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逃亡計画

 ヨブたちの密談から二日後。その日は朝から暗い雲に覆われ霧の様な雨が降っていた。

 天気が悪いからと言って霧笛達の訓練がなくなるわけでは無い。それに彼らが訓練を行なっているのは“奈落”と言われるダンジョンなのだ。ダンジョンの中は外とは全く違う世界が広がっている。

 今日も霧笛達は訓練のためにダンジョンへ向かうのだった。

 霧笛達はいつもの様にダンジョン入り口で立つ王国兵に軽くお辞儀をすると、隊列を組んでダンジョンの中へ進んでゆく。

 そんな霧笛達の後ろから彼らを見ている影があった。


(一人を除いて異世界人たちは何時も通りダンジョンでの訓練か……でも少しへんね。何だろう?なにか違和感があるわ……。)


 影は違和感が気になったのかダンジョンの入り口に立つ王国兵の横を通り内部に入る。王国兵のすぐ横を通ったはずなのだが王国兵は影に気づいた様子はない。


(判っていたとは言えこの短剣ダガー凄い効果ね……。)


 影は持っていた白金色の短剣ダガーを見た。どうやら王国兵に気づかれなかったのはこの短剣ダガーのおかげの様だ。


(異世界人たちは……変ね?誰も居ないわ。)


 影は地面を隈なく調べるが異世界人が通ったはずの跡を発見することは出来なかった。


(通った跡がない?新しいもので一昨日のものだわ……。この事は持ち帰って相談する必要があるわね。)


 ------------------------


 俺の名前は”出雲”、この世界で言う異世界人。幻影ファンタズマスキルの持ち主といえば良いか。

 俺のスキルをヨブ王国の連中は幻影ファンタズマスキルを”周囲の音を消して幻を見せる”だけのスキルと思っている。

 だが実際は違う。

 このスキルは音を消すだけでなく匂いや音も再現されるスキルだ。対象となった場所の音や匂いを消した上で効果を発揮する。幻影ファンタズマは異世界召喚らしいチートなスキルなのだ。

 例えばダンジョンに向かう一団の姿を見せたり、今回のように俺の後ろから付いてくる一団を風景のように見せたりすることが出来る。

 しかも匂いや音もしないので見つかることはまず無い。


「よし。全員配置につけ。イズモは手はず通り令嬢の馬車が通ったら幻影ファンタズマで魔物の集団を出し馬車を街道の枝道の方へ誘導させろ!」


 ここ五日ほど俺はならず者の様な騎士団と行動を共にしていた。

 彼らは令嬢を拉致するのに幻影ファンタズマのスキルで魔物の集団を見せ逃げるために街道から外れた所で拉致する。

 そのまま裏道を通り王都へ帰還する計画だと王都を立つ時に聞かされた。


 今回の拉致の対象となったレコン辺境伯の令嬢のオデット嬢は辺境伯が“目に入れても痛くない”と豪語するぐらいにかわいがっているらしく、ヨブには“手を出すことは私と事を構える覚悟があるのでしょうな?”と牽制しているそうだ。

 レコン領は“深き魔の森”とエアリー王国に接していて防御の要と言える場所だ。流石にその様な場所を守る辺境伯と事を構えるのは自分の首を絞める行為であると理解しているらしく拉致の証拠を残さない為の隠密行動であるらしい。


 彼らの作戦は四人の護衛を連れただけの馬車に対して騎士十人のでは数が若干少ないがその分を奇襲で補うという物だ。

 だがそれも護衛が”四人だけであったなら”の話だ。

 俺と一緒に来ている仲間は全部で三十人。その内、戦闘に役に立ちそうなスキルを持っているのが十三人。残りは補助に回るとしても十分に相手を圧倒できる数だ。

 それに僕らの戦闘スキルのレベルは10前後、相手とは倍以上の開きがある。これだけレベル差があれば戦闘に不慣れな事も相殺できるだろう。


 そうやってヨブ国王の手先を捕縛し令嬢をレコン辺境伯へ無事に送り届け俺たちを無事他国へ逃してもらう。そういう筋書きだ。

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