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努力がいい方向に報われるとは限らない

おねぇちゃんが出て行った後も私は壊れたログと睨めっこをしていた。

なんせ6戦分。動画を見つつデータの入れ替えを続けていると、玄関が勢いよく開いた。

そのままの勢いで入ってくると、荒々しくその扉を閉じた。

おねぇちゃんだ。


「おかえり~。その様子じゃダメだったみたいだね~。」

「ただいま!!むかつくぅ~~~!何が原則よ!何が無駄にメモリを使う必要はありません。よ!何がどうぞご自由になさってください。よ~~~~~~~~~~~~!」


挨拶もそこそこにおねぇちゃんは壁を叩く。

いくら電脳世界のモノは壊れないとはいえ、汚れの代わりにノイズが付着する可能性があるから、できればやめてほしい。


「頭きたから、お母さん(管理AI)と運営と開発部にクレームぶん投げてやったわ!5GBの高画質の証拠動画付きで!」


それはまた、送られた方は一瞬フリーズしたんじゃないかって勘違いしそうだ。


「それじゃ~一緒に~おとなしく~データ整理しよ~?」

「そうね。いつまでも不満ばっか言ってても始まらないし、アイツに10時までに案を出すって約束したものね。」

「ね~。それに~明日の午後は~お兄ちゃんの友達との模擬戦もあるから~そっちもしっかり検討しないとね~」


その後、おねぇちゃんと二人、黙々とログの置き換えを行う。

人間時間で2時間くらい経っただろうか?やっと半分くらいの置き換えが終わって大きくため息をつくと、おねぇちゃんのところにメールが届いた。

私たちはまだ生まれたばかりだし、知り合いもいない。お兄ちゃん宛なら専用のメールボックスに届いたと案内が出るから、おねぇちゃん個人あてに来たことになる。

さっき、方々にクレームを出したということだったから、その返事かな?

おねぇちゃんは訝しみながらも開封ボタンを押し、メール本文のディスプレイを立ち上げた。

そして数分もしないうちに、その眉間に特大の皺が寄った。


あ、これ、絶対に声かけちゃダメな奴だ。

クレームをエスカレーションする窓口以外に送ったから、そのことについて、ママ(管理AI)からお叱りのメールでも届いたのだろう。

素知らぬ顔で作業を再開する。

その間も、おねぇちゃんの手はきつく握りしめられ、プルプル震え始める。


「Kaya。」

「な~に~。」


あえて普通通りに答える。

だって巻き込まれたくないから。


「置き換え作業は終了していいわよ。」

「へ?」

「ちゃんとしたデータが届いたから。」


うわ~。このタイミングでか~。まぁ、人間時間では2時間でも相当早い対応だと思う。

でも、うちらからすると、やらなくてもいい作業を延々とやらされ、やっと道半ばに到達したと思ったら、それを真っ向から否定されたようなものだ。


「手紙には~なんて~?」


さすがに私にも関係がある話になったので、手紙の内容を確認させてもらう。

おねぇちゃんは無言でメール本文のウィンドウを私に回してくれた。

かいつまんで言うと、今回の件については、人間世界で評定が行われた事の報告。管理局の対応が間違っていたことの謝罪。仕様、ユースケースの再確認をして各担当者への意識徹底と確認を行うこと。そして最後に改めて指定した内容のログを抽出したので、精査に役立ててほしいというものだった。


おねぇちゃんの話だと、相手はこんな殊勝な態度をとるような(AI)ではなかっただろう。ということは、もっと上の意思決定が入ったことになる。ママにエスカレーションしたって言ったから・・・・まさか役員会?

なわけないか。せいぜいママからのお小言でしぶしぶ対応したってところかな?


「だ~~~~!もう!なんで今なのよ!もう半分は終わってるのよ!」

「残り半分を~やらなくて済むことを~素直に喜ぼうよ~。」

「だって、2時間だよ?120分だよ?アタシたちの作業単位にしたら7200000ミリ秒だよ?いったいどれだけの作業が無駄になったと思うの!?」

「あ、それについては~捕捉があるよ~?合計2時間分の~スパコン利用権利だって~。」

「確かにそれは魅力的だけど~~~!この憤懣やるかたない思いをどこにぶつければいいのよ~~~!」

「はいはい~。さっさと~ログの精査しよ~。」


良かった。ここにお兄ちゃんがいなくて。

いれば真っ先にターゲットにされてただろうからね。


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