3 処分(2)
〇学園・廊下(朝)
サラ、歩いている。
ウィル、歩いてくる。
ウィル「サラ、ちょっといいかな」
サラ「何?」
ウィル「次の休みなんだけど一緒に――」
サラ「無理」
ウィル「え?」
サラ「他あたりな」
サラ、歩いていく。
ウィル、サラを見ている。
エリン、歩いてくる。
エリン「ウィル、どうかしたの?」
ウィル、振り返る。
ウィル「いや、なんでも……」
エリン「そう。ねえ、今日、お昼一緒に食べない?」
ウィル「うん、いいよ」
エリン「実はウィルの分のお弁当も作ってきたの」
ウィル「え? そうなの?」
エリン「楽しみにしてて」
ウィル「ありがとう」
二人、微笑む。
〇同・裏庭
ウィル、歩いている。
辺りを見回している。
3人の男子生徒、歩いてくる。
男子生徒A「おい、そこの赤毛」
ウィル、振り返る。
ウィル「この前の……」
男子生徒たち、ウィルのもとに歩いてくる。
ウィル「なんですか?」
男子生徒B「おまえだろチクったの」
男子生徒A「隠せねえぞ。おまえの顔、覚えてっから」
ウィル「見たことを言っただけです」
男子生徒C「そのせいで俺ら怒られたんだよ!」
ウィル、眉をひそめる。
男子生徒A「謝れ」
ウィル「嫌です。失礼します」
ウィル、歩こうとする。
男子生徒B、ウィルの腕をつかむ。
男子生徒B「こっち来い!」
ウィル「離してください」
ウィル、腕を振り払おうとする。
男子生徒B、ウィルの腕を引っ張り、歩いていく。
男子生徒AとC、歩いていく。
〇同・グラウンド
掃除用具入れがある。
男子生徒たち、ウィルの腕を引っ張り、歩いてくる。
腕を離す。
男子生徒B「気は変わったか?」
ウィル「なんなんですか。約束があるので失礼します」
男子生徒B、ウィルの腕をつかむ。
男子生徒C、掃除用具入れのドアを開ける。
男子生徒B、ウィルを掃除用具入れの中に押し込む。
ドアを閉める。
ウィル、驚く。
男子生徒AとC、掃除用具入れにロープを巻き付け、縛る。
ウィル「何するんですか! 開けてください!」
ウィル、ドアを叩く。
男子生徒たち、笑う。
男子生徒A「謝らない罰だ!」
男子生徒たち、掃除用具入れを蹴る。
男子生徒B、掃除用具入れを倒す。
男子生徒たち、笑いながら歩いていく。
〇同・食堂
エリン、座っている。
テーブルに弁当が二つ置いてある。
時計を見る。
うつむく。
ノアとロイ、歩いてくる。
ノア、エリンを見る。
エリン、泣いている。
ノア「エリン? どうしたの?」
ノア、エリンのもとに歩いていく。
ロイ「何かあったんですか?」
エリン、泣いている。
ノアとロイ、見合う。
エリン「なんで? どうしてサラなの……」
ロイ「サラ?」
エリン「朝から早起きして作ったのに……」
ノア、弁当を見る。
エリン「約束したのに……」
ノア「ウィル?」
エリン、頷く。
ノア、眉をひそめる。
ロイ「約束破ってどこか行っちゃったんですか? それはひどいですね」
エリン「サラに話があるって……それっきり」
ノア「ちょっと捜してくるよ」
エリン、ノアの腕をつかむ。
涙を拭う。
エリン「いいの。もういい……ありがとう」
ノア「でも――」
エリン「二人も早くお昼食べないと時間なくなっちゃうわよ」
ノアとロイ、見合う。
エリン「それにこんな顔見せられない」
ノア、エリンを見ている。
エリン「よかったら二人でこれ食べてくれない?」
エリン、弁当を二人に差し出す。
ロイ「え? エリンはどうするんです?」
エリン「食欲なくなっちゃった」
エリン、微笑む。
ノア「やっぱり――」
エリン「いいの。ノアありがとう。今は二人に食べてほしい気分なの」
ロイ「ほんとにいいんですか?」
エリン「ええ」
エリン、微笑む。
ノアとロイ、見合う。
ノア「じゃあ……」
二人、座る。
弁当を開ける。
ロイ「わあ、おいしそうですね!」
ノア「人参が型抜きされてる。かわいい」
二人、食べる。
ロイ「うん、おいしい! このポテトサラダすごくおいしいですよ!」
ノア「この玉ねぎも甘くておいしい」
エリン、微笑む。
エリン「よかった。そんなに喜んでもらえたら作りがいがあるわ」
ロイ「これ売れますよ!」
エリン「ロイったら大げさよ」
ロイ「ほんとですって! 大きい声では言えませんけど、ここの食堂よりおいしいですよ?」
エリン、微笑む。
エリン「ありがとう。二人といると元気が出るわ」
3人、微笑む。
エリン「そうだわ。これ受け取ってくれない?」
エリン、二つの玉を出す。
ノアに白玉を渡す。
ロイに橙玉を渡す。
二人、玉を見て、見合う。
〇同・グラウンド
ロープで縛られた掃除用具入れが倒れている。
ラルフ、走ってくる。
ロープを解き、ドアを開ける。
ウィル、ぐったりしている。
ラルフ、ウィルを引っ張り出す。
ラルフ「おい! ウィル!」
ラルフ、ウィルの体を揺らす。
ウィル、目を開ける。
ウィル「ラルフ……」
ラルフ「大丈夫か?」
ウィル「どうしてこんなとこに?」
ラルフ「この前のバカ3人がでかい声で赤毛がどうとか、いつ出してやるかとか話してるの聞いてな」
ウィル「そっか、ありがとう」
ラルフ「やっぱこうなったか……」
ウィル「え?」
ウィル、体を起こす。
ラルフ「罰受けることになって、あいつらが黙ってないだろうなとは思ってた。でも俺と関わらなければバレないと思ってたんだけどな……」
ウィル「心配してくれてたんだ」
ラルフ、目を逸らす。
ウィル「実はあの日、助けようと思って裏庭に行ったんだ。もうそのときにはラルフいなかったけど。そのとき彼らと目が合ったからとっくにバレてた」
ラルフ「そうだったのか」
ウィル「結局、あの人たちは反省しなかったんだな……」
ラルフ「そういうもんだ。あいつらは腐ってる」
ウィル、目を逸らす。
ラルフ「水飲むか?」
ラルフ、ポケットからペットボトルの水を出し、ウィルに差し出す。
ウィル「え?」
ラルフ「暑かっただろ。閉じ込められて」
ウィル「ありがとう」
ウィル、受け取り、飲む。
ラルフ「あいつらには気をつけろよ。また何してくるかわからないからな」
ラルフ、立ち上がる。
ウィル「ラルフ」
ラルフ、ウィルを見る。
ウィル、黒玉を差し出す。
ウィル「これ受け取ってくれないかな」
ラルフ「なんだそれ」
ウィル「友情の証」
ラルフ「前にも言っただろ。俺たちは合わない」
ラルフ、歩いていく。
ウィル、ラルフを見ている。
〇同・教室
ウィル、入ってくる。
エリン、席に座っている。
ウィル、エリンのもとに歩いていく。
ウィル「エリン、ごめん。お昼行けなくて……」
エリン、教科書を見ている。
ウィル「行きたかったんだけど、いろいろあって……。お弁――」
エリン「もういいの。お弁当はノアとロイにあげたから。すごく喜んでくれたわ」
ウィル「そっか……」
エリン「サラとは話できたの?」
ウィル「ううん」
エリン「え?」
エリン、ウィルを見る。
エリン「じゃあ、何してたの?」
ウィル、目を逸らす。
エリン「ウィル?」
ウィル「ロッカーの中に入ってた」
エリン、眉をひそめる。
エリン「ええ?」
ウィル「上級生の癇にさわったみたいで閉じ込められちゃって……」
エリン「そんな……。ごめんなさい」
ウィル「え?」
エリン「私、勘違いして……。すっぽかされたって怒って……」
ウィル「そりゃそう思うよ」
エリン「ううん。ウィルはそんなことする人じゃないわ。私ったら……」
ウィル「ねえ、埋め合わせさせて」
エリン「え? ウィルは悪くないじゃない」
ウィル「今度の日曜、映画観に行かない?」
エリン「日曜。楽しそう」
エリン、微笑む。
ウィル「じゃあ、決まりだね」
二人、微笑む。