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17話 加藤さんとの放課後デート



 放課後になった。


「やっと解放された」


 休み時間になるたびにやたら事情を聞きに来る高橋をあしらっていた。


 大変だったよまったく。


 さすがに彼女たちも学校の中であからさまにくっついてくることはなかったから、俺たちの関係がバレることはなかったのはよかった。


 ああ、あと、宿題はなんとか提出できた。


 休んでいたから遅れてもしょうがないと見逃されていたのもよかった。



 で、まあ放課後になったわけだが。



「行くぞ京介。デートだ」



 今日は加藤さんとのデートの日だ。


 加藤さんは元不良の少女で、7人いる俺の彼女の1人。


 曜日ごとにデートする日が決まっていて、今日は彼女とデートをする日である。



「どこ行くんだよ。なんも予定ないならあたしが決めるぞ」


「行きたいところはあるよ」


 デートがあることは事前に知っていたから、どこにいくのかを考えていた。


「猫カフェに行こう」






 デート先は猫カフェ。


 それを聞いた加藤さんの反応は、予想通りだった。


「ネコカフェ!? そんなところにあたしを連れていくとはな!」


 反対はしなかったものの、不服そうだ。


 今までこういうところには来たことがなかったのだろう。


 元不良だからか、そういう癒し系や可愛い系の店には行ったことないというのはわかる。


 そもそも動物と触れ合ったこともなかったのではないだろうか。


 まあ、実は俺もこういうところは初めてなんだけどな。



「つーかべつにあたしじゃなくていいだろ、こういうところは」


 加藤さんが言う。


「ネコカフェっていうのはよ。青山とか、上村とか。そういう女っぽいのが好きな奴に行かせればいいじゃねえか」



 確かに、青山さんは猫カフェとか好きそう。

 というより実際好きで、猫カフェとかフクロウカフェとかには何度もいっていると聞いている。


 上村さんも、実際に家でイヌとかネコとか動物をたくさん飼っている。


 猫カフェとかはとっても好きそうだ。



「こんな店、あたしには似合わねえよ」


「でも俺は加藤さんと来たかったんだよ」


 素直にそう告げると、加藤さんは顔を赤くしてそっぽ向いた。


「な、なんだよそれ。まったく、なんだよもぉ……」


 加藤さんは照れて小さくぼやく。


 とっても可愛い。


 いつもはカッコいい加藤さんだが、時々照れて顔を赤くしている姿は可愛い。


「そこまで言うんなら別にいいけどよ」


 加藤さんは猫カフェに行くことを了承し、入店した。



 店員さんに説明を受け、猫カフェに入る。


 そこの猫カフェは、飲食を楽しむスペースと猫と戯れるスペースが分かれている。


 猫に飲み物や食べ物がつかないようにするためだろう。


 飲食は注文してもしなくても構わないけど、猫カフェにいる時間ごとに料金が発生する。


 飲食代よりも、この時間ごとの代金で儲けているのだろう。



 ソファのような椅子に座っていると、にゃあと鳴きながら猫が来る。


 目当ては餌だ。

 餌も買うことができて、当然ながらそれを持っていれば猫は寄ってくる。


 現金な奴め。

 だがそこも可愛い。


 餌を手に取り猫の方へと持っていくと、パクパクと食べ始めた。


 加藤さんも同じようにして猫に餌を与える。


「わっ、わぁっ!」


 手の上の餌を食べる猫に、加藤さんが驚く。


「なんだよおい。くすぐったいな」


 餌を上げている内に、猫が何匹か集まってくる。


 餌を食べている猫。

 他の猫が食べ終わるのを待っている猫。

 そして加藤さんになついて膝の上に座る猫。


 周りに猫が来てしまい、加藤さんが身動きが取れなくなる。


「京介、おい。どうしようこれ」


「そのままでいればいいんじゃない?」


 餌が無くなれば猫も別のところに行くだろうし。


 俺の予想通り、餌が全て食べつくされた後は猫は別の餌を持つ人のところへ行ってしまった。


 薄情な奴らだ。


 と、思ったが。

 一匹だけ加藤さんから離れない猫もいた。


 加藤さんの膝の上に乗った猫だ。


 我が物顔で膝上を占拠していて、加藤さんも戸惑っている。


 恐る恐るその背をなでると、気持ちよさそうに「にゃー」と鳴いた。


 その姿に加藤さんは思わず笑みがこぼれた。


「なんだよこいつ。まったくしょうがないな。もう」


 しょうがない奴だ、と言いながら猫をなでる加藤さん。


 言葉とは裏腹に表情はだらしない笑顔で、癒されているようだった。


 最初は「こんな店は自分には似合わない」と言っていたのに、存分に楽しんでいるようだった。



「お、あの子が懐くとは珍しい」


 加藤さんの膝に居座る猫を見て、店員さんが感想を漏らす。


「あの子はあんまり人に懐かない人見知りの子なんですけどね」


「人見知りなんですか」


「アウトローというか、一匹狼な気質があるんですよね」


 そこも魅力なんですけどね、と店員さんは付け加える。


 アウトローね。

 元不良の加藤さんと、そういうところでシンパシーを感じたのかな。


 まあ加藤さんは別に一匹狼じゃなかったけど。

 レディース率いていたくらいだしな。



「あ、ちなみにお兄さんの周りの猫はメスばっかりですね。女の子にもてるんですねえ」


「はは……。どうなんですかね」


 店員さんの言葉に、俺は苦笑いするしかなかった。




 

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[一言] 遂に種族の壁を超えたかw
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