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冒険者の講習

 ガンテツさんの所で革鎧のオーダーメイドを頼んで二日後、ギルドから初心者講習の連絡が来た。講習は明日の朝から始めるようだ。

 講習の連絡が来るまでの間、ガンテツさんの所で採寸をおこなったり、ジャッキーさんやタイタスさん、ランディさんから様々な知識、特に一般人として必要な知識を教わったりしていた。

 科学だけでなく政治なども発展した異世界から来た僕の知識や常識では問題がありすぎるようだった。


「取り敢えず、簡単な一般的な知識は教えたから、あとは冒険者としての知識を講習で得る事だな。」


 ランディさんは少し軽くため息をついた。知識の無い物に一からわかりやすく伝えるのはかなり労力のいる作業だからだ。

 ランディさんだけではなくジャッキーさん達、“ジェームズ・ファミリー“の人達にはお世話になった。城塞都市に来るまで知らなかったがジャッキーさん達には他に兄弟がまだいる。全部で九人家族だそうだ。

 彼らにも色々やってもらった分、これは何か恩返しをしなくてはいけないような気がする。


 そうそう忘れていたが、収納のレベルが上がっていたみたいで銀の盾の大きさが少し大きくなった。

 それと同時に盾の大きさを指先ぐらいまでに縮小できる様にもなった。大きいのも役に立つが小さい場合ももっと役に立つ。

 ガンテツさんに渡した日緋色金の欠片に小さい穴を二つ開け柄が取り付ける様にすると非常に喜んでいた。

(方法をしつこく尋ねられたのは閉口したが、秘密のまま通した。)

 柄を取り付けた事で日緋色金のナイフは格段に使いやすくなったらしく、完成までの日数を大幅に短縮できるとの事。予定では初心者講習が終わるころに完成するらしい。



 さて初心者講習が今日から始まる。開始時間は朝の八時かららしい。(そう言えばこの世界は共通の時間があって何故か二十四時間制だ。)

 ここ数日の朝はミッシェルやジャネットが起こしに来るのだが今朝は起こしに来る気配がない。

 どうやら既に初心者講習が始まっていると思ってもいいみたいだ。

 僕は朝食を済ませた後、時間の余裕があるうちに冒険者ギルドへ向かう。何事も早く行動する方が面倒なことになる可能性が低くなる。

 後回しにした時に限って面倒なことが起こり、時間が足りなくなるのはよくある事だ。

 学校の日直でも時間ギリギリに登校したため、異世界転生に巻き込まれたのだから間違いないだろう。


 開始予定の八時よりも三十分早い時間にギルドに到着する。どうやら僕が一番乗りだったらしい。

 受付にはキャシーさんが今日もニコニコしながら座っていた。


「おはようございます。初心者講習を受けに来ました。」


「あら?ソウジくんだったかしら、若いのに優秀ですね。まだ三十分前ですよ。」


「いえ、一応、開始時間の十五分前には行動する様に心掛けている物なので……特に早くは……。」


 やはり美女に褒められると照れてしまう。キャシーさんは受講票を差し出しながらじっと僕を見た。


「ふぅーん。ジャネットから教えられたわけじゃないんだ。」


「いえ、特に今日は何も?何かあるのですか?」


「そうね。そこの酒場の席に座って見ていれば判るわよ。」


 僕はキャシーさんから受講票を受け取り、言われた通り酒場の席に座るとギルドを見回した。

 この間、冒険者の登録に来てから来ていなかったが、木造の建物であちこちに修理した後がある。

 受付の隣には大きな掲示板があり、何枚かの紙が貼られている。あれが所謂クエストの掲示板なのだろうか?

 そして十五分もしない内に冒険者たちが集まりだした。

 厳つい顔や重そうな鎧を着た者さまざまであるがどの人物も僕よりはるかに強そうに見える。彼らはベテランの冒険者なのだろうか?


 時刻が八時近くになった頃、カウンターの一部が開き女性職員と男性職員が紙の束を持って出てきた。

 彼ら二人は掲示板の前に来るとおもむろに手に持った紙を掲示板に張り出した。彼ら二人は全てを張り終えるとそそくさとカウンターの奥へ引っ込んだ。


「では、時間です!クエストの受付を開始します。」


 キャシーさんの声が響いた途端、掲示板の前は戦場になった。


「よこせ!それは俺のだ!」

「やかましい!早い物がちだ!」

「くそう!取り損ねた、だがこの依頼だけは渡さん!」

「あっ!俺の依頼を!ぶっ殺すぞ!」

「なんだと!やれるものならやってみな!」


 どの冒険者もクエストの紙を取るのに必死であり、受付のカウンターも屈強な冒険者で一杯だ。

 なるほど、見ていれば判ると言ったのはこの事か。確かに初心者がこの戦場に割って入るのは至難の業だろう。

 その証拠に僕と同じく初心者講習を受けに来た冒険者見習いらしい男女が何人かギルドの入り口の前でウロウロしている。


 そして、酒場の奥の開いている場所では胸に板金鎧を着け手にバインダーのような物を持った男が一人立っていた。

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