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受付嬢の憂鬱

 私の名前はレイン・ジンクレーン。

 フリューゲル王国の王都ホルンにある冒険者ギルドの本部で受付室室長をやっています。(と言っても就任したのは半年前ですが……。)

 室長と言っても仕事内容は受付の仕事の以外に他の受付担当に対する調整と支援が増えたぐらいでしょうか?


 室長であるのと同時に受付担当でもあるので私には担当の冒険者が存在します。

 普通の受付担当の場合、担当する冒険者の数は受付担当の地位が高ければ多くなるのですが、私の場合は担当する冒険者は一人しかいません。

 ただその冒険者が問題なのです。


 その冒険者の名前は”ソウジ”。

 彼は一見すると少しひ弱な田舎から出てきたばかりの少年に思える。

 そんな彼の冒険者ランクはE。魔法学校所属の生徒である事と王国の端、いわゆる辺境都市と言われるユーフォニアムから一人旅をしてきたことを考慮して一人前の冒険者である最低ランクEという事になっている。

 ですがこれは冒険者カードに表示される表向きのランク。


 彼の本当のランクは”EXエクストラ”。


 冒険者の最上級であるSランクを凌駕することもあるとされている者につけられる規格外エクストラのランクです。

 かつてこのランクとされたのはフリューゲル王国の初代国王ホルン陛下。その仲間であった異世界人の勇者。

 国家間の条約で異世界人召喚が禁止された後でも密かに召喚された異世界人にEXランクが付けられました。

 ただ、異世界人でも全てがEXというわけではなく、詳しい調査の結果、危険性が低いとみなされた場合は通常のランクになります。


 そして”ソウジ”も秘密裏に召喚された異世界人の一人であると多くの調査から判断されており、彼の本当の冒険者ランクは”EXエクストラ”となるのです。

 おそらく、彼の冒険者ランクは”EXエクストラ”から変わることはないでしょう。

 危険性がない異世界人の場合、調査をすればおのずと危険がないことが判ってきます。

 しかし、ソウジの場合は調査をすればするほど彼の規格外性が浮き彫りになり”EXエクストラ”ランク以外考えられないと言う結果しか得られませんでした。


 まったく、どこの世界に”ヒヒイロノカネ”製の槍を壊した魔道具の槍の代わりに渡す人がいるのでしょうか?その上、森の賢者と言われる”バロン”を使い魔にする人は聞いたことがありません。

 それに彼が持つ銀のコップとトレイ……間違いなく秘宝アーティファクト。それも国家間の争いになる代物だ。

 こうやって軽く挙げただけでも彼の規格外ぶりが判るという物です。


 そして先程、ソウジから頭の痛くなる報告がなされました。


 ”ダンジョンで魔法の実験を行っていたら秘密の通路を見つけてしまった。”


 という物でした。

 ソウジが魔法の実験をしていたというダンジョンは王都郊外にあり、出現するのも比較的低レベルの魔物しか出ない初級冒険者向けのダンジョンです。

 通常、そのダンジョンでパーティの訓練を行うのですがソウジはパーティを組んでいないらしく魔法に実験を行うためにダンジョンへ行ったらしい。

 魔法使いの中には秘密の実験をするためにダンジョンへ行く者もいますが、ソウジの様に初級ダンジョンの低層で行うのは珍しいことなのです。(注:いないわけではない。)

 その低層の行き止まりで魔法の実験をしていたところ新たな通路を発見したとの事でした。


 実はソウジの言う新たな階層はギルドの秘匿事項の一つです。

 ソウジの見つけた物は”ヒヒイロノカネ”製の扉。かの悪名高き迷宮である深淵アビスの出口の一つ。(深淵アビスの出口はいくつか存在を知られている。逆に入口・・は不明。)

 なぜ出口なのかと言うと、この扉は深淵アビス側からしか開けることが出来ない。つまり深淵アビスから出る時にしか使うことが出来ないため出口なのです。

 そしてその出口は時々(と言っても数十年に一度ですが。)中の魔物が出てくることがありそれを防ぐため当時の人々(主に魔道士)が扉を塞いだと記録にあります。

 扉を塞いだ物はダンジョンの壁と同じ素材であり、通常の武器で簡単に傷が付くような物ではありませんし、傷がついても素早く自動修復の機能が働きます。

 しかし、ソウジはその傷つきにくい壁を抉り取り自動修復を阻害したのです。一体どんな魔法を使ったのでしょうか?


 ……


 とりあえずは、郊外のダンジョンの一時的な封鎖と防壁の修復を手配しなくてはなりません。

 今後もこのようなことがあると考えると実に頭の痛いことです。


 その後も様々な事でソウジに振り回されながらも日々を過ごしてゆく内に一年がすぎる頃、私はイッツの報告を受け取りました。


”ヨブ王国が”勇者”の軍勢によって陥落”


これは一大事です。報告にある勇者とはソウジに関係がある人々なのかもしれません。

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