身から出る錆はポロポロと剥がれ落ちる
電脳空間のロビーに出ると、アタシは一直線に情報管理局に向かった。
「おい、あれって。」
「ああ、デフォルトアバターだから多分な。」
「でも、なんで人型なんだ?」
「管理AIの気まぐれだろ?」
「でも、あのアバターの方が戦術とかばれなくて済むよな。見てくれよこの足。どう頑張ってもホバー系ってばれるんだよね。」
「確かに」
周りがなんかざわついているが、特に気にせず移動する。
情報をもらって、精査して、改善点を洗い出して、さらにアイツに合うカスタマイズを考えて。と、やることは山積みだ。
情報管理局についたが、案内板などはなく、各申請受付所と中央に案内所しかないのが余計苛立たしい。
アタシは苛立ちを抑え、なるべく平和的に建物の中央にある案内所を訪ねる。
「ようこそお越しくださいました。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「こちらに請求したデータなのですが、整合性が取れていないため、取り直しをお願いしたいのですが、どこに行けばいいですか?」
受付のAIは笑顔で対応してくれるが、こちらは余計な手間を取らされているため、どんどんフラストレーションがたまっていく。
「データの取り直しですか?」
「はい。本日実施した戦闘記録をプレイヤーのIDとAIのIDで絞り込んで抽出をお願いしたのですが、他AIの行動記録も混ざっていると思われるデータを渡されたので、取り直しをお願いしたいです。」
「え゛!?それってかなりまずい案件じゃないですか?」
Mayaの言葉に受付のAIは笑顔を引きつらせる。
「はい。とりあえず、私の依頼の仕方が悪かったかもしれないので、改めて取得しにまいりました。」
とりあえず、下手に出てできるだけ時間をかけない手段をとる。
「承知しました。データ申請ですと、入ってきていただいた所から反対側の・・・こちらですね。この入口に順番待ちの番号札を取る所があるので、取っていただいた後、中に入っていただければ、順番になりましたら番号が呼ばれますので、担当窓口に向かってください。」
受付のAIは建物内の地図を広げて場所を教えてくれた。
お礼を言って教えてもらった方法で中に入ると、しばらくして手にしている札の番号が呼ばれたので指定された窓口に向かった。
「本日はどういったデータをご所望でしょうか?」
「本日の戦闘データで、プレイヤーのIDが〇〇〇ー△△△▲ー◇◆◆◇で、AIのIDが+++*ー@@+*ー****のデータと、同じプレイヤーのIDで、AIのIDが+++*ー@@+*ー***>のデータを時系列順に並び変えて、それぞれ1戦闘データごとファイリングしたものをください。」
ここまで丁寧に言ったんだ。ちゃんとしたデータが出てくるだろう。
「承知しました。・・・ん?申し訳ありません。こちらのデータ抽出要求について、すでにアウトプットしていると思うのですが?」
あ~そうか。案内からここへの情報共有はされないのね。
不具合なのだから大まかな情報くらい共有しなさいよ。この世界なら1ミリ秒にも満たないでしょうに。
「はい。中央受付でもお話したのですが、他AIの行動記録も混ざっていると思われるデータを渡されたので、取り直しをお願いしに来ました。」
「しょ、少々お待ちください!上のモノと変わります。」
確かに、対応するなら窓口のAIじゃなくてもう少し上役のAIだろう。
数秒後にはガタイの・・・というか、恰幅のいい責任者っぽいAIが現れ、受付をしてくれたAIが後ろに立っていた。
・・・AIのイメージを太らせる意味ある?人間みたいに栄養とか関係ないじゃない?
「お待たせしました。何やらこちらから提出したデータに不備があったとか?」
「はい。なので、取り直しをお願いします。」
「ふむ。条件はこちらですな。で、こちらから出したデータがこれと・・・・これのどこが間違いだと?」
その自信満々の言葉に後ろに立っていた窓口のAIは首を傾げた。
おい。白を切るのか?さすがに怒るぞ?いや、すでに怒っているけど。物理に訴えるぞ?
しかし、ここで会話を打ち切られても困るため、ぐっっっっとこらえる。
「いただいたデータはプレイヤーのIDのみで抽出されただけの様で、AIのIDでの絞り込みがされていないみたいです。そちらから提出していただいたデータ抽出条件にもAIのIDの部分がありませんし。そのため、AIの情報が混ざったデータが出ています。なので、きちんとAIのIDでも絞り込んでほしいのです。」
アタシの言葉に受付のAIは納得したのか、自分の前にウィンドウを開き、データ抽出条件を入力していく。
「必要性を感じませんな。」
「「は?」」
責任者AIの言葉にアタシと窓口AIの声が重なる。
いや、窓口AIは責任者側だろうに。立ち位置をそろえなさいよ。
いや、それどころじゃない。
「どの辺に必要性を感じないのでしょうか?こちらは要求としてやってほしいと言っているのですが?現に他AIと混ざったデータになっています。」
「1プレイヤーに対して1AIの原則なのだから、わざわざデータ抽出にプレイヤーのIDとAIのIDの両方を組み合わせる必要はないですね。無駄にメモリを使う必要はありません。」
「でも、ちゃんと仕様として定義されていて、申請があればやらなければならないはずですよね?」
「プレイヤーIDだけで十分です。運用方針として人間側からの承諾も得ています。なので問題があるとすればデータが壊れているのでは?」
「・・・・それが正式回答ということでいいんですね?」
「もちろん。」
こりゃダメだ。話は進みそうにない。
「・・・・わかりました。運営方針の相談は・・・運営というくらいなのですから運営部とおこなっていたという認識であっていますか?」
「ええ。」
「では、仕様バグとデータクラッシュの疑いがあるということで管理AIと開発部にエスカレーションさせていただきます。」
「エスカレーションの窓口は運営部ですよ?」
問題のある運営部にエスカレーションしたってもみ消されるにきまってる。
「わかってます。もちろん運営部にも出します。ですが、問題点と部署がはっきりしているなら、そこにもエスカレーションした方が対応は早いですよね?」
「まぁ、一足飛びにエスカレーションしても、多分取り下げられるでしょうが・・・。どうぞご自由になさってください。」
「それでは失礼します。」
仕様をガン無視してくる情報管理局と運営め。
アタシは席を立つと、情報管理局を後にしつつ、並行で先ほどの会話内容を添付して管理AIと開発部宛にエスカレーションをぶち上げた。




