4 失踪(1)
〇街
エリン、立っている。
ウィル、クレープを二つ持ち、歩いてくる。
ウィル「お待たせ。はい」
ウィル、エリンにクレープを渡す。
エリン「ありがとう」
二人、クレープを食べる。
エリン「おいしい」
ウィル「映画までまだ時間あるけどどうする?」
エリン「そうね……。モールをぶらぶらして冷やかしショッピングしましょ」
二人、微笑み、歩いていく。
〇学園・グラウンド
サラ、バスケットゴールに向かい、ボールを投げている。
トム、歩いてくる。
トム「サラ! こんなとこにいたんだね」
サラ、振り返る。
サラ「何? なんか用?」
トム「最近、一緒にお昼食べなくなったね。なんで?」
サラ「べつに毎日食べなくてもいいじゃん」
トム「そうだけど。寂しい」
サラ「え?」
トム「だってまだそんなに仲良くない人と仲良くなるにはランチの時間って貴重なんだよ?」
サラ「そ、そうだけど」
トム「タヨウセイ救うには僕らが仲良くならなきゃだめなんでしょ?」
サラ「まあ……」
サラ、目を逸らす。
トム「でも、これは僕のわがまま!」
トム、微笑む。
サラ「え?」
トム「人によってやりたいことやペースっていろいろだから一緒に食べたくないならそれでもいい。サラがしたいことは何?」
サラ「べつに食べたくないってわけじゃないんだ……」
トム「え? そうなの?」
サラ「秘密守れる?」
トム「え……うん、がんばる」
サラ「エリンがウィルのこと好きみたいなんだ」
トム「え!? そうなの? ショック……」
サラ「え?」
トム「え?」
サラ「まあ、いいや。で、エリンがウィルをものにするまではあんま近づかないとこかなって」
トム「なんで? それいつまで?」
サラ「さあ? でもあたしがいると邪魔みたいだったから」
トム「エリンがそう言ったの?」
サラ「まあ、はっきりとは言われてないけど、そんな感じ」
トム、眉をひそめる。
トム「そんなの変だよ! サラはそれでいいの? ウィルを避けてていいの?」
サラ「んー……。まあ、べつに困ってはないかな。あんなに必死なやつも珍しいから応援したい気もするしね」
トム「そうなんだ……。ウィルかわいそう」
サラ「なんで? あんなに好かれてんのに」
トム「僕にはサラと仲良さそうに見えてたから。サラにその程度しか思われてないって知ったらショックだろうなって」
サラ「あんたが言わなきゃいいじゃん」
トム「そうだけど」
サラ「まあ、一生ってわけじゃないし。エリンとは中等部のころから仲良しらしいよ」
トム、サラを見ている。
サラ「エリンとくっついてからでも遅くないじゃん。それまであたしはあんたとかジョーと絆深めればいいし」
トム「そのとき、その一瞬が大事って誰か言ってた」
サラ「誰だよ」
トム「とにかく。いつまでもいると思うな親とウィルだよ」
サラ「はあ?」
トム「ウィルの心が離れちゃったらもう仲良くなれないよ?」
サラ「わかった、わかった。嫌われることはしなきゃいいんだろ?」
トム「んー……。そうじゃなくて――」
サラ「そんなことより、事情わかってくれたなら今度からジョーと3人で昼食べようよ」
トム「んー……わかった」
サラ「よし、決まり!」
サラ、微笑む。
〇同・女子寮・ロビー
ブレンダとシンディ、ソファに座っている。
ブレンダ「大丈夫? 顔色悪いわよ?」
シンディ「うん、なぜか朝からそわそわするの。気持ちが落ち着かない感じ」
ブレンダ「部屋帰って休んだ方がいいんじゃない?」
シンディ「ひとりでいるとなんだか怖くて……」
ブレンダ「え? 医務室行く?」
シンディ「ううん。ブレンダがそばにいてくれたら平気」
ブレンダ、微笑む。
シンディ「は!」
ブレンダ「何!?」
シンディ「のまれていく……ひとつの影が……」
ブレンダ「え? 何? なんのこと?」
シンディ「わからない。でも、すごく怖いわ」
シンディ、ブレンダに抱きつく。
ブレンダ、シンディを抱きしめる。
〇街(夕)
ウィルとエリン、歩いている。
エリン「いい映画だったわね」
ウィル「うん。隣の人のいびきさえなければ」
二人、笑う。
エリン「疲れてたのかしら? 寝るのはいいけど、いびきは勘弁してほしいわよね」
ウィル「おかげでところどころ聞こえなかったよ」
エリン「そうよね……。また来ましょ」
ウィル「そうだね」
二人の近くで車が止まる。
二人、車を見る。
女、助手席から降りる。
男、後部座席から降りる。
女、エリンを突き飛ばす。
エリン、転ぶ。
ウィル「エリン!」
男、ウィルの腕をつかむ。
ウィル、驚く。
男、ウィルを車に押し込む。
エリン「ウィル!」
女と男、車に乗り込む。
車が走っていく。
エリン「ウィルー!」
エリン、車を見ている。
〇学園・教室(朝)
生徒たち、席に座っている。
ベケット、入ってくる。
サラ、隣の席を見る。
ベケット「はい。じゃあ、教科書――」
サラ「ねえ、ウィルは? エリンもいないけど」
サラ、ベケットを見る。
ベケット、サラを見る。
生徒たちを見回す。
生徒たち、ベケットを見ている。
ベケット「みんな、落ち着いて聞いてね」
生徒たち、ベケットを見ている。
ベケット「昨日の夕方ごろウィルが何者かに拉致されたの。現在も行方がわからなくて捜索中よ。みんなも出歩くときはくれぐれも気をつけて」
生徒たち、ざわめく。
サラ、立ち上がる。
サラ「冗談だろ? 嘘つくなよ! 昨日までいたじゃん!」
ベケット、サラを見ている。
サラ「エリンは? エリンはなんでいないんだよ」
ベケット「ウィルが目の前で連れ去られてショックを受けちゃってね」
サラ、走って出ていく。
ベケット「あ! サラ!」
生徒たち、ざわめいている。
〇同・女子寮・305(朝)
エリン、ベッドに横になっている。
ドアを叩く音がする。
エリン、泣いている。
サラ(声)「エリン! いるんだろ!? エリン!」
エリン「今は会いたくないの」
サラ(声)「何があったんだよ! どんなやつだった!?」
エリン「警察に話したわ。だからお願い。ほっといて!」
サラ(声)「なんで昨日、言ってくれなかったんだよ!」
エリン「言ってどうなるの?」
サラ(声)「捜す手伝いくらいできたよ!」
エリン、起き上がる。
ドアを開ける。
サラ、立っている。
エリン「無理よ。相手は車だし、どこへ行ったのかもわからないのよ? どうしてそっとしておいてくれないの?」
サラ「あんたはそこで泣いてるだけかよ」
エリン「え?」
サラ「ウィルのこと好きなんだろ!? 肝心なときには何もしないでただ泣いて、悲劇のヒロイン気取り?」
エリン、サラの頬を叩く。
サラ、エリンの頬を叩く。
エリン、驚く。
エリン「何するのよ!」
サラ「こっちのセリフ!」
エリン「警察には全部話した。これ以上何ができるっていうの?」
サラ「シンディに頼めばいいじゃん」
エリン「わからないって言われたわ」
サラ「わかるまで部屋に閉じ込めてでもやらせりゃいいじゃん」
エリン「そんなのどうかしてるわ。シンディがかわいそうじゃない!」
サラ「シンディよりウィルの方がピンチだろ!? そんなこと言ってる場合かよ!」
エリン「大事なことよ! 友達傷つけてなんとも思わない方がどうかしてるわ!」
サラ「あっそ! じゃ、あたしがやる。あんたはいつまでもそこでビービー泣いてな!」
サラ、歩いていく。
エリン、眉をひそめ、サラを見ている。
〇同・教室(朝)
ベケット、黒板に書いている。
生徒たち、黒板を見ている。
サラ、入ってくる。
ベケット「サラ、どこ行ってたの? 早く席に――」
サラ、シンディのもとに歩いていく。
腕をつかむ。
シンディ「な、なあに!?」
サラ「授業なんていいからウィル捜して」
シンディ「え? それは無理なの。やりたいのよ? でもどうしてもわからないの」
サラ「本気出してないはず」
サラ、シンディの腕を引っ張る。
ベケット「サラ! 何してるの! 早く席につきなさい!」
シンディ、顔をしかめる。
シンディ「い、痛いわ……」
ブレンダ、走ってくる。
サラの腕をつかみ、引き離す。
ブレンダ「サラ! やめて! 痛がってるでしょ!」
サラ「黙って来ればいいんだよ! いつまでもケツ上げねえから痛いんだろ!」
サラ、シンディの腕をつかもうとする。
ブレンダ、サラを突き飛ばす。
ブレンダ「いい加減にして!」
サラ、ブレンダを突き飛ばす。
サラ「どけよ!」
ブレンダ、転ぶ。
シンディ「ブレンダ!」
生徒たち、ざわめく。
ベケット、走ってくる。
ベケット「やめなさい!」
ベケット、サラを背後から捕まえる。
トム「サラ!」
サラ、ベケットの腕を振り払う。
シンディを見る。
サラ「役立たず!」
サラ、出ていく。
皆、サラを見ている。