爪を切る、皮を剥ぐ、そして……
キマイラの爪は切り落とした手の他、銀の円盤で弾いた時に折れて散らばった物があり簡単に手に入った。
牙は切り落とした顔から引き抜いた。多少?グロい部分が見えたが目をつぶって我慢すれば何とかなった。
こうなればキマイラの皮も手に入れたいが、皮剥ぎ用のスキルも無い上に道具が無ければ難しいだろう。
第一、僕は動物の皮剥ぎの経験も無い。
手元にある道具と呼べるものはカッターナイフやシャーペン、これでは皮を綺麗に剥ぐことは難しいだろう……。
試しにカッターナイフをキマイラの皮に使ってみる。丁度顔を切り落とした位置から刃が通りそうに思える。
昔何かで見た動画で皮を剥ぐのは頭や手足を落としてから胸から尻にかけて切断したはずだ。
丁度良いことに顔と手足が切れている。だからそれを利用した方が楽に皮を剥ぐことが出来るだろう。
僕はカッターナイフを少し伸ばしキマイラの顔の所から胸の方へと刃を滑らそうとした。
ギリギリギリギリギ……パキン!
皮を切ろうと刃を滑らせてもしてもギリギリと音がするだけで傷一つつかない。その上、少し力を入れただけで刃が折れてしまった。
何という硬い皮素材だろう。この皮があればとても優秀な皮鎧を作る事が出来るに違いない。
収納スキルを用いた防御手段は確かに優秀だ。銀の円盤は攻撃にも使えるし防御できる無敵の盾と言える。
反面、体の方の防御力はなく無敵の盾を掻い潜ってきた攻撃を受ければ大ダメージを受ける事は必至だ。
ダメージを緩和する為にもキマイラの皮で丈夫な鎧を作りたいのだ。その為にも皮を剥がなくてはならない。
だが、最初の段階”お尻(の穴)から首(切り落とした部分)まで皮を剥ぎやすいように切断する”が出来ない。
あまりにも皮が硬すぎるのだ。収納の円盤を使うことも考えるが、逆にこの円盤はあまりにも切れすぎる。
間違って余計な部分を切ってしまい折角の皮を台無しにしてしまいかねないのだ。
手持ちの道具を確認したけど固い皮を切れそうな物はない……まてよ?
刃が通らない様な硬い皮でもキマイラ自身の爪なら切断できるのかもしれない。結構鋭いし出来るかもしれない。
幸いキマイラの爪は銀の円盤で防御した時に折れた物や切り落とした腕から引き抜いたものがある。
この爪を皮の切断に使える様にカッターナイフに紐で括ってみよう。
僕はタオルの一部を切り取り紐にする。それをカッターナイフに作った紐で取り付け、キマイラの皮を切断してみた。
ブツッ、シュリリリリリリ。
いい感じに皮が切れる。多少グロい物が見えるがとりあえず今は見なかったことにして作業を進めよう。
ゆっくりと丁寧に。僕は時間をかけて”首から尻”、”両腕の切り口から胸”、”足の付け根から腹”の部分の皮を切断する。
後は間に刃を入れながら皮を剥げば良いはずだ。
ザクッ、グギギギギギギギー
硬い。
切り込みを入れれば少しずつでも皮を剥ぐことが出来ると思ったのに、皮が肉にべったりと張り付いて剥げそうにない。
切り落とした手や顔から爪や牙は楽に抜けた。もう少し小さい大きさに切断したら皮を楽に剥げるのかもしれない。
「キマイラの皮を収納」
そう念じて、キマイラの切断面に銀の円盤を当てどのくらいの位置で切ろうか検討する。
「とりあえず円盤一つ分を目安に……おっと!」
銀の円盤を少しキマイラに近づけすぎたのか円盤の一部がキマイラの死骸に当たってしまった。
にゅるりん
?
円盤が当たったところを見るとキマイラの皮だけがきれいに剥がれピンク色の肉が見えていた。
「え?今のは?何の力もかけなかったぞ!……よ、よし。別の部分で試そう。」
別の場所に銀の円盤を当てるとほとんど力を入れていないのに”にゅるりん”とキマイラの皮がはがれる。
「おお、すげえ。こんなに楽に皮が剥げるとは……スキルは使いようだな。」
一時間もしない内にキマイラの皮が綺麗に剥げた。
隣には皮の剥がれたピンク色のキマイラ(少しグロイ)モノが横たわっているが気にしたら負けだ。
キマイラの皮は表に体毛が付いているが、裏面に普通なら付いている肉や脂肪が無いし臭いもほとんどしない。
生臭かったら入れる事を躊躇しただろうが、臭いがほとんどしないなら問題は無いだろう。
この皮を鞄に入れようと綺麗に撒き始めた。
「む?!これはキマイラの血か……。」
表面の体毛にキマイラの血がゴッソリとこびり付いていた。キマイラの爪ナイフで削り取れるが、一緒に体毛も削り落とされる。
もし、キマイラの毛にも価値があれば実にもったいないのだ。
「どうせなら“キマイラの血”を収納!でキマイラの血だけ取れれば……取れたよ!」
どうやら僕の収納スキルを使えば除去したいものを指定することで除去できるみたいだ。
これなら楽に皮を綺麗に出来る。
「それなら!」
ここで僕は気付いた。もし、収納で血を収納した場合、表面に着いたキマイラの血を取り除くことが出来るのでは……?
「よし!物は試しだ。収の……!」
スキルを使う寸前の所で僕は収納スキルを使うのを止めた。
よく考えれば対象をちゃんと決めていない血液なら僕自身の血液も含まれるのではないか?
対象が自分も含んだ場合でスキルを自分に対して使うと、良くて昏倒、最悪即死と言ったところだ。
「危ない、危ない。もう少しで死ぬところだった。ちゃんと“キマイラの血を収納”と念じて……。」
あっという間に自分の体や服、鞄、からキマイラの血が取り除かれた。
次は体の老廃物を除去したいけど、体の中の老廃物が悪さするとも限らない。
「体表面の老廃物を変更……よし。これで良いな。」
十五分後、あっという間に汚れを落としスッキリした顔をしている僕がいた。
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