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採集は危険がいっぱい?

 ダニエルは“採集場所は僕が知っているから問題はない”と言っていた。だからその言葉に従って今日は休むとして……いいわけがない。

 と言うより、採集場所の説明をしないのは問題がありすぎだろう。そもそも何を採集するのかも言っていない。実に行動がおかしすぎる。

 ともかく、今は何を採集するのかギルドの掲示板からあたりをつけるか……。グレースさんも何か知っているかもしれない。

 しかし、いい加減な奴がパーティリーダーだと面倒な事にしかならない。思わずため息が出そうになる。


 ギルドの掲示板、いわゆるクエストボードにはいろいろな依頼が貼り出されている。その中でも採集の依頼は恒常の依頼が多く常に貼られている。

 特別な採集依頼(ジャッキーさん達が行った飛竜の卵など)の時はパーティを指名する場合が多いし、指名しない場合でも難易度が高い為、残っている場合が多い。


(薬草採集、魔力草採集……この辺りは定番の採集依頼だな。お、ドクダミ草が結構高値だ。やはり辺境だと状態異常が一番厄介なものになるのだろうか?)


 おそらくダニエルたちが採集するのは”ドクダミ草”。これだけが他の恒常の採集依頼の中でもかなり高くなっていた。

 その事を確認するうえでグレースさんにダニエルたちがよく採集するものを尋ねた。ついでに、報酬の高い採集依頼が無かったのかも一応聞いておく。


「そうね。彼らがよく採集するのは、定番の薬草、魔力草、ドクダミ草ね。報酬の高い採集依頼はたしか”黒蓮ブラックロータス”がありますが、高額ですが結構危険な湖沼地域です。確かまだ掲示板に貼っていたと思いますが?」


 ?


 おかしい。掲示板にその様な依頼はなかった。グレースさんは危険地帯と言っていたけどどの辺りなのだろう。他の採集場所の情報と合わせてグレースさんに聞いておこう。

 危険な地域といっても深淵アビスよりも危険な地域ではないだろう。それに僕には大抵の魔物が避ける”アビス・キマイラの牙”がある。この辺りの魔物なら逃げてゆくはずだ。


 あ、そういえばチューバの町の宿を一つも知らない。これもグレースさんに聞けばいいか……。


 グレースさんから紹介された宿は一般的な冒険者がよく使う宿でアットホームな雰囲気が売りのいい宿だった。この手の宿につきもののノミやシラミも少なく(でも少しはいた)数回弾いたけど、これまでの様に塊になるほどはいなかった。


-------------------


 翌日、朝八時ごろ僕は北門の前にいた。集合予定の時間は九時であるので当然誰もいない。

 待ち合わせ場所である北門には冒険者の待ち合わせ用の施設がある。施設と言っても屋根といくつかの椅子があるだけの簡単なものだ。

 僕はその場所の椅子に座りパーティメンバーが来るのを待っていた。僕は見習い冒険者なのだから十五分以上前には到着しておかないと何か因縁をつけられるかもしれないと考え早めに移動したのだ。


 そして待つこと四十分、最初に魔法使いのロジェスさん(ちゃん)がやって来た。(ちなみに()内は心の中の言葉だ。)


「おはよう、ソウジ。」


「おはようございます。ロジェスさん(ちゃん)。」


 僕はロジェスさん(ちゃん)に軽く挨拶をする。ロジェスさん(ちゃん)は少し離れた椅子に座ると鞄の中から魔法の杖を取り出し手入れを始めた。


「ロジェスさん(ちゃん)は熱心に杖を手入れするんだね。」


 するとロジェスさん(ちゃん)はキッとした目で僕を見た。


「当然です。魔法使いたる者、常に自らの杖を大事にすべきなのです。たとえそれがどんな杖であっても……。」


 そう言うとロジェスさん(ちゃん)は杖の手入れを再開した。オイルを刷り込み布で磨き歪みを見て再び杖を磨く。ひょっとしたら両親から最初にもらった杖かもしれない。

 僕はダニエルたちが来るまでの間、ロジェスさん(ちゃん)の杖の手入れを見て過ごした。



 ダニエルたちが現れたのはそれから更に一時間もたってからだった。


「いやー待たせたね。じゃ早速行こうか。」


 ダニエルは悪びれず採集に出かけようとする。しかも、どこへ何を取りに行くのかも言わない。本当に大丈夫か?

 僕だけでなくロジェスさん(ちゃん)もダニエルの行動を訝しんでいる様だ。すると当のダニエルはにこやかに微笑みながら手招きする。


「大丈夫、大丈夫、今日行く採集場所は日帰りできるところだから安全な所だよ。」


「日帰りですか……なら安全かな?」


 ロジェスさん(ちゃん)は少し考えるとダニエルの方へ歩いて行った。

 日帰りか……大抵の場所は安全だけど、グレースさんが言っていた黒蓮ブラックロータスが取れる場所も日帰りできる。

 もし仮に、ダニエルたちがその場所に行くのなら、ロジェスさん(ちゃん)が危険かもしれない。

 僕は面倒な事が嫌いだ。だが、危険を見過ごして誰かが犠牲になると後悔のあまり悶々とした時間を過ごしてしまう。そんな無駄なことはもっと嫌いだ。


(仕方がない、付いて行くか。“アビス・キマイラの爪”があるから魔物は寄ってこないと思うが……。)



 案の定、ダニエルたちは黒蓮ブラックロータスの採集が目的だったらしく僕達を危険な湖沼地域へ連れて来た。


「ダニエルさん、ここは危険地域だったと思いますが?特にこの沼は危険だったとギルドから注意がされていたと思います。」


「大丈夫だよ。第一ここに来るまで魔物には会わなかっただろ。今日は運がいい日なんだぜ。」


 確かに、目的地に行くまで魔物と会う事は無かった。でもそれは僕の鞄に“アビス・キマイラの爪”があるおかげだ。ここがグレースさんの言う通り危険な場所なら“アビス・キマイラの爪”の効果が低い魔物がいる可能性がある。


 得てしてそんな予感は裏切られない物である。


 黒蓮ブラックロータスを探す僕たちを七対の目が見ていた。

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