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閑話:調査報告書

 ソウジかダンジョンへ行った日の夜、ブライたちはギルドから直接請け負った調査依頼の報告をしていた。

 その部屋には受付嬢であるカトレアの他、厳つい壮年の男がいた。少し白髪が目立ち始めているが現役であることを示すかのような鍛えられた体をしていた。

 この男はこの町、スザーホンの冒険者ギルドを統括する立場にある者、ギルドマスターであり名前をウェールズと言った。

 ウェールズは部屋の奥にある大きな机の椅子に座り机の前にはブライと書類を持つカトレアが立っていた。


「それでブライ。お前から見た対象はどうなんだ?」


「はい。彼は……そうですね、非常に危なっかしい冒険者です。最初は線の細い冒険者の様に見えました。駆け出し冒険者ではダンジョンへ潜ることに少しは躊躇するのですがそれがありません。度胸はあるかの様に見えますが技能が伴っていない。それにしては彼の持つ……。」


 ウェールズは少し首を傾げると軽く手を上げブライの言葉を止める。


「度胸があるかの様・・・・・に見える?」


「そうですね、彼は度胸があると言うよりも、”恐怖を感じていない”と言った方が正しいのかもしれません。」


「恐怖を感じていない?それは問題だな……続けてくれ。」


「はい。彼は技能が伴っていないにもかかわらず彼の持つ武具などダンジョン最下層の物が多く存在します。一つや二つなら家に代々伝わる物であることも考えられますが、いかんせん数が多すぎます。私の見たところ、映像の魔道具、兜、鎧、小手、脚絆の他に収納袋・・・もあるようです。先ほどの映像の魔道具はこの収納袋に入れているようです。」


「収納袋?カトレア、彼はスキルで持っていたはずだよな?」


 カトレアは手に持った書類をウェールズに渡す。どうやらソウジについて細かく記載された書類の様だ。


「はい。この様に冒険者カードにはスキルとして”収納”が記載されていました。」


「スキルとして収納を持っているのに何故収納袋を使う?イニシャライズで譲渡を防げるとは言え完全ではない……。それに持っていると考えられる魔道具と他人に譲った魔道具の数も異常だ。」


 ウェールズは手に持った書類を机に放りだした。

 その書類にはソウジが着ていた鎧の他、銀のトレー、銀のコップは元より、世界樹の枝、精神感応金属オリハルコンのダガーが九本、ハンマーが一本も記載されていた。どれも秘宝レリック言って良いものである。

 それを横目で見ながらブライは大きなため息をつく。


「まだしばらくは監視の必要がありそうだな……。」


「すまないな、ブライ。全く頭の痛い事だよ。今年の俺は厄年か?ただでさえ“聖天心流”の連中の対処に頭を痛めているのに更に異……おっと、こいつは極秘事項だったな。」


「“聖天心流”と言えば逃げたあの男も“聖天心流”だったな。」


「インテムドか……奴はギルドに虚偽の報告をした他、駆け出し冒険者への詐欺行為も発覚したため冒険者資格停止一年となった。」


「詐欺行為?」


 ブライにとってわざわざ貧乏な駆け出し冒険者を騙す理由が今一つ判らなかった。


「ああ、一度組んだらパーティを抜けることが出来ないと仲間への暴力行為だな。今までの事もあるので厳しい措置になる。」


「それで一年か……。」


 ブライの言葉にウェールズは軽く頷き話を続ける。


「一年も冒険者としての活動が出来なければインテムドではまず復帰できないだろう。それに、復帰したとしてもCランクに上ることは無い。あとは“聖天心流”の連中が大人しくしてくれるかどうか……。」


 ウェールズは何か嫌な予感がしていた。


-------------------


 スザーホンにある“聖天心流”の道場に併設された事務所ではインテムドが背の低い小太りの男に杖で打ち据えられていた。その近くにはメナスが腕を組み字げるような視線でインテムドを見下ろしていた。


「全くお前はこの大事な時に!」


 インテムドを叱咤するこの男は彼らの父親であるハーム。“聖天心流”の事務を一手に引き受ける男である。


「でも父上、我は悔しい……。」


「黙れ!このゴミ屑が!お前のおかげで計画が破綻したらどうするのだ!スザーホンの連中が別件で忙しい今しかないのだぞ!」


「くぅぅぅぅ」


 ハームは何度も杖で打ち据えて疲れたのか肩で息をしていた。


「父上、もうその位でいいでしょう。インテムドも反省していることですし、今後の計画にも差し障るかと……。」


「そうだな……今日の処はこの位にしてやる!これに懲りたら事が成るまでここで大人しくしていろ!」


 嫌な予感と言うものはよく当たる。

 ウェールズの危惧した通り、“聖天心流”は彼らの野望の次の段階に進もうとしていた。

 そして、それとは別に恨みを募らせる男がいた。


「糞ぅ!我がなぜこんな目に!これもあのギルド……いや、ギルドに余計な物を見せたあの黒髪が悪い!あの黒髪のやつ!」

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