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答え合わせ

「お兄さんのスキルっていったい?」


「弾けることは内緒だよ。」


 僕は人差し指を口の前に立てて”シーッ”と言うジェスチャーをした。


「そうね。他人のスキルを詮索するのは冒険者としてはマナー違反と言ったところかしら。」


「そうでした……ごめんなさい。」


 グレースさんにロジェスちゃんは指摘されがっくりとうなだれてしまった。


「いや、秘密にしてもらえばいいよ。助けてもらったのは事実だしね。」


 僕としては秘密にしてもらえれば問題の無いことだ。とは言っても、このスキルの能力が広まってもさほど問題はないと思うのだが?


「……判りました秘密にして誰にも話しません。それはそうと、お兄さんは先に町に着いていたんですね。それにギルドの対応も早かったし……何故でしょう?」


「それはね……」


 -------------------


 ダニエルたちが町に戻る一時間以上前、僕はチューバの町にたどり着いていた。

 先に戻れたのは多頭竜を倒した場所から真っ直ぐ戻って来れた事と、帰り道の魔物に一切出会わなかったことが大きい。

 反対にダニエルたちは町とは反対の方向へ逃げた事と、町への帰り道に魔物と接触が何度もあり逃げ回っていたので時間がかかったようだ。

 ギルドに戻った時に“ダニエルたちに危険地帯で置き去りにされた”と言うと別室で事情聴取されることになった。

 事情聴取にはギルドマスターなどの上の人ではなくグレースさんが行っている。

 ひょっとしてグレースさんはギルドでも偉い人なのだろうか?


「ヒドラの生贄にソウジさんを連れていったと……ふぅー。経緯は判りましたけど問題はダニエルたちですね。彼らが虚偽否定してしまえば証拠がないので対処は難しいでしょう。」


 僕は黙ってグレースさんの前にスマフォを置いた。


「これは?何かの道具か?」


「これは色々なことが出来る……魔道具のような物です。例えばこのように……。」


 僕が再生の操作をするとダニエルたちの声が再生された。もしもの場合の為にスマフォでダニエルたちとの行動を録音していたのだ。


「これはダニエルたちの声ですね!……なるほど、これなら証拠として十分です。これならダニエルたちを追放することができます。」


「追放?ギルドから?」


「はい。以前から問題がある冒険者たちとして本部から書状が回っていたのです。なかなか尻尾を掴ませない為、苦労しましたが、ソウジさんのおかげで何とか対処できます。魔法使いの女の子を仲間にしていた時は少し焦りましたが……知っていれば必ず阻止したのですが。」


「……?そう言えば僕の時は強く止めませんでしたよね?」


 グレースさんは少し呆れるような顔をした。


「ソウジさん。ソウジさんが来ている鎧……その鎧、革鎧に見えますが鑑定すると革鎧なのですが材質が判らないのですよ。」


「グレースさん、本人の許可なく鑑定するのは……。それに何時鑑定したのです?」


 グレースさんはいたずらっぽく笑う。


「タブーとされるのは本人の鑑定よ。装備の鑑定はされても判らないし問題にされないわ。それと、私はこれでも鑑定のスキルを持っているのよ。」


「!」


 僕はグレースさんが鑑定機を使って薬草を鑑定していたので鑑定スキルを持っているとは思わなかった。どうやらグレースさん自身が鑑定のスキルを持っている事を知られない様にする為だったようだ。


「でね、“素材の判らない様な革鎧を着ている冒険者が普通の冒険者であるはずが無い“と考えたのよ。だから強く止めなかったし、実際その考えは間違いでは無かったわ。」


 材料が判らない事からそこまで判断するとは……油断ならない人だ。


「でもまぁ、ダニエルたちを追い詰める証拠は手に入れた事だし、もう少し詳しい打ち合わせをしましょうか。当然、ソウジくんも手伝ってくれるよね?」


「はい。でもその時のヒドラしゃべるしそれぞれの口から違うブレスを吐くし変わった魔物だったけど何とか倒して戻ってきた次第です。」


「ええっと、ソウジさんもう一度お願いします。しゃべるヒドラ?ブレス?」


「はい。そのヒドラは”匂いがする”とか何とか言っていたし、頭の色も七色に分かれていてそれぞれ違う属性のブレスを吐くし、かなり面倒くさい相手でした。」


「ソウジさん、それはヒドラではなくて別の魔物ですよ。何かそれとわかる物をお持ちではなりませんか?」


「それならスキルで収納して持ってきています。どこへ出しますか、かなりの大きさですよ?」


「ではギルドの魔物解体場へ。案内します。」


 グレースさんに案内されてギルドの魔物解体場へ移動する。

 解体場は天井が高く二階建ての屋根ぐらいの高さがある。広さも日本の昔ながらの旧家ぐらいの大きさがあった。たまに大きな魔物が持ち込まれることがあるため、この大きさになっているのだそうだ。解体場では数人が忙しそうに魔物を解体している。あの大きく山の様な魔物はオーガだろうか?

 僕体場の一角にヒドラ?を出すことにする。ここぐらいの大きさなら出しても問題はないだろう。

 僕はまず初めに頭、その後胴体を出した。


「……」


 こうして出してみるとその大きさがよく判る。今解体しているオーガよりも明らかに大きいのだ。流石に家一軒分もないが明らかに大きい。広い部屋一つ分はある大きさだ。

 グレースさんはそのヒドラ?を前にポカーンと口を開けて立っていた。僕は恐るおそる声をかけてみる。


「……あの?グレースさん?」


「ハッ!驚きのあまり意識が飛んでいたようです。」


 グレースさんは僕に向かうとキリリとした表情になった。


「ソウジさん。鑑定してみないとわかりませんが、これは恐らく竜種、それも多頭竜ティアマトの幼体かと思われます。」


 そしてオーガを解体している人たちへ声をかけた。


「ヘンリー親方、解体場を閉鎖して誰も入ってこないようにして。あと上級鑑定機と何人かこちらに寄こして!」


 そして僕の方へ振り向くとにっこりとほほ笑んだ。


「ソウジさん、あなたにはもっと詳しく聞く必要がありますね。ダニエルたちへの対処を打ち合わせする必要があるので構いませんよね?それと、討伐されたこれについては他言無用でお願いします。」


 グレースさんの顔はまるで女神さまの様にニッコリ笑っているがその眼には有無を言わさない様な迫力があった。


 -------------------


「……と言う経緯で僕はグレースさんに協力する事になったんだよ。」


「そうでしたか。だからギルドの対応も早かったのですね。でもひとつ疑問があります。」


ロジェスちゃんもひとつ疑問があると言う。実は僕も疑問がある。


「奇遇だね。僕もひとつ疑問があるよ。」


僕とロジェスちゃんは顔を見合わせて同時に同じ疑問を言った。


「「グレースさんは何者なのか?」」


それを聞いたグレースさんは大きな胸を張ってこう言った。


「私?私は受付兼ギルドマスターよ。」


グレースさんが受付なのは人を直接を見ることが出来るのと純粋に受付の人が足りない為らしい。

でもギルドでも上の方(高くて副ギルドマスター)の人だと思ったのだが、まさがギルドマスターとは……。

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