王都前の関所
フリューゲル王国の首都であるホルンは平原と標高が低い丘陵からなるヴァリス盆地の中央に築かれた都市である。
ヴァリス盆地にはブルトン川とアルピタン川と言う名の二つの大河が流れその二つの川に挟まれた場所に王都ホルンがある。この二つの大河を巨大な堀に見立てることで正に天然の要害といえる都市になっていた。
ブルトン川とアルビタン川は運河で接続されその運河には王都へ続く巨大な橋、ゴルダート橋がかかっている。
(ようやく王都に入れるか……。思ってたよりも時間がかかったな。)
僕は兵士に身分証明書でもある冒険者カードを提示しながらそんな事を考えていた。
王都へ向かうゴルダート橋の途中には関所が設けられ底にいる兵士は出入りする人々を簡単であるが調べる。冒険者である僕も多分にはもれず調べる対象だ。
関所の前に立つ兵士は僕の冒険者カードを興味なさそうに見ていた。
「ふむ…。冒険者か。賞罰はなしか、問題ない。行っていいぞ。」
過去の犯罪歴が刻印されている冒険者カードは関所を通る時に大変便利なものだ。これだけで王都に害を及ぼすかどうかある程度は判断できる。
僕は関所の兵士に軽くお辞儀をすると王都へ向かう。もうすぐ夕方であるためか橋の上を人々は足早に王都へ向かっていた。
橋の終わりには凱旋門のような巨大な門があり、その先に王都が広がっているのが見える。
僕は足早に王都へ入ろうとしたが門の途中で兵士に呼び止められた。
「そこの冒険者。少し聞きたいことがあるのでこちらまで来てくれないか?」
一体何事だろうか?
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王都ホルンに出入りするためには二つの関所を通らなくてはならない。
その一つはゴルダート橋の上、もう一つが王都と橋をつなぐ巨大な門、アストライア門にある。
特にアストライア門にある関所は最重要でここには常に魔力感知の魔法が働いている。魔力感知は通る人々が魔法の物品を持っているかどうかの判定だ。
魔法の物品を感知した場合、更に詳細な鑑定を行う。もし危険な魔法の物品なら入都を制限しなくてはならないからだ。当然、鑑定を行う魔法使いは王国でも優秀な者たちで構成されている。
その中の一人、人々を鑑定している魔法使いが驚きの声を上げた。
「な、なんだ?あの少年は!」
「どうした?何事か?」
声を上げた魔法使いは気を取り直して報告を始めた。
「魔力感知に反応があった対象を私が今鑑定した所、着けている装備すら判らないのです。鑑定の魔法を妨害する装備を着けている者が徒歩の少年なら話は変わります。」
魔法使いの報告を受け私は少し考え込んだ。
鑑定の魔法を妨害する装備を使うほどの者なら実力のある冒険者か貴族だ。しかし、徒歩の少年ではそのどちらにも当てはまらない。
実力のある冒険者なら少年ということは考えられない。貴族なら通常は馬車を使うので徒歩で移動することはありえない。
「人間魔弾の可能性があるな。」
ソウジの元の世界と同じくこの世界にも自爆テロは存在する。その際、火薬ではなく魔法の物品が使われる。その魔法の物品を隠蔽するために鑑定を妨害して判らないようにすることはよくある手口なのだ。
何も知らない人にそれをもたせ所定の位置に来た時に作動させる。大量の魔力を暴走させ周囲を吹き飛ばすそれは”人間魔弾”と呼ばれた。
「人間魔弾ですか……。それで近づいて大丈夫なのでしょうか?」
「もし作動するのなら既に作動しているだろう。我々が接触した時ということも考えられるが、ああ言った物を使う連中はどうやって大勢を巻き込むかを考えている。少人数を巻き込むことは考えられないね。」
「わ、判りました。では兵士を何人か確保に向かわせます。」




