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4 失踪(2)

〇学園・グラウンド

   倉庫前。

   サラ、地面に座っている。

   トム、歩いてくる。

   サラの隣に座る。

サラ「あんたの言う通りだった」

トム「え?」

サラ「ほんとにいなくなるなんて」

トム「帰ってくるよ」

サラ「そんなのわかんないじゃん」

トム「信じよ」

   サラ、うつむく。

トム「僕、近所のお地蔵さんにお願いしてくるから」

サラ「ほんとは昨日あたしが一緒に行くはずだったんだ」

トム「え?」

サラ「ウィルに誘われたのに断ったの」

トム「エリンのため?」

   サラ、頷く。

サラ「行けばよかった。あたしなら何かできたかも……」

   トム、サラを見ている。

サラ「いけ好かない女だと思ってたけど、肝心なときもビービー泣いてるだけかよ……」

トム「サラ、悲しいときは泣いていいと思う」

   サラ、うつむく。

   トム、サラを見ている。

   サラ、膝を抱え、顔を伏せる。

   トム、空を見上げる。


〇同・女子寮・305

   エリン、ベッドに横になっている。

   ドアを叩く音がする。

   エリン、ドアを開ける。

   ノア、立っている。

ノア「体調はどう? 売店でサンドイッチ買ってきたんだ」

   ノア、エリンに袋を渡す。

エリン「ありがとう。そういえばお腹空いたわ。入って」

   ノア、中に入り、椅子に座る。

エリン「お茶淹れるわ」

ノア「いいよ。すぐに帰るから」

エリン「そう? わかったわ。ありがとう」

   エリン、椅子に座る。

   ノア、エリンの頬を見る。

ノア「頬どうしたの? なんか赤くなってるよ?」

   エリン、頬を隠す。

エリン「やだ、そうなの? ずっと横になってたからかも……」

ノア「見せて」

   ノア、エリンの手をつかみ、頬を見る。

   エリン、目を逸らす。

ノア「少し腫れてるね。冷やした方がいいよ」

エリン「そ、そうね。ありがとう」

ノア「ほんとは何があったの?」

エリン「実は……朝、サラと喧嘩したの」

ノア「え!? まさか叩かれたの!?」

エリン「ええ。でも、私が先に叩いちゃったから悪いのは私」

ノア「何か言われたの?」

エリン「悲劇のヒロイン気取りかって……」

   ノア、眉をひそめる。

ノア「そんなことを……」

エリン「肝心なときには役立たないとも言われたわ……」

ノア「サラは何がしたいんだ。シンディにも同じこと言ってたよ」

エリン「そう……。止めたけど無駄だったみたいね」

ノア「サラの言うことは気にしなくていいよ。僕らにできることはないんだから」

エリン「ありがとう。サラってほんと何考えてるかわからない。ゆっくり悲しませてもくれないの」

ノア「エリンはゆっくり自分の心を癒すときだよ。サラは僕がなんとかするから」

エリン「うん。すごく頼もしいわ」

   二人、微笑む。


〇同・食堂

   シンディとブレンダ、食事をしている。

   サラ、歩いてくる。

サラ「朝はごめん。やりすぎた」

   二人、サラを見上げる。

サラ「なんかしたくて焦ってた」

シンディ「わかるわ。私もそわそわするもの」

サラ「怪我しなかった?」

シンディ「ええ、大丈夫よ」

サラ「ブレンダは? 突き飛ばして悪かったよ」

ブレンダ「大丈夫」

   ブレンダ、微笑む。

   シンディ、サラの手を握る。

シンディ「ウィルはきっと帰ってくるわ」

ブレンダ「そうよ。待ちましょ」

サラ「うん」

シンディ「私もこれから毎日捜すって約束するわ」

サラ「うん。ありがとう。でも無理しないで」

シンディ「ええ」

   3人、微笑む。


〇同・廊下

   ジョー、蒼玉を持ち、歩いている。

   ラルフとぶつかる。

ラルフ「悪い」

   ジョー、蒼玉を落とす。

ジョー「あ!」

   ラルフ、蒼玉を拾う。

   ジョーに差し出す。

ラルフ「はい」

ジョー「ありがとう」

   ジョー、受け取り、蒼玉を見る。

   ラルフ、蒼玉を見る。

ラルフ「その玉……」

ジョー「え? あなたも持ってるの?」

ラルフ「いや」

ジョー「そう」

   ジョー、蒼玉を見る。

ジョー「でもよかった。割れてたらどうしようかと思ったわ」

ラルフ「そんなに大事なものなのか?」

ジョー「ええ。友情の証なの」

ラルフ「ウィルからもらったのか?」

ジョー「まあ、そうね。実際はサラからもらったけど、二人で手分けして配ってるみたいだから、ウィルからもらったって言ってもいいわ」

ラルフ「配りまわってるのか?」

ジョー「んー……。誰でもってわけではないけど、仲良くなりたい数人ってとこかしら」

ラルフ「仲良くなりたい……か」

ジョー「でもどうしてウィルからってわかったの?」

ラルフ「え? ああ、あいつが持ってるの見たから」

   ジョー、ラルフを見る。

ラルフ「なんだよ」

ジョー「もらったんでしょ」

ラルフ「もらってない」

ジョー「嘘ばっかり。もらったくせに」

ラルフ「もらってないって言ってるだろ」

ジョー「もう、照れなくてもいいじゃない。友達作ろうって思えたんでしょ?」

ラルフ「もらってない。断った」

ジョー「え?」

ラルフ「見せられたけど断った」

ジョー「そう。ウィル、悲しかったでしょうね」

   ラルフ、目を逸らす。

ジョー「どうしてそんなにひとりを好むの?」

ラルフ「めんどくさいことに巻き込まれるのは嫌だからだ」

ジョー「それはそれで楽しいわよ? 私もひとりが好きだけど、なんかおもしろそうだから参加したの」

   ジョー、ラルフの顔の前に蒼玉を差し出す。

ラルフ「なんだ」

   ラルフ、顔を背ける。

ジョー「見て。この玉の中をよーく見て」

   ラルフ、眉をひそめ、玉を覗く。

ラルフ「なんなんだよ……」

ジョー「玉を受け取ってもらえなかったときの寂しそうなウィルが見えるはずよ。どうして? どうして受け取ってくれないの? 僕が嫌いな――」

ラルフ「くだらない」

   ラルフ、顔を背ける。

ジョー「まあ、それは冗談として。一見無駄に見えることが人生を豊かにするものよ。気になるんでしょ? ウィルのこと」

ラルフ「べつに」

ジョー「まあ、いいわ」

   ジョー、ラルフの手を取る。

   蒼玉を持った自分の手にラルフの手を重ねる。

ラルフ「何してんだ」

ジョー「祈るの。ウィルが無事に帰ってきますようにって」

   ラルフ、手を離す。

ラルフ「やめろ。祈りたきゃひとりで祈ってろ」

ジョー「友達のために何かやりたいかと思って」

ラルフ「友達じゃないし、やりたくもない。おまえふざけてんだろ。玉持ってるわりにショックも受けてなさそうだしな」

ジョー「あら、そんなことないわよ? いなくなったわね。どうしてるかしらって思いをはせるくらいはしてるわ」

ラルフ「もういい。おまえと話してたらイラつくだけだ」

   ラルフ、歩いていく。

   ジョー、ラルフを見ている。


〇倉庫

   ウィル、壁にもたれ、ぐったりとしている。

   手錠がつけられている。

   男、鞭を持ち、立っている。

   ドアが開く。

   ハロルド(40)、入ってくる。

男「ボス。逃げようとしたのでシメときました」

ハロルド「そうか」

   ハロルド、ウィルを見る。

ハロルド「なぜ逃げるんだ? 感動の親子再会を果たしたところだというのに」

   ウィル、ハロルドを見上げる。

ハロルド「苦労して見つけ出したんだ。もう息子と離れたくない。スイーパーの一員になると言ってくれ」

   ウィル、首を横に振る。

ハロルド「一緒に差別主義者どもを一掃して、世界を変えようではないか」

   ウィル、首を横に振る。

ハロルド「なぜだ。迫害されたままでいいのか? 私たち超能力者は好きで能力を身につけたわけでもなければ、能力を失くすこともできないんだ。このままじゃ一生迫害され続けるんだぞ?」

ウィル「やられたらやり返すを繰り返しても前には進まない」

ハロルド「私にもそう思っていた日々があった。だが、そんな甘いことを言っていても何も救えないんだ。この間にもひとりまたひとりと命を落としていく。法律が私たちを守ってくれないのなら、自分たちで守るしかない。片っ端から皆殺しにするしかないんだ」

ウィル「そんなことしたら今よりもひどい状――」

ハロルド「まあいい。気が変わるまで気長に待とう」

   ハロルド、男の肩に手を置く。

ハロルド「頼むぞ」

男「はい」

   男、ウィルを見る。

   ハロルド、出ていく。

   ウィル、男を見上げる。

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