第一章
人はそれぞれ、使命を持って生まれてくる。
そんなセリフをどこかで聞いたが、それはどこまで本当なのだろうか。
大陸を統べた英雄も、世界の覇権を争う大国のトップも、人類の未来を握る企業群も――その使命に導かれた者たちなのだろうか。
だったら俺は?俺の持つ使命とは何か……いや、どこまでが使命なのか、どこまで達成すればいいんだろうか。
人生には、ゲームみたいに明確なゴールがない。強いて言うなら死んだら終わりってだけで、その前にゴールが来る人だっている。
そう、結局悩んだところで答えなんか出ない。だからやることやって、やりたくないこともやって、一歩一歩進んで行って、地道に成長してかないといけないのが凡人なんすわ。つれえわ……
そんな感じでしみじみと夜空を見上げていると、事務所のドアが開いて、中にいたジジイが声を掛けてきた。
「ハルト様、外で何をしているのですかな?誘拐でもされたりしたら一大事ですぞ。」
ジジイ、お前がそれを言うか!と心の中でツッコミながら、俺は仲間達(……仲間達?うんそうだ、仲間達だな、一応。)の元へ戻る。
明日はまた地方へ行って、後援者へ協力を呼びかけなきゃならない。明日はどこだっけ?どこだか忘れたけど、準備はハイスペイケメンのニコラが整えてくれてるし、俺が心配する要素はない。
どうか、飯の美味い地方でありますように。
俺はそれだけ祈って、ドアを閉めた。