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犠牲者の行方

 犠牲者と思っていた者たちが無事だと聞いてエルは思わず拳を握った。


「そうか!姿達は無事だったんだな!」


 しかし、エルの言葉を聞いたジャッキーは首を傾げた。


「スガタ?いや、私達が依頼を受けたのはソウジという少年だが……?」


「え?姿達ではない?」


「ああ、スガタという者ではない。ソウジだ。」


「ソウジ?」


 エルには聞き覚えの名前だった。姿や霧笛とは体育会系の部活なので朝練でよく出会うことから親交があった。

 しかし、エルの知っている生徒の中に“ソウジ”という名前はない。これはソウジと会った事が無いのだから仕方のないことだ。

 エルにとって“ソウジ”という名前は幕末時代劇によく出てくる沖田という剣士の下の名前だったか?と言ったぐらいの名前なのだ。


「では“時雨”や“風祭”さんは?女性だから判ると思うのですが?」


「シグゥレ?カザマツゥリ?いや、“ソウジ”は男で一人旅だったよ。」


「そうですか……私の知っている者の中に“ソウジ”名前はありません。ですが、私の仲間の中には知っているものがいるかも知れません。みんなに聞いてきましょうか?」


 エルは少し残念そうな声でジャッキーに尋ねた。


「あ、ああ。そうしてくれると助かる。……まいったなぁ……。」


 少し当てが外れたのかジャッキーも困ったように言う。


「あの“エルロード”様……。」


 エルとジャッキーの二人の話にオデットが口を挟んだ。


「“ソウジ”や“スガタ”という名前に心当たりはありませんが、“シグレ”と“カザマツリ”と言う名前の者なら聞いたことがあります。」


「!」


 驚いたエルはオデットの方へ顔を向けた。


「私が少し前までに通っていたエアリーにある魔導学園に途中入学した者がその様な名前で女性だったと聞き及んでいます。学園に途中入学するのは極めて珍しいので噂になっていましたわ。」


「噂?」


「何でも凄腕の用心棒を連れた異国のお嬢様とか……。何でも用心棒の方は一人で多人数を相手に圧倒したとか。」


「凄腕の用心棒!姿だ、間違いない。あの時に聞いたあいつのスキルならそれも可能だろう。」


 意外な方から消息が聞けてエルは嬉しそうである。


「……ソウジの事なのだが?」


「あっ!すみません。すぐに仲間に尋ねてみます。」


「そうか。どうせなら俺も一緒に行こう。」


 ジャッキーはそう言うと御者に合図し馬車を止めさせた。

 霧笛達の内の何人かはオデットの護衛の馬に二人乗りで移動し、それ以外は徒歩で馬車の後をついてきていた。彼らは馬車が止まったことで小休止しているようだ。

 その中の一人、霧笛はエルが馬車から降りたことを見るとエルに声をかけた。


「どうしたエル?何かあったのか?」


「ああ、いい話と聞きたいことが出来た。」


「ほう?」


「姿達は隣のエアリーの魔導学園にいるらしい。」


「それはいい話だな。それで聞きたいこととは?」


「誰かソウジという名前に心当たりはないか?」


 エルは霧笛だけでなく小休止していた者たちにも尋ねた。

 ほとんどの者が知らないという中、一人だけ心当たりがあるようなことを言い出した。


「そいつは“田辺 総司”じゃないのか?たしか行方不明とかになっていたはずだぞ。」


「本当か渡部?」


「ああ、あの時宰相が“一人だけクリスタルでおかしな操作をした為何処かへ行ってしまった”とか言っていただろう。」


 渡部にそう言われエルも思い出した。


「神殿の大きなクリスタルを変に操作したとか何とか言っていたな。彼の名前は“ソウジ”だったのか。」


「ああ。間違いないよ。田辺と俺は似たような名前だから覚えていた。」


 そう渡部総二郎はそう答えた。


「そうか……ということは田辺も無事だということだろうな。」


 思いがけない所で犠牲者や脱走者の消息が聞けて一同は嬉しそうであった。

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