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警備が気付いたよ

拙作『生き返った冒険者のクエスト攻略生活』のコミカライズが、ヤングエースアップにて連載スタートいたしました!

(直接リンクは小説下部にあります)


こちらも合わせて、宜しくお願いいたします。

「それで、妹はどこに?」

「それが、俺にもわかりません。この建物のどこかにいるとは思うんですけど」

「ん、どういうこと?」

「この建物には、隠し部屋があるんです。一度そこに入ったことがあるんですが、目隠しをされた状態だったので……」

「ふぅん」

「で、でも、ここまで来れば、大丈夫です。俺の手で、きっと妹を見つけ出します!」


 たしかに、時間をかければ隠し部屋を見つけられるかもしれない。

 だが、クリスはすぐにこの国から立ち去りたい。


(どうしようかなあ)


 悩みながら、スキルボードをいじる。

 その時ふと、以前思いついた魔術の使い方を思い出した。


「≪シャドウ・サーバント≫」


 クリスは影の召使いを召喚する。

 それも、一体ではない。一気に百体召喚した。


 通路にある影という影から、小さなサーバントがポコポコ発生する。


「――ッ!?」


 それを見たシモンが眦を決した。

 口を両手で塞いでいるのは、悲鳴を上げそうになったからか。


 サーバントも、百体揃うと圧巻だ。

 まるでモコモコの、影の絨毯みたいだった。


■魔法コスト:302/9999

■属性:【シャドウ・サーバント】+

■強化度

 威力:1▲ 飛距離:― 範囲:― 抵抗性:1▲ 数:100▲

■特殊能力:【隠密】


 クリスが思い出したのは、シャドウ・サーバントの使い方だ。

 以前、シャーロットを助けるために、クリスはサーバントを通じて魔術を使用した。

 他にも使い道がありそうだと、その時から温めていた計画を今回実行する。


「皆、よく聞いて。これから隠し部屋を探して欲しいんだ」

「(きゅっきゅ!)」(了解ですますたぁ!)

「うんうん。それじゃあ、捜索スタート!」

「(きゅーっ!)」(わーい!)


 百体いるサーバントが、四方八方へと一斉に動き出した。


 クリスが温めていた計画は、サーバントを自分の手足のように使う方法だ。

 元々は、自室に居ながら外を散歩出来ないかと考えていたのだが、そこから発展させて、レーダーのように使えないかと考えた。


 結果は、成功だ。

 まだ隠し部屋は見つかっていないが、サーバントたちの感覚がクリスに伝わってくる。

 中心からジワジワ外側に向かって、建物の形が詳らかになっていく。


 影は世界中のどこにでも存在する。

 もし隠し部屋があるのなら、そこにもまた、影は存在する。

 シャドウ・サーバントが行けない場所は、実質存在しないと言っても過言ではないのだ。


 五分ほどたった頃、サーバントが建物全体を掌握した。

 その中に、不自然な形の階段があった。


「おっ、そこか」


 間違いない。

 隠し部屋への出入り口だ。


「ど、どこですか!?」

「すぐそこの部屋の中。床にある階段が、隠し部屋に通じてるみたい」

「――っ! あ、あの影で、隠し部屋がわかるものなんですね」

「あっ、ストップ」


 扉に手をかけたシモンに、クリスは待ったをかけた。


「なにか?」

「うん……《スリープ》」


 クリスが魔術を発動。

 扉の向こうから、なにか重いものが床に落ちる音が聞こえた。


「これで良し」


 シモンに代って、クリスが扉を開け放った。

 中では、沢山の贅肉を蓄えた男が、大きないびきを掻いて眠っていた。

 衣服の仕立てがかなり良い。

 男はここのオーナーなのかもしれない。


 もしシモンが扉を開けていたら、この男にバレていただろう。

 サーバントが事前に人の位置を伝えてくれていたため、クリスは前もって男を≪スリープ≫で眠らせたのだ。


「このあたりに、階段があるんだけど」

「ここ、ですか? 床が抜けるのか、なにか絡繰りがあるんでしょうね。けど、見ただけじゃわからないですね」


 隠し部屋への入り口は、サーバントが見つけていなければ、ここにあることさえわからなかっただろう。

 出入り口には大理石がきっちり填まっていて、隙間がほとんどない。


「これ、どうやって開けるんだろう?」

「多分ですが、レバーのような仕掛けがあって、それを引けば、床が開くのだと思います。けど、それがどこにあるかは……」

「んじゃ壊そうか」

「えっ!? いや――」

「≪エアカッター≫」

「ちょ、まっ――!!」


 引き留める間もなく、クリスは床を切断。

 空気の刃に切り裂かれた床の一部が、下へと崩落した。


 ――ズゥゥゥン!!


「わあっ、すごい音」

「だからちょっと待ってって言ったのに……」


 クリスの横で、シモンがしゃがみ混んで頭を抱えた。


 やってしまったものはしょうがない。

 そもそも、妹の救出にはあまり時間をかけたくない。

 だから、クリスにとってはこれが最善手だ。


 ――そう自分に言い聞かせて、クリスはシモンの手を引いた。


「シモン、行こう」

「……はあ……はい、わかりました」

「今の音で中の警備が気付いたよ」

「それを早く言ってください!!」


 床の下に現われた階段を、クリスとシモンが急ぎ降りて行く。

 運動音痴なクリスが、途中何度か足を踏み外しそうになった。

 自然と、階段を降りる速度も落ちる。


 それを見かねてか、シモンがクリスを抱き上げた。


「失礼します!」

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新作「『√悪役貴族 処刑回避から始まる覇王道』 を宜しくお願いいたします!
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