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中ボス?

 僕は仮眠から起きると探索を再開した。スマホの時計は既に昼過ぎ。仮眠ではなく本格的な睡眠になっていた様だ。

 最初にやることは今いる場所の確認だ。


 切り取った扉を収納したおかげでこの部屋の様子がよく判った。

 やはりこの部屋は宝物庫みたいなもので僕が切り取った扉の正面に道が続いている。

 道は先ほどとは違い天然の洞窟になっている様だ。洞窟の壁には所々発光する苔の様なものが付いている為か少し明るくなっている。

 真っ直ぐ歩いたその先に、やはり先ほどの扉とは違う黒い金属の扉があった。


 僕は扉を少し開け中の様子を窺った。

 今覗いている場所は玉座の裏に当たる場所らしく、不気味な雰囲気の何かが玉座に座っているのが判る。


 さて、部屋の中に入るべきか否か……それが問題だ。


 相手は扉の裏からでも判るぐらい不気味な雰囲気が玉座から漂ってくる。

 キマイラの様にスパンと首を落とせれば良いのだが相手によって首を落としても死なない場合がある。

 RPGでよくあるパターン、例えば配下にスケルトンの騎士であるアンデットナイトを持つマジックユーザー型のアンデット、リッチである。

 リッチは魔法系の攻撃に強く物理系の攻撃に弱い。

 大抵、玉座の左右にアンデットナイトを控えさせ自分への守りを強固にしている事だろう。


「さて、玉座に座っている魔物はどんな種類なのかは見える範囲にいる配下の魔物で判別するしかないか……。」


 そう考えて、もう少し大きく扉を開いた。さらに扉を開いたおかげで玉座の左右に立つ魔物が見える。

 どちらも真っ黒な金属鎧を着て幅広の大剣を持っている。頭にも金属の兜を被っている様で顔は見えない。


「なんだろうな……何か嫌な予感しかしない。」


 もう少しよく見ようと一歩足を動かすと部屋に体の一部が入った。


 ギュルッと金属の兜が回り、その兜の中から落ち込んで真っ黒い眼がこちらを見た。

 眼の中心には不気味な青い炎が小さく揺らめいている。


「アンデットナイト!」


 僕が思わず叫びすぐさま部屋から離れるとアンデットナイトは顔を元の位置に戻した。

 玉座の両側にアンデットナイトがいた事で玉座に座るのはリッチであることが判った。


 ……よりによってリッチである。


 扉はリッチがいる部屋の方から一方通行で広間に出る。と言うことは、外に近いのはリッチの部屋である。

 だが、キマイラとリッチではリッチの方が強敵である。しかもこのリッチ、単独ではなく配下がいる。


 そこから推測されるのこと。


 このダンジョンは中間ボスがリッチなのである。とすれば、先ほどのキマイラが広間にいた事の理由が付く。

 あのキマイラはフロアボスではなく雑魚の魔物。あの先にはキマイラが雑魚になるフロアであることを意味している。


(なるほど、だれも踏破したことのない迷宮なわけだ。運よくキマイラを倒しても、中間ボスであるリッチを倒さなくてはならない。あの白骨死体の様に倒すための武器が無ければ手も足も出ない。ここを抜けなければ僕も同じように白骨死体の仲間入りだ。)


 しかし、玉座の裏迄は約2mあり、僕の武器でもある収納スキルで届く範囲ではない。収納スキルの発動距離は1mも無いのだ。

 手を伸ばしても玉座の裏にやっと届くくらいでリッチに届くとは思えない。


 なら別の方法を考えなくてはならない。リッチやアンデットナイトを倒すぐらいの大規模な爆発が起きればいいのだ。


 ふと、先ほど手に入れた収納袋が目に入る。先ほど宝箱に入っていた魔道具の一つだ。

 そういえば”呪いの袋”も宝箱に入っていたな。あれも収納袋だろうか?

 収納袋なら”呪い”の品物とは言え、魔道具の収納袋である。収納袋と同じことが出来るが呪いがかかっているのだ。


(これは何とかなるかもしれない。その為にはまず扉をどこまで開けることが出来るのか確認しなくては。)


 さきほどのアンデットナイトの反応から考えると、部屋に入らない限りアンデットナイトやリッチは攻撃してこないように思えた。

 僕は徐々に扉を開けて行く。ゆっくり、ゆっくり、1cmずつゆっくりと、である。

 そして扉は大きくあけ放たれたがアンデットナイトやリッチはこちらに向かってくる様子はなかった。


(よし!これで勝てる!)


 次に僕は”呪いの収納袋?”の口をこちら側に向け、玉座の後ろに押しやる。その際、扉から切り取った金属を長い箸の様にして移動させた。


 全てを所定の位置に置いたとき、僕は”呪いの収納袋”に収納スキルを使用した。


 ギュン!


 収納スキルの円盤が”呪いの収納袋”の口に触れると黒い球体が出現する。

 黒い球体は玉座だけでなくその近くの物を吸い込み始める。

 球体が吸い込む力は極めて強く、あまりの勢いに僕は思わず地面に伏せ吸い込まれないように抵抗した。

 そして数秒後、黒い球体は辺りの物を飲み込みつくして満足したのかその場から消え去った。


 ほんの数秒しかたっていないが、何十分も耐えていたような感じだ。


「うん。我ながらかなりえげつないことになったな。」


 扉の先の”呪いの収納袋”があった場所は玉座も何もなく平らな床があるだけになっていた。

 アンデットナイトも同じように巻き込まれたのか立っていた場所に影も形もない。

 配下であるそのほかのアンデットたちも主であるリッチが消滅したためか装備品を残して灰になっているようだ。


「流石にリッチの装備品はないか……、でも他の魔物が持っていた装備は手に入ったな。それに宝石みたいな石がいくつも散らばっているぞ。」


 部屋に散らばっていたのはロングソード、スピア、杖、皮鎧、盾。ロングソードもスピアも総鉄製なのか結構重い。

 盾も鉄の盾だし杖に至っては使い方が判らない。魔法が使えれば話は違うのだろうが今の時点では使えそうにない。

 皮鎧も筋肉の無い僕には少し重いし、第一寸法が合っていないのでぶかぶかできちんとつけることが出来ない。


 結局、この部屋で拾った物は全て収納袋の中に収めることにした。拾うだけでも結構な時間が掛かった。

 スマホの時計を見るともう夕方、どこか安全な場所を確保した方が良い。

 できれば睡眠をとった宝物庫ではなく先に進んだ場所の方が良いだろう。


 扉を開けた先を調べてみる。

 部屋の入り口の前は安全地帯らしく誰かがキャンプした跡がある。そして魔物の形跡がない。

 ここなら安全なのだろう。


 そろそろ食事にした方が良い。結構お腹がすいている。収納袋の中から銀のトレイを出し床に置く。何も起きない。


「まいったな……お腹がすいたんだけどな……。」


 僕の願いが届いたのか銀のトレイが輝き同じ様に食事が出現した。今回はご飯とみそ汁にサンマの塩焼きと総菜が付いた和食だ。


 グイッと味噌汁を飲むと自分好みの白みその味噌汁でホッとする味だ。秋刀魚も脂がのっており醤油を垂らした大根おろしと一緒に食べる。

 実に旨い。ご飯も噛めば噛むほど味わい深い。また、秋刀魚と一緒にご飯を食べると絶妙な味になる。


 久しぶりの和食に舌鼓を打ち満足するとなぜか涙がこぼれてきた。今日はもう休んだ方がいいだろう。

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