!その武器スゲエな!」
「いや、これの設定してくれたの全部MayaとKayaだから。」
「は?ってことは初期武器のカスタマイズ?ますますスゲエ!」
お兄ちゃんに余裕はなさそうだけど、疾風さんはとても面白そうに話す。
「マスター、もう一機おるぞ。忘れてないか?」
「大丈夫だって。それより分ってるよな?」
「むろん。」
「ソウ、悪いけど、早めに対応したいから、こいつはさっさと撃破しちまうな?」
「その一言が頼もしいよ。」
疾風さんはそう言うと、目の前の敵機に急接近して一刀両断にした。だが、それより別な所に注意が向いているようだ。
まぁ、この状態でも2機しか発見できないとなると、遠距離の機体が残っているという事だろう。
ねらいは・・・二人よりもこっちだよね。
「お兄ちゃん~いったん合流したほうがいいかも~。」
「わかった。」
目印をけして合流をうながすと、やっぱりお兄ちゃんはキョロキョロしながらそちらに向かって移動を開始した。
「なんだあれ?」
お兄ちゃんが小山の方を見てつぶやいた瞬間、私は反射的に緊急回避を行った。
登場人物が増えると、AIなのか人間なのか分かり辛いかな?




