王立魔法学校
ホルン王国の首都に存在する魔法の教育機関ある。目的はホルン王国の魔法省直下の機関であり王国内にある魔法研究所の研究員を育成するための物だと言う話もある。
それはこの学校の卒業生の多くが魔法研究所などの王国機関に就職しているからなのだ。
その学校の前で僕は魔法学校の学生服(服と言ってもこげ茶色の外套を着ければいいらしい。)に身を包み赤い房の付いた角帽を被り学校の建物を見上げていた。手には入学案内の冊子を持っている姿は新入生そのものだ。
周りには僕と同じ様な格好をした人々が学校の門をくぐり抜けてゆく。
魔法学校は基本三年制で外套の色に違いは無い(と言うよりみんな同じ色だ)が外套のくたびれ具合を見ると上級生だろうか?
(今日からここの学生か。いよいよ魔法の習得が出来ると思うとワクワクしてくるな。ま、魔法の習得が出来なかったときは別の学科があるとも言っていたし問題は無いよな?)
学校の門をくぐると前庭がありその中央には噴水が置かれている。噴水の水は何もない空中から吹き出しいて、ここが魔法関係の学校であると否応なしに認識させられる。
前庭を抜けると十字路になっていて正面が学舎、右側が講堂、左側が運動場になっている。今日は新学期になるので講堂の方へ移動する。
講堂の中に入るといくつもの椅子が並びもう何人かは着席しているようだ。
学校から貰った冊子には“新入生は真ん中、右側は二年生、左側は三年生、着席する場所は自由”と書かれている。
流石に真ん中の席のさらに真ん中でかつ最前列に座るつもりはない。と言っても最後尾に一人ぽつんと座るのも何だかと思う。少し思索した結果、真ん中より少し右ですこし後ろの席に座ることにした。
時間がたつにつれ着席する人の数が増えてきたが……何だろう?僕の周りに人一人分の空間が開いているように思える。
いや思えるんじゃない。実際に前後左右それぞれ一つ席が空いている。
周りに座る人の中には時々僕の方を見ている人がいるが誰一人声を掛けてくることは無かった。
(失敗したなぁ……これなら一番後ろに座るべきだったか?これじゃ悪目立ちしているようなものだ。)
あまりにも目立ちすぎるので最後尾の席に移ろうかとかと考えていると声を掛けてくるものがいた。
「おいお前。見たことのない奴だな?いったいどこの出身だ?」
声の方へ顔を向けると、赤い髪で少しつり目の少年が立っていた。身長は僕よりも少し低いぐらいか?
こげ茶色の外套の下に見える服装は金モールの入った紺色のウエストコートにフリルの付いた白いシャツ。それは貴族がよく着る服装のように思えた。
「出身……と言っても田舎の方で……。」
「違う!その出身じゃない。どこの学校の出かと聞いたんだ?この魔法学校の多くは中等部から上がってきたものが多い。それに地方の学校から入るほどの者なら名前が知られているし俺は知っている。けれども、お前のようなものは見たことがない。」
「学校?僕は学校出身者じゃなく特別試験で……。」
僕がそう言うと赤髪の少年は目を見開いた。
「特別試験!そうか!今期冒険者ギルドから入ったと言うのはお前の事か!」
その少年の声が聞こえたのか僕の周囲がざわざわしだした。
「おい今の聞いたか?特別試験だって。」
「特別試験!あれは超高難易度の試験だろ?殆ど落とすための試験と言われている奴だろ?」
「あれを受かるやつがいるのか……おれは受かる気がしないな。」
特別試験と言うのはかなり難しい試験だったようだ。僕の世界で言う編入試験と似たような難易度なのだろうか?
試験の難易度が判ると同時に何故僕の周りに人がいなかったのかが判明した。見覚えの無い人が座っていたら警戒すると言う事だ。
赤い髪の少年のおかげで理由は知れたが当の本人は用事が済んだとばかりに別の席について知り合いと話している様だ。
僕は周囲に人がいないことは変わらずそのまま入学式は進んでいった。
眠くなるような校長先生の祝辞の後は講堂を出て別棟にある場所で魔法適正の測定だ。測定用の魔道具はこの世界に召喚された時に見た水晶球に似たような形をしている。
その測定用の魔道具の前に新入生は列をなしていた。
測定は一人ひとり順番に行われ測定結果は別室で一人ひとりに教えられるらしい。本人にしか教えないのは知られたくない場合があるからなのだろうか?
僕の番になり水晶球に手を置くとそれを記録していた係の人が額にしわを寄せ何やら唸っていた。何か大きな問題があったのだろうか?反応からすると魔法が使えないと言う事でもなさそうだ。
その後別室(進路指導室のような部屋だろうか?)に呼ばれそこで驚くべきというか?当然と言うべきか?と言った鑑定結果が待ち受けていた。
「ソウジ君。君が使える魔法の属性は“空”属性じゃよ。」
?
空って何?地水火風とか光や闇じゃないの?