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旅立ちとお礼品

 僕はガンテツさんの工房を出ると冒険者ギルドへ向かった。

 冒険者の試験についてギルドに尋ねる為だ。試験によっては入念な準備が必要になるかもしれない。こういう準備は早い方がいい。

 冒険者ギルドの受付のキャシーさんに聞いてみよう。


「冒険者の試験ですか?簡単な試験ですよ。ユーフォミアのギルドで登録した見習い冒険者の場合は首都まで行って冒険者カードを更新してもらえばいいのですよ。」


 意外に簡単な試験だ。どこに困難な問題があるのだろうか?


「首都まで徒歩で二十日ほどかかります。早馬ならもう少し早いですけど……。今の時期、隣のチューバでは見習い冒険者用の仕事は無いですよ?」


「?」


 首都までの徒歩で二十日かかるのは判った。でも隣の町チューバというらしいで仕事の有無が何故関係するのだろうか?


「ソウジさん、徒歩で二十日間という事は移動中の収入が無いと考えてください。隣町までの護衛の依頼はありますが見習いが雇われることはありません。したがって、二十日分の食費や宿泊費が必要となります。装備を新調したからと言っても簡単に行けるわけではありませんよ。」


 ここで僕はようやく気が付いた。

 普通の見習い冒険者は見習いが出来る依頼でお金をためて首都へ行くか町から町へ仕事を間に挟みながら首都へ行くかしかないのだ。

 しかし、キャシーさんの考えている見習い冒険者は普通の見習いである。


「それでも首都を目指すと言うのなら止めませんけど……何が起きても自己責任ですよ?」


 キャシーさんも見習いが無理をしていると考えて心配してくれているのだろう。しかし幸いなことに僕には収納袋もあるし道具もあり、普通の見習い冒険者とは異なっている。


「うーん、そうだなぁ。取り敢えずジャッキーさん達に聞いてみるよ。」


 そう言って冒険者ギルドを後にした。


 ―――――――――――――――――――――


「出来るな。」


 ジャッキーさんの答えは至極簡単な答えだった。実際、僕の装備やもっている道具を考えた結果だろう。


「あたしは難しいと思う。ほら、この頃はマシになってるけど、ちょっとしたことを何かやらかしそうで……。」


「「「「「「「「ああ、なるほど。」」」」」」」」


 ジャネットの言葉に“ジェームズ・ファミリー”の一同は同意する。


「でもまぁ、ジャネットもソウジが首都にたどり着くことは出来ると考えているんだろ?」


 これはタイタスさんの言葉だ。話している内容からすると、タイタスさんも僕が首都へたどり着けると考えている様だ。


「「僕らは判断を棄権するよ。ソウジの事はよくわかってないし。」」


 これは、つい最近クエストから帰って来たばかりのリッベィさんとブレナンさん。彼ら二人で採集クエストをやっていたらしい。

 確かに彼らと初めて会ったのは二日前だ。会って話し込んだわけではないので僕も彼らの事はよく判らない。


「ま、大丈夫でしょう。」


「そうだね。あれがあるから途中で魔物には襲われないだろうし、盗賊が旅の冒険者を襲うとは考えにくい。」


 ジャメインさんとミッシェルさんも問題ないと判断している様だった。元々両方とも気楽な性格なのか何とかなると考えているようだった。


「私は賛成だな。正式な冒険者になれるなら早いに越したことは無い。」


 最後にマリオンさんは出来るなら早い方がいいとも言った。結局、“ジェームズ・ファミリー”のほとんどが可能だと言っている。

 なら問題は無いだろう。飲食は銀のトレイがあるし銀のコップもある。寝泊まりするのにも小型テントがある。

 あとは道中、盗賊に気をつければよいのだし何も問題は無い。


「よし、善は急げというものだ。明日には出発するか。」


「ほう、明日か。なら今夜は宴会だな……。」


 その日の夜遅くまで食えや飲めやの大宴会だった。今は宴会で疲れたのかみんな寝ている。

 僕はちょっとした箱に彼らへの贈り物とガンテツさんへの贈り物を入れ僕が寝泊まりした部屋に置いて置く。


 まだ太陽が地平線を白く照らし始めたばかりだ。まだ朝早いので街のほとんどの人が寝ている時間だ。

 首都までも道程を確認しユーフォニアムの門を出る。


「さて、首都まで行ってみますか。」


 僕は首都までも道程をありき始めた。


 ―――――――――――――――――――――


「行ったか?」


「行った様だぞ。」


 ジェームズ家で雑魚寝をしていた皆がむっくりと起き上がる。どうやらソウジが出て行く時もみんな起きていたようだ。


「マリオン兄さん。何故ソウジを見送らなかったの?」


 ジャネットがマリオンに尋ねた。どうやら狸寝入りでソウジを黙って行かせたのはマリオンの指示だったらしい。


「一つは我々が見送ることによって誰かに目を付けられるのを避けるという事。そしてもう一つが……これを見てくれ。」


 マリオンは青い色の紙を兄弟の前に広げた。


「青紙!まさかギルドの指名クエストか!」


 ジャッキーが驚いて声を上げるとマリオンは黙って頷いた。リッベィ、ブレナン、ジャメイン、ミッシェルの四人が家の中に不審な人物や物が無いか確認に行く。


「じゃあ、マリオン兄さん、指名クエストの内容は?」


「今から説明する。この指名クエストは極秘クエストだ。内容を他に決して漏らさない事。」


 マリオンから極秘クエストであることを伝えられて一同は頷く。


「我々に与えられたクエストはヨブ王国の内部調査だ。」


「ヨブ王国だって?それはソウジがやって来た方向の国だな。で、ヨブ王国の何を調査するんだ?」


「……異界召喚。ヨブ王国で異界召喚が行われた形跡がある。それも大規模の。」


「何だって!そりゃ大変な事じゃ……?」


「ああ、召喚された者は世界のパワーバランスに影響するほどの特殊スキルを持つことが多い。そしてソウジには特殊スキルがあると私は睨んでいる。」


「……!マリオン兄さんはソウジが異界人だと?」


 ジャネットにはまさかと思う気持ちがあった。


「ほぼ間違いなく異界人だと思っている。ランディ、何か覚えがあるだろう。」


「確かに、彼の知識は妙に高度だが一般常識が無い。どこか変に偏っていると言って良いだろう。異界人と言われれば納得するな。」


「私も同意見だ、彼はあまりにも知らないし知りすぎている。」


 タイタスも“クリフ・ウォール”からの帰り道、ソウジと話していて奇妙な違和感をもっていたのだった。


「ジャッキー兄さん、マリオン兄さん。ソウジの部屋にこんなものが……。」


 ミッシェルがそう言って差し出した箱の中には九本の白金色の短剣ダガー金槌ハンマーが入っていた。


「これはいったい?タイタス!鑑定を!」


「もうやっているよ!マリオン兄さん。……何!」


「どうしたタイタス?これはいったい何なのだ?」


 タイタスは言葉を詰まらせながら鑑定結果を伝えた。


精神感応金属オリハルコン武装……」


「「「「なんだって!」」」」


 驚きの鑑定結果に一同は思わず叫んでしまう。


「あいつ最後にとんでもない物を置いていきやがった……。」


 そう言うと、ジャッキーは頭を抱えた。


「ミッシェル、手紙には何と書いてある?」


 ミシェルはマリオンに尋ねられて慌てて手紙を開く。


「えーっと。


 “拝啓、挨拶も出来ませんでしたが僕は首都へ向かって旅立とうと思います。

 これまでいろいろお世話になりました。このご恩は忘れません。


 これまでのお礼と僕の仲間たちの手助けをしてもらう為、箱の中にいくつか魔法の武器を入れて置きます。可能ならば僕の仲間の手助けをお願いします。 ソウジ

 追記:金槌はガストンさんへ渡してください。”



「マ、マリオン、これはどうしたらいい?」


 ジャッキーは白金色の短刀ダガーを指さした。


「……そうだな。各自一本ずつ持つ事にしよう。金槌はガストンだな。」


「でもマリオン兄さん、いろいろ問題が……。」


「いや問題は無い。あの手紙を見ただろう?これはソウジの指名依頼の報酬。“彼の仲間を助ける”と言う依頼に対する報酬だよ。」


ミッシェル「タイタス兄さん。この武器を使うのはどうすればいいんだ?」


タイタス 「合言葉を唱えれば本人が望む武装になるよ。合言葉は”精神感応金属オリハルコン”だ。」


ミッシェル「オーリハールコーン!!」


タイタス 「なぜロボになっている……。」


ミッシェル「ダッテカッコイイダロウ。」


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