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厚手のローブとギルドの冊子

 聖天心流について防具屋のオヤジと話していると段々防具屋のオヤジの目付きが怪しくなってきた。気のせいか目が血走って鼻の穴も大きく広がっている様な気がする。


「なあ、あんた。その鎧はガンテツ製作の鎧だろう?ちょっとだけで良いから見せてくれないか?」


 防具屋のオヤジはハァハァ言いながら近づいて来た。


「なぁなぁ、ちょっとだけ、ちょっとだけ、先っぽだけで良いから、ハァハァ。」


 何だこの人?!


「あんた!何やってるの!お客に迷惑だろう!ちゃんと仕事しなっ!」


 怒鳴り声と共にお玉が飛んできて親父の頭に命中する。お玉が飛んできた方を見ると恰幅の良い女性が手を拭きながら頭を下げた。


「家の宿六がすまないね。防具のことになると目がなくてね。」


 この店のオヤジはこの人に頭が上がらない様だ。この人がこの店の主人かもしれない。僕に謝りつつも恰幅の良い女性は棚から少し厚手のローブを手に取った。


「そんな薄いローブじゃ寒い時には堪えるだろう。このローブはどうだい?安くしとくよ。それにこのローブなら、家の宿六のような変な奴に目をつけられることはないよ。」


 確かに全身をすっぽり覆う形のローブで内側に何を着ているのか判らない。それに防寒用としては申し分ない厚手のローブだ。そんな機会も逃さず物を売ろうとする。この女主人なかなかやり手だ。


「……でも、お高いんでしょ?」


「何と!今なら銀貨三枚のところをわずか二枚で提供なんです。」


「まぁ、やす……もう少しまからない?」


 危ない危ない。もう少しで”安い”と言ってしまうところだった。ついノリで言うところだった。こういう店では値引き交渉が当たり前とジャネットが言っていたな。

 たしか僕のローブが銀貨一枚だったから妥当な金額は銀貨一枚と銅貨五十枚ぐらいか?


「むう、ノリが悪いね……まぁいいわ。銀貨一枚と銅貨八十枚にしてあげましょう。」


「銀貨一枚と銅貨三十枚なら即決なのだけどね。」


 すると女主人は首を振りながら手を広げる。


「そんな値段で売ったらこの店は破産だよ。精々銀貨一枚と銅貨七十枚だね。」


「またまたそんな、このぐらい大きな店なら問題ないでしょう。銀貨一枚と銅貨四十枚。」


「それはどうも、でもそんなにまけられないよ。銀貨一枚と銅貨六十枚がやっとだね。」


「仕方がない。間を取って銀貨一枚と銅貨五十枚ならどう?」


 女主人は両方の手のひらを上に向けて肩をすくめる。


「間か……それなら仕方がないね。銀貨一枚と銅貨五十枚。これ以上は本当にまけられないよ。」


「よし、じゃあ銀貨一枚と銅貨五十枚だね。」


 僕は収納袋から銀貨と銅貨を取り出すと女主人の前に並べた。


「へぇー。あんた収納スキル持ちかい。」


「まあ、あまり入らないんですけどね。」


 当たり障りのないことを返しておく。この辺りはグレースさんやロジェスちゃんに注意されたことだ。


「ところで、冒険者ギルドはどこにありますか?」


「ギルドね。それなら店の前の道をまっすぐ進むといいよ。しばらくすると見えてくるはずさ。」


「ありがとう。助かったよ。」


 僕は女主人に例をするとギルドに向かった。しばらくと言っていたからすぐに見えてくるだろう。


-------------------


 ……この世界の人の”もうすぐ”を舐めていた。


 結局、三十分ぐらい歩いてようやく冒険者ギルドにたどり着いた。何と冒険者ギルドは僕が入ってきた門とは正反対の位置にあった。


 冒険者ギルドに来たのは薬草の買取の為だ。ついでに冒険者カードの更新を行ってもいいだろう。

 更新と言っても見習いが解除されるわけではない。更新することによってスキルを詳しく調べることが出来るからだ。とは言っても調べた内容についてはギルドにも秘密にするべきなのだが可能だろうか?


 冒険者ギルドはやはりどの町のギルドも同じような構造なのか酒場が併設されている。違いは扉の形、(個々のギルドはチューバと同じスイングタイプの扉だ。)と酒場の位置だ。

 ギルドの受付には明るい茶色の髪を肩まで伸ばした女性がにこやかなほほえみを浮かべていた。


「いらっしゃいませ。今日はどのような用件で?」


 ギルドの受付は丁寧に対応してくれるように思えた。


「薬草の買取と冒険者カードの更新、それとスキルの鑑定機は使えますか?」


「はい。薬草の買取と冒険者カードの更新、スキルの鑑定ですね。少々お待ちください……薬草もありますので買取カウンターで処理しましょう。クレハ、ここお願い。」


 クレハと呼ばれた黒髪の女性が入れ違いに受付カウンターに入る。


「それではこちらへ。私はカトレアといいます。」


 受付のお姉さんはカトレアと言うらしい。

 買取カウンターは受付カウンターとは少し離れた場所にあり少し広めになっている。カトレアさんはそこの椅子に座りこちらを向いた。


「……では、薬草と冒険者カードの提示をお願いします。」


 カウンターの前に貼っている薬草の買取価格を見るとチューバのギルドよりも倍近くの値段だ。


「冒険者の方々がよく薬を使われるので薬草の在庫がかなり少なくなっているのですよ。」


「なるほど。」


 この値段ならかなりの冒険者が薬草取りを行いそうだが在庫が少ないと言うことはあまり薬草が取れないか、取る人がいないか、それ以上に薬草を使うのか、いったいどれだろう?

 僕はチューバからの旅の間に集めた薬草を全て買取カウンターに出す。


「まぁ、こんなに!この街では回復薬ヒールポーションを使う人が多すぎて薬草の在庫が足りなくなるほどなのですよ。取りに出かけても数がとれるわけではありませんし、何よりある程度残しておかないと次から薬草はとれなくなりますからね。」


 どうやら、薬草と言うより回復薬ヒールポーションの消費量が多すぎるための様だ。でも何故、そんなに回復薬ヒールポーションを使うのだろうか?


「ここだけの話、あまり大きな声で言えませんが”聖天心流”の人をパーティに入れた為、回復薬ヒールポーションの消費量が多くなった様な気がします。ギルドも冊子の発行に協力してもらっている手前、大きな声で言えませんが……。」


「冊子?」


「ギルドが発行している地図の付いた冊子です。この近くではチューバにもあったと思います。」


 どうやら僕が地図のために手に入れた冊子らしい。”聖天心流”が発行にかかわっているのか……。


「”聖天心流”はどんな流派なのです?」


「それならこの冊子が……”聖天心流”が発行している冊子ですけど……。」


 どうやらこの”聖天心流”の冊子もギルドに置くようにしている様だ。


 さて、”聖天心流”とはいったい?

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