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現在のスキル

 次の日の早朝、眠たい眼をしょぼしょぼさせながら僕は冒険者ギルドに向かった。眠たいのは昨日無駄にあの長い自慢話である”聖天心流”の冊子を読んだからだ。

 ”向かうところ敵なし”とか”技を見ただけで相手が平伏する!”とかよく判らない事しか書いていない。肝心のルーツも怪しいものだし、これってホルン国王は関係ないのでは?逆に言うとこんな内容の冊子を野放しにしている王国はすごいのかダメなのか判断に苦しむところだ。


 今日の冒険者ギルドでの目的は薬草の買取金の受け取りと冒険者カードの更新である。

 昨日はカードの更新もついでにやっておこうと思っていたが、薬草の買取に時間が掛かるので今日になったのだ。

 朝早く冒険者ギルドに行くのは理由がある。朝早くなら他の冒険者たちが依頼を受けているのでカードの更新や鑑定機は使えるだろうと踏んでいた。僕のスキルの内容が他の人に判らないように詳しく鑑定機を使いたかったのだ。

 僕が考えるに、カトレアさん達受付の人達は依頼を受ける冒険者の処理に忙しく鑑定機を使う暇はないだろう。鑑定機の使い方は何とかなると思うし、こっそり使えれば僕のスキルを見られる可能性は低い。他の冒険者に見られる可能性があるが離れていれば問題はないし。今の時間なら買取カウンターなら空いているはずだ。


 案の定と言うか予想通り、ギルドは冒険者で混雑していた。


 特に掲示板の前での依頼争奪戦は一見の価値がある。(バーゲンセールに集まる主婦の集団と考えてもらえばいいだろう。)他の冒険者よりも早く効率の良い依頼を得るために血走った目で掲示板をじっくりと見ている。中には依頼の取り合いで取っ組み合いをしている冒険者たちがいた。

 そんな中、カトレアさんが受付カウンターから声をかけてきた。


「あ、ソウジさん買取金の受け渡しと冒険者カードの更新ですね。買取カウンターの方へいらしてください。」


 予定(僕の)に反してカトレアさんが対応してくれるようだ。


「大丈夫ですか?かなり忙しそうですけど?」


「大丈夫ですよ。依頼の取り合いで受付はしばらくは手が空いています。今のうちにソウジさんの件を処理してしまいましょう。」


 カトレアさんの手際が良い。どうやら手配が良くないと冒険者ギルドの受付に成ることが出来ないものかもしれない。

 買取カウンターに移動するとカウンターの上にはタブレットの様な長方形の板と薬草の買取査定表がすでに用意されていた。


「これが薬草の買取査定となります。お持ちいただいた薬草は全て新鮮な物で買取金額を一割増やしています。通常の回復薬以外にも精神力回復薬や魔力増強薬の原料となる薬草も含まれているため合計金額は金貨一枚、銀貨四十二枚、銅貨四十七枚となります。」


 今泊まっている宿の費用が一泊銀貨七枚なので、どのくらいの金額を手にしたのかよくわかる。

 宿が一泊七千円のビジネスホテルとすると薬草の売り上げが十四万二千四百七十円になる。買取が通常の倍(チューバを基準として)になっていることを考えてもかなり儲かったと言えるのではないだろうか?


「では次は冒険者カードの更新ですね。冒険者カードの提示をお願いします。」


 僕はカトレアさんに冒険者カードを手渡すと鑑定機について尋ねてみた。


「カトレアさん鑑定機でスキルを詳しく調べることはできますか?あと、いくつかの項目は冒険者カードに表示させないことは?」


「スキルの詳しい鑑定なら可能です。項目についてはいくつかの項目は必ず記載するようにフリューゲルの王国法で義務づけられています。」


「表示の義務付けですか?それは一体……?」


「王国法で表示が義務付けられているのは、”ユニークスキル”と”恐喝”、”窃盗”などの犯罪に使われることが多いスキルです。」


 窃盗などのスキルは魔物から物を盗むときに役に立つ。しかし犯罪に使われることも多いスキルだ。表示は犯罪者と誤解されない為の表示の義務付けだそうだ。

 ユニークスキルはそれ自体がどのようなスキルか不明の場合が多い。これも安全のため表示が義務付けられている様だ。


「ではこの詳細鑑定機に手を置いてください。ここに表示される文字は確認のため、私とソウジさんの両方とも知ることが出来ます。スキルに対する細かい操作はソウジさんの方からしかできません。私の方からその内容を知ることはできません。」


 タブレットの様な長方形の板は鑑定機だった。詳細とついていることはより詳しく鑑定できるのだろう。


「なるほど。……でも後ろから見られると他人に結果が判ってしまうのでは?」


「いいえ、後ろに立つぐらいではこの鑑定機の結果を知る・・ことは出来ません。この鑑定機での結果は心の中に浮かぶ物なのです。」


 カトレアさんは心と言っていたがこれは脳に直接データを送る機械という事か?だとすれば途方もない科学技術になる。


「王国の魔道協会から販売されているのですが、何分価格が高いので全てのギルド支部には配備されていません。このギルドにあるのは”聖天心流”が購入資金を出してくれたおかげなのです。」


 ギルドにも”聖天心流”の影響があるのだろうか?


「ここだけの話、お金自体に貴賤はありませんから。それにこの詳細鑑定機を購入し所持できるのは王国騎士団や魔道協会以外は冒険者ギルドだけですので問題はないのですよ。」


 そういってカトレアさんは意味深な笑みを浮かべる。


-------------------


 僕がプレートの様な鑑定機に手を置くと頭の中に文字が浮かび上がる。


 -名前- 田辺 総司

 -種族- 人間

 -出身世界- 第81世界

 -レベル- 14

 -ステータス-

 HP:48 MP:35 STR:10 AGR:12 DEX:14 CON:12 INT:16 MID:15


 -スキル-

 算術レベル6 化学レベル5 物理レベル4 語学レベル4(自動翻訳) 製作レベル4 料理レベル2 掃除レベル1 手業レベル4 盾術レベル2


 -ユニークスキル-

 収納


 -耐性-

 精神耐性レベル4 魔法耐性レベル1 疲労耐性レベル2


 幾つか判らないものが増えていた。

 相変わらず武術関係、いわゆる武芸のスキルはない。盾術は武術関係と言えなくはないのだがこれを得たのは銀の盾をよく使ったためだろう。

 他には”-出身世界-第81世界”と言うものもある。

 はて?と疑問に思うと答えが頭の中に浮かぶ。この世界で確認された異世界の中で八十一番目に存在を確認された世界らしい。

 増えているのは精神耐性。これは魅了や恐怖と言った効果に対する耐性だ。他には魔法や疲労に対する耐性も増えていた。


 最後にユニークスキルである収納を調べる。


-収納-

抵抗:不可

効果対象:全て

発動距離:レベル4(発動距離1.5m)

効果範囲:レベル4(効果範囲半径1.5m、形状変化(追加:立体化)、色変化(追加:透明化)


 発動距離や効果範囲のレベルが上がっている。形状変化に立体化、色変化に透明化が加わっている。

 これはスキルの検証を早いうちにするべきだろう。ギルドの練習場を借りることはできるだろうか?

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