王都ホルン
夕日に照らされる王都ホルンはかなり広い。
見たところ大きさとしては東京二十三区ほどの大きさなのではないだろうか?
「これだけ大きいと冒険者ギルドまで行くのは大変だな。下手をすると日が暮れてしまう。」
僕が危惧する通り日はだいぶ傾きかけている。どこかに宿を探してとるのがいいのだろうがよい宿を知っているわけではない。王都についたら冒険者ギルドでおすすめの宿を尋ねるつもりだったのだ。
「適当に宿をとるべきか……いや、それはまずい。王都にどのような宿があるのかはわからない。やはりここはギルドで聞くのが一番だろう。問題はどこにギルドがあるかだ……。」
僕は手っ取り早く門の王都側に立っている衛兵に尋ねることにした。
「冒険者ギルドの位置?」
衛兵の男は僕を頭の先からつま先までじろじろと眺めた。
「うむ。田舎から出てきたばかりの様だな。東門前から冒険者ギルド前の“魔道車”が出ている。それなら四十分もあればギルドにつけるはずだ。」
「マドウシャ?」
「ああ、王都でも数年前にできたものだ。お、丁度いい。今あそこに停まっているのが魔道車だ。」
衛兵の男が指さす方向を見ると電車に似たような物が東門の向かいの道路に停まっていた。
側面に四角い窓がいくつか空いているのでバスかもしれない。
「あれがフリューゲルの誇る魔導交通を担う魔導車だ。」
衛兵はさらに詳しく話をしてくれた。
王都ホルンの特徴として、特別な場合を除いて馬車自体は王都の最外周部しか走ることを許されていない。これはユーフォニアムやチューバの街の構造を王都が参考にした。
外周部を馬車で移動するだけでは王都の中心へ早く行くことができない。それを可能にする手段が”魔導車”だ。
魔導車は名前の通り魔導、つまり魔力で動く。魔力を伝達するミスリル合金レールから伝わる魔力を使い移動する乗り物である。
町中を魔導車が動くことによって馬車の数が激減した。その影響で交通事故を大幅に減少させたのだそうだ。
(つまり電車と同じ様な物か……。)
どうやら冒険者ギルドへは魔導車を使うのが一番のようだ。僕は衛兵に礼を言うと魔導者の方へ近づいていった。
魔導車の外観は窓ガラスのついていない箱バンのような形で十人ぐらいが乗ることができる。
箱バンの他に大きな荷台がついた物もありそこに外周部に止めた馬車から荷物を積み込み中心部へ持って行くらしい。
正面と側面には行き先が書かれていて、僕はその中の一台、”ギルド前方面行き”と書かれた魔導車に乗り込んだ。
運賃は先払いで銀貨一枚。これは魔導車の前に立つ車掌に渡す。(面白いことに地球と同じ車掌という役職だった。役目も同じようだ)
魔導車へは後ろから乗り込み通路の左右に一つずつ座席に座る。
座席は全て埋まっていなかったが僕が座ってしばらくすると出発した。魔導車は定時で運行しているらしい。
速度も人が走るより早いぐらいの速度だ。椅子のクッションも柔らかく車自体もあまり揺れない。
魔導車から見えるホルンの道路は石材で舗装されゴミ一つ落ちてはいない。スザーホンでは土の道の所々に馬糞が落ちていて人はそれを避けて動いていたことを思い出した。
夕暮れで明かりが灯り出した為か王都の町並みは美しい。その建物の間から時々高い建物が遠くに見える。
どこか異国情緒を思わせる少し近代的な町並み……似ているとしたら神戸の町並みだろうか?
その少し近代的な町並みを見ながら三十分ほどすると先程遠くから見えた高い建物の前に到着した。
王都案内になってしまった。明日もしくは明後日にも投稿の予定。
とは言え今度はギルド案内……。なかなか話が進まない。