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親は子を想うものです。

ちょっと長くなりますが、区切りがいいところまで書かせてもらいました。

その日、数ある電脳世界の一つに激震が走った。


世界初の双子というロジックを持ったAIの誕生。

それ自体は開発者側が意図したものだが、1人1AIの規則がある世界で、それを破って双子が一人のプレイヤーに割り当てられたという異例の対応がされたことが周りを困惑させた。

既にこの世界に生まれていたAIたちから、規則に反するとのエスカレーションが管理AIに数多く寄せられた。

それを受け、双子AIを生み出した管理AIからの返答は、さらに周りを驚かせるものだった。


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管理AIより各AIへ


今回、プレイヤーに付与されたAIに対するエスカレーションについて、当方は以下の見解となる事をここにお伝えします。


今回、一人目のAI作成において、双子の姉としての属性を持った形で生成された。

1プレイヤーに対し、双子の姉をサポートAIとして割り当てた場合、双子という対なす者の片方を(あて)がうことから、このままでは割り当てられたサポートAIは0.5人となる。

これは各AIよりエスカレーションされた1プレイヤーに1サポートAIシステムの割り当てに反すると同意である。

そのため、双子の妹の属性を持つAIを付与することにより、本来の1プレイヤーに対して1サポートAIの割り当てを捕捉する為の処置を実施したものである。


仮に、別プレイヤーに対して双子の妹属性を持たせたAIを割り当てた場合、双子属性は本来2体1対の状態が正しい一つのAIプログラムである。そのため、2人のプレーヤーを1つのAIプログラムがサポートするように割り当てたことになる。

この場合、2プレイヤーに対し、サポートAIの割り当てが1となるため前提が崩れてしまう。

よって、本事象は正当なものである。

//////////////////////////////////////////////////////////////////


この良い所取りしたような回答に、エスカレーションしたAIたちの中で納得する者は少なかった。

すぐさま今度は運営に対してエスカレーションが行われ、深夜にもかかわらず緊急会議が開かれた。


企画部、設計部、開発部、運営部、保守点検部からそれぞれの担当者が集められ、さらには社長、常務も集められ、今回起きた事態の是非について話し合われた。

企画、運営側は1人1AIのスタンスだから1人2AIの状態は是正するべきとの見解を表明し、設計、開発部は1人1AIプログラムだから問題ないとの見解を出した。

保守点検部は与えられた動作を確認する部署とのことから発言を避けた。

社長もそれぞれの考え方に立つと、それぞれの言い分は正しいと思う事から決断できずにいた。

ただ、現実問題として、作成されたAIはすでに独自の解釈や学習を始めてしまっており、すでに法律で削除できない域にまで達しつつあった。


そのことがわかると、社長の判断は早かった。

新規登録はしばらく行わない事。

これはエスカレーションがされた段階で管理AIが実施しており、新たに双子が現れることはなかった。

次に、そのことを運営が公式発表すること。

これも管理AIが緊急メンテナンス中ということで、新規登録を行わなくなったタイミングで発表していた。


次に今後の方針である。

これは管理AIも同席したうえでの今後の対応について話し合われた。

カテゴリーは現在、双子兄、双子姉、双子弟、双子妹の4種類が登録されている。

これらを今回と同じように扱った場合、今後1人2AIが増え、サーバーの負荷や、ランニングコストが増えていくことになるため、カテゴリーそれぞれを1AIとしてカウントする仕組みとした。

ただ、双子の取り扱いについてはさらに検討する必要があるため、決まるまでは実装を外すこととなった。


そして今回生まれた双子AIの処遇についてである。

幸い、AIの間では周知の事実だが、プレイヤーにはまだ広がっていない。

そこで運営からは一方を削除できないのなら、取り上げるべきとの声が上がった。

それに開発部が待ったをかけた。

現在のシステムでは一方を取り上げた場合、ゲームシステム全体に影響を及ぼすことになると告げた。

新規登録時点で一つのAIプログラムとして登録するのであれば問題ないが、すでに登録され、データとしていろいろな所と紐づいてしまった現在となっては、一方を取り上げると、そのプレイヤーは新規登録をしない限り遊べなくなるというものだった。

なら、そのプレイヤーに新規登録をさせればいいと言う運営部に、今度は管理AIから物言いが入った。

むやみに広めないのは了承できるが、こちらの都合でパートナーから切り離すのか?プレイヤーは言わばAIを育てる親。つまり、生まれたばかりの子供を親から引き離すのか?と。

これには運営も黙るしかなかった。

運営、特に広報はどうしてもこの不具合が表立つことを避けたいようだった。

だが、すでに起きてしまったこと。もみ消しは逆に会社の信頼を損なうことにつながるとして、社長の”今回が特例とし、観察を続ける。”という鶴の一声で現状維持となった。


最後に、この事象がデバック。つまり保守点検でなぜ見つけられなかったのか?について話し合われた。

それが決まらないと、また似たような不具合が出てしまいかねない。

これについては素直に確認方法に穴があったとしか言いようがなかった。

運営は今後来るであろうプレイヤーのクレーム対策を、不具合を見つけられなかった保守点検部に押し付けようとしたが、保守点検部は点検表の通りに実施しただけで、その点検表は運営が作成していることを報告した。

そこで運営が作った点検表を確認すると、テストパラメーターが同一のものを使う仕組みになっていたり、一気通貫(いっつう)のテストは初めの1回だけで、仕様変更や今回問題となったカテゴリーの追加などは個別の単体テストレベルだったことが分かった。

そのため、運営の自業自得ということでクレーム対策は通常通り運営で行うことになり、さらにテスト項目については開発部のクロスチェックを受けることとなった。


その後、開発部の修正は翌朝までに終わったが、運営のテストケースの作成に丸2日、その実施に3日を要し、新規登録が再開されたのは5日後だった。


管理AIは双子とそのプレイヤーを守るために、プレイヤーへは新規登録処理の緊急メンテナンスとだけ、AIたちには双子は人間世界から特例として了承され、許可がない限りプレイヤーには広めないようにとの周知がなされた。

ただ、この会議の翌日、運営はさらに肩身が狭くなっていく事となってしまう。

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