青の翼
金髪蒼眼のイケメンは金属製の胸当てを着け腰には長剣を差し、爽やかそうに微笑んでいる。
このイケメンがわざわざ僕に声をかける理由な何だろうか?
「僕の名前は“ダニエル”、青の翼のリーダーをしている。先ほど見ていたけど君は収納スキルを使えるのだろう?」
どうやら、薬草を出すところを見ていた様だ。収納スキルと言ったところを見ると、収納袋を使っている事は判らなかった様だ。僕の拙い手品で何とかそれっぽく見せたかいがあると言う物だ。
「実は僕達、青の翼は収納スキル持ちを探していたんだ。」
「おや?ダニエルさんはこの間は魔法使いの方を探していませんでした?」
話を聞いていたグレースさんが間に割って入る。
「おかげさまで新しい魔法使いが加入してくれました。前の魔法使いが辞めて困っていたので大助かりですよ。でも魔法使いだけでなく荷物を運ぶ者がいた方が採集もやりやすいと思って声をかけたのですよ。」
要約すればこのイケメン戦士ダニエルは荷運びを必要としていると言う事らしい。確かに見習いの間は荷運びぐらいしか仕事が無いとキャシーさんが言っていた。
それを考えると、収納スキルを持っている僕は便利な見習いになるのだろう。でもこれって異世界物でよくある展開が待っているような……。
僕はそれとなくグレースさんに聞いてみる。
「ダニエルさん達、青の翼はDランクの冒険者で構成されているパーティです。
ただ、人の出入りが激しいパーティです。」
グレースさんの話からすると灰色に近いような気がする。ここは本人に話を聞くべきだろう。
「一つ質問があります。」
「ん?何かな?」
見習いに質問と言われて爽やかそうな微笑みを崩さない。出来た人物なのか何か企んでいるのか?
「前の魔法使いが辞めた理由を聞いてもよろしいですか?」
「……じつは荷運びと出来てしまってね、二人して辞めてしまったんだよ。」
辞めた理由としてはよくある理由なのだろうか?グレースさんの方へ視線を向ける。
「その手の話はよくある事と言えばよくある事ですがダニエルさん達の青の翼では少し数が多いように思えます。」
「えー、それは無いですよ、グレースさん。辞めた人の数が多くなってしまったのは偶然です。僕らは採集がメインだから仕事があまり華々しくありません。派手な冒険譚にあこがれて冒険者になった者にとって地味で辛い物に写るのだと思います。」
ダニエルさんの言い分には納得できる部分はある。だが何か僕には引っかかって考え込んでしまった。
「……決心がつかないかい?それならどうだろう、お試しという事で仮にパーティに加わってもらうのは?どうです?」
仮にパーティに加わるお試しか……。それなら何か問題があった場合でも対処できそうな気がする。
「判りました。それではお試しという事でしばらくお願いします。」
「よかった、助かったよ。しばらくの間だけどこれからよろしく。」
ダニエルはそう言って僕の手を両手でガシッと握りしめた。
「そうだ、僕のパーティを紹介するよ。酒場に待たせているんだ。」
どうやら、ダニエルは酒場きた時に僕に気付いて交渉し始めたように思える。
酒場には、革鎧を着た少し色ポイお姉さん、金属鎧の目つきの悪い厳ついお兄さん?髪が短く明らかに僕より年下の少年?少女?ローブを着ている所を見るとこの子が新たな魔法使いのようだ。
「なぁに、ダニエル?その子が新しい荷物持ち?」
「フン。誰でもいい。テントや食料を持てれば問題ない。」
「へぇー、ふぅん?一応、収納はあるみたいだね。どのぐらい入る?」
「そんなには入りません。それに収納に制限が……。」
「なら、薬草は別の鞄にいれるのか?」
「ええ。」
僕の姿を見たダニエルの仲間は僕を格下と見ているらしい。まぁ、見習い冒険者なのだから間違いはないが何か嫌な感じだ。
そしてローブの魔法使いは鑑定の魔法を使ったようだ。新参者に対して使うこともあるだろうが。相手の同意を得ない場合は争いの原因になるのであまり褒められた行為ではない。
「紹介するよ、革鎧の女性がシーラ。で、金属鎧の奴がライス。ローブの女の子が……」
「僕の名前はロジェスだよ、よろしくね!えぇっと……」
「僕の名前はソウジだ。お試しの間よろしくたのむ。」
「よろしく、ソウジお兄さん。でも、このパーティでは僕の方が先輩だからね。」
ロジェスは元気よく挨拶をしてきた。わざわざ先輩風を吹かせたいのは少しほほえましく思える。
「さて、メンバーもそろったことだし明日は採集に行けるな。じゃあ、明日の九時ごろ北門の前で集合だよ。」
「明日ですか?事前の準備は?」
「大丈夫。採集場所はちゃんと僕が調べているから任しておいてくれたまえ。」
ダニエルは胸を張って宣言する。しかし僕はその言葉を鵜呑みにするほどボケてはいない。後でグレースさんに採集場所などの情報を聞きいてみよう。