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冒険者達

 どうも反応が悪い。もう少し明るく挨拶をすべきだったか?それとも声が小さすぎたのか?

 僕は大きく息を吸い込んで大きな声を出そうとした。


「大声をたてるなっ。」


 いつの間にか間合いを詰めていた皮鎧の人が手で僕の口を塞いだ。赤茶色の髪の毛を短くカットしている女の子だ。


「いい、わかった?」


 僕は頭を上下させて同意を示す。


「でも、ワイバーンの巣の近くで大声を出すなんて……見つかったらどうするのよ。集団で来たら私達では対処できない位の狂暴な魔物よ。知ってるでしょ。」


 彼女が言うにはこの辺りにはワイバーンの巣があるらしい。見てみたい気もするが、ワイバーンが集団で来ると対処できないなら仕方がない。大人しく諦めるとするか。


「だが不味いな。今の声でワイバーンが警戒しているかもしれない。今日の所は一旦下に降りて対策を練り直すか。」


 彼らのリーダーらしい男はそう言った。そう言えば彼ら全員が赤茶色の髪の毛で顔つきも似ている。


「そうだな、ジャッキー。こんな所で別の冒険者と出会うのは不運と言うほかはないが、とりあえず出直した方がいい。」


 白い鎧に身を包んだ少年が同意する。どうやら一旦下に降りるようだ。どうせなら僕もついて行った方が安全に降りられるだろう。

 彼らに拒否された場合、その限りではないのだが……と考えていたがそれは杞憂と言う物だった。彼らは当然の様に僕を隊列に組み込んだ。

 鎧を着けていない僕は彼らの真ん中だ。僕の前後には鎧を着けた二人が周囲を警戒している様だった。


「黒い目に黒い髪……君はこの辺りでは見かけない顔だね。どこから来たんだい?僕はミッシェルと言うんだ。」


 白い鎧の少年はミッシェルと言うらしい。顔つきはまだ幼さが残るものの美形と言う部類だ。少年だから美少年だろうか。


「ソウジって言います。えーっと、ラスタクの街から……かな?」


 そう言った途端、周りの人たちの動きが止まった。みんな一斉に首からギリギリと音をさせながらこちらを向く。


「ラスタク……だと?ヨブ王国の町じゃぇねか!」


「ジャ、ジャメイン声が大きい。で、でも本当かい?ヨブ王国側から来たと言うのは?」


 ローブを着て少し太った青年がヨブ王国から来たのか確認をした。ヨブ王国側から来たことは問題なのだろうか?さてどう答えたものか……。


「ちょっとタイタス、今はそんな話より下に無事降りることが先決よ。それに無駄話はしない。」


 先頭を歩く斥候らしい女の子に窘められ皆口を閉じた。


「……ジャネットは怒らせると怖いんだよ……。」


 ボソボソとタイタスと言う人が僕に囁く。僕も気を付けておこう。

 僕を守って降りている為か時間はかかったが二時間ほどで下に降りることが出来た。降りたすぐ近くには僕が登ってきた場所と同じ様に水路が流れていた。

 水路から少し離れた場所に少し開けた所があり、彼らのキャンプになっている様だ。その場所に移動すると僕や彼らは腰を下ろし休憩することになった。


「取り敢えず自己紹介しよう。俺達はフリューゲル王国の冒険者パーティ、“ジェームズ・ファミリー”と言えば少しは名が知れている。俺はリーダーのジャッキー、この白い奴がミッシェル、黒い鎧がジャメイン、白ローブがタイタス、黒ローブがランディ、で、うちのパーティの紅一点のジャネットだ。」


 ジャッキーさんがそれぞれの名前を教えてくれた。


「“ジェームズ・ファミリー”という事は皆さん……」


「ああ、俺達は家族、同じ血を分けた兄弟さ。」


 どうやら家族ぐるみで冒険者をやっているパーティらしい。家族で冒険者をやっている分、よくある冒険者の諍いは少なくて済むのだろう。


「で、おまえさん、ヨブ王国の方から来たのは本当か?いったいどんな道を通って?」


 ジャッキーさんの後ろでタイタスさんが何やら呪文を唱えている。

 これが尋問なら“真意看破トゥルー・インテンション”か“嘘発見センス・ライ”だろう。TRPGで怪しい相手を調べる時によく使われる魔法だ。

 どうやら彼らに怪しまれているし隠し事をすることも出来ない様だ。


「はい。僕はラスタクの街から秘密の道とやらを使いこの建物、壁に来ました。その後壁の上を移動してあなた方にあったのです。」


 僕の話を聞いたジャッキーさんがタイタスさん方を振り向くとタイタスさんは大きくうなずいた。


「……本当かよ……ちょっと待て、お前今壁のを移動したって言わなかったか?」


 僕が頷くとジャッキーさんはガバッと詰め寄り大きく揺さぶった。


「おい、それじゃどうやってワイバーンの巣を抜けてきたんだ?見た所どこも怪我をしていない様だが、安全に巣まで行ける方法があるなら教えてくれ!礼は必ずする!」


 うぷっ。前後に大きく揺らされて少し気持ちが悪い。


「ちょっとジャッキー、彼青い顔をしているわよ。揺らし過ぎよ。」


「おっと、すまない。つい……でどうだ?教えてくれたらクエストの報酬の一割を君に譲ってもいい。」


 さて困った。ジャッキーさんは情報を欲しがっているけど僕には何故と言うことが判らない。彼が危惧するほど危険な道だったのだろうか?

 それに彼らが受けたクエストとはどの様なクエストなのだろう?


「クエストの謝礼ですか……。」


「ああ、ワイバーンの卵を獲って来るクエストだよ。かなり報酬が良いクエストだから一割でも結構な額になると思うよ。」


 我らはRPGで定番のワイバーンの卵を獲るクエストを受けている様だ。


 ……


 ワイバーンの卵?確か壁の上で卵のような物を手に入れていたな。


「ワイバーンの卵ってこれの事?」


 そう言って懐に隠していた収納袋の中から卵を一つ取り出した。


「「「「「「え!」」」」」」」


「「「ワイバーンの卵!」」」

「「「収納袋!」」」


 どうやらワイバーンの卵で間違いない様だ。収納袋にも驚いていたのは何故だろう?


誤字修正ありがとうございます。


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