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七対一の戦い

 さて、現状を把握しようか。

 今僕がいるのは深い沼の岸辺、そして目の前には七つの首の竜がいる。竜の体は深い沼の底にあるらしく首だけが沼から出ている形だ。その竜の色は虹の七色と同じで左から順番に赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の頭が沼から突き出ている。黄の竜が雷の球を吐いたのだが他の色の頭が何を吐くのか問題だ。赤や橙は火系の何かで緑は酸、青や藍は水系、紫は毒もしくは酸だろうか?


(全方位を囲まれて集中砲火と言うことになったら目も当てられない事になる。幸いロジェスさん(ちゃん)が逃げて行った方角なら下がれそうだ……。)


 僕はゆっくりと多頭竜から距離を開けるために下がろうとする。しかし、竜がそのような行為を見逃すことはなかった。赤い頭の口が開き僕の後ろに向かって大きな火炎の球を吐き出した。火炎の球は僕の横を通り後ろに木に着弾する。火炎お球は爆発したように燃え広がり辺りは火の海になった。


(退路を断たれたか!さすがは知能の高いと言われる竜だけのことはある。)


 しかし竜の攻撃はそれで終わったわけではない。赤い頭の隣の頭、橙の頭が大きく弓なりになって仰け反った次の瞬間、僕の真上から橙の頭を叩きつける。さらに橙の頭の隣にある黄の頭が口を大きく開き雷の弾を吐き出そうとしているのが見えた。

 後ろに下がれば火の海に飲まれて焼死、そのまま橙の頭の攻撃を受ければ力の乗った攻撃で圧死、橙の頭を避けても黄の頭の雷の弾で感電死だろう。これは多頭竜の必殺の攻撃と言ったところか。


 確かに攻撃を受けるだけ・・・・・なら圧死か感電死は免れないだろう。しかし銀の盾は相手の攻撃を反射することが出来る。(結果反射するだけなのだが……)


 僕は銀の盾で橙の頭の攻撃を受け止める。


 グガギャッ!バギャッ!


 何かが砕けるような音がして橙の頭が首の部分からへし折られて吹き飛んだ。橙の頭の攻撃を銀の盾で反射したのだ。橙の頭は攻撃が反射され別方向に動くが首の部分の動きは変わらない。その結果、橙の頭の首に自身が出した力の倍の力が加わり骨が砕け吹き飛んだのだ。

 少し斜め方向から橙の頭の力が銀の盾に加わったことも幸いした。吹き飛んだ頭は大きく口の開けた黄の頭と衝突する。丁度、黄の頭が雷の弾を吐き出そうとした時に橙の頭とぶつかったのだ。


 カッ!バリバリバリバリバリ!


 黄の頭の位置で雷の弾が放電し周囲に麻痺の効果のある電撃をまき散らす。黄の頭は元々吐き出そうとしていた物なのでこの電撃によって麻痺に成ったりダメージを受けたりすることは無かった。しかし、その近くの赤の頭や緑の頭は電撃の影響で麻痺状態に陥った。


(今の電撃で黄の頭以外に麻痺の効果を受けて動けなくなっている。これは多頭竜を倒すチャンスじゃないのか?なら次に狙う首は……。)


 動きが止まっている今がチャンスとばかりに素早く紫の首の元へ向かい銀の盾を振るう。

 ”アビス・キマイラ”冴え両断することのできた銀の盾は未だ動きを止めている紫の頭の首に吸い込まれた。


 スッ!


 僕は首に銀の盾を通すのと同時にその場を急いで飛びのいた。


 ドサッ!


 音もなく吸い込まれた銀の盾が紫の頭の首を地面に落とす。その次の瞬間、赤く見える切断面から真っ赤な大量の竜の血と紫色の液体が周囲にまき散らされた。

 紫色の液体は地面に落ちるとジュウジュと音を立てながら下草を溶解する。やはり、酸だったようだ。見たところかなり強力な酸なので体についた場合、ただでは済まないだろう。


「「グギャァァァァァァァ!」」


 残った二つの頭が悲鳴を上げる。

 幸運が重なったことで何とか五つまで頭をつぶした。残る頭は二つ、赤、緑だ。この内、赤の頭は火炎を吐くのは判っているが緑の頭は何をするのか判らない。多頭竜の真ん中にあるので司令塔と考えたがそれだけではないだろう。知能が高いと言われる竜が何かをしないとは考えられない。僕は注意深く相手の行動を探る。


「オノレェ!忌まわしキものよ!このまマでは済まサんぞ!」


 僕の考えとは異なり多頭竜はすっかり逆上している。頭の大半を倒されたことが逆鱗に触れる行為だったのだろうか?多頭竜は残った二つの頭の内、赤い頭で僕を薙ぎ払おうと横殴りに頭を振るってきた。

 それを見た僕は赤の頭の首が切断できるように銀の盾を構える。

 銀の盾の縁に赤の頭の首が吸い込まれたかと思うと赤の頭が首から切り離され僕の後ろの方へ飛んで行った。


「ウガーッ!」


 僕は残り一個の緑の首を斬るべく接近し銀の盾を振りかぶる。


「サせン!忌まわしキものにヤらせハせんぞ!!」


 緑の頭の周囲に魔法陣が描かれ魔法が発動する。


絶対防御アブソルブディフェンス


 なるほど、緑の頭の能力は補助魔法か。絶対防御アブソルブディフェンスと言う名前から攻撃に対して無敵の防御手段なのだろう。しかし、銀の盾は厳密にいえば攻撃ではない。収納スキルであり入らないものを弾いているにすぎないのだ。


 スッ!


 銀の盾は緑の頭の絶対防御アブソルブディフェンスを物ともせずその首を斬り落とした。


「バカな、我ラの絶対防御アブソルブディフェンスは完璧のはズ……。」


 それが多頭竜の発した最後の言葉だった。

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