それが彼の仕事
プロジェクト仕事の流儀
彼の仕事に対しての話
とギルドで変な奴に絡まれたことを除けば割と早く帰ることが出来たと思う……が、
「なんか人多くね?」
と俺の店先はいつもより人が1.5倍くらいいた。
「あ!おかえりなさい!」
「た、ただいま……だが、どうしてこうなってるんだ?」
「いやそれが私にも…」
とリーン自身も把握は出来てない様子。
……と、そんなことを言ってる場合じゃなかった。客は全員サクッとさばかないと。
「はい!皆さんどうしましたー?」
「お、トールか!やっと来たのか!」
「トールさん!聞いてくださいよ!」
とたちまちたくさんの人に囲まれる。いやなんだってこんなに騒ぐんだろう、と、その問題はすぐに理解した。
「聞いてくれよ!この爺さんがトールさんとこの野菜を奪おうとしたんだよ」
「盗みですか」
それは看過できない自体だ。ウチは見ての通りよく俺が店を開ける。この町のみんなは盗まないでちゃんと買ってくれるって信じてるからだし、多少俺がいなくても大丈夫だと思ってるからだ。それになによりそんなことを疑いたくないからだ。
「どうして盗もうとしたんです?」
俺は爺さんに話しかける。爺さんは抵抗するだけ無駄と判断したのか人の拘束がなくともそこから動かなかった。
「私は最近一文無しになっちまったんだ。それでよ、それでも孫や娘たちには何か食わせてやりたかったんだよ……」
「ほう」
ワケありの匂いがする。
「で、店主がいない店から盗もうと……?」
「あぁ、すまねぇ……俺もそんなことをしたくなかったんだ」
そう語る爺さんは涙で地面を濡らした。
「それでも盗みはいけませんよ。まぁ今回は大目に見ましょう。はい。じゃあコレでも持ってってください。金はいりません」
俺は爺さんに店イチオシの食材を手渡す。
「ありがてぇ……ありがてぇ……」
「もう盗みはしちゃいけませんよ、次は無いですからね」
俺は理由は聞かない。特に気にすることでもないと思うし、彼自身がちゃんと謝ってるのだからそれ以上何かを言うこともない。
「トールさんは甘いと思いますよ」
商売仲間は俺にそう言った。
「そりゃな、そもそもが趣味なんだから、コレぐらいは許すよ」
「甘いっすねー、じゃ、買ってもいっすか」
「はいよー、今日は何を買いに?」
と商売仲間にいつも通り売る。
甘いと言われたのが少し気になったが、俺はそもそも王の援助を常に受けている身なのではっきり言うならタダで売ってもいいのだ。それをしないことは特に意味は無い。がまぁそれを言うと確実にこの町の財政は狂うだろうし、なにより全員がこの店を利用できない。だから値段をつけているだけだ。
「あのあの!お買い物いいですか!」
「お、ちびっ子、いいよ!今日は何をお探しなんだー?」
「お母さんが風邪引いたってだからお兄さんに風邪に効くお野菜欲しいって伝えてくれって」
「おーけー、風邪なんてやっつけちゃうとっておきの野菜をあげるね」
と風邪に効く野菜を数個、おまけとしてさらにちょっとプラス。
「お値段は300シルバーだけど足りる?」
「んー、250しかない……」
「君のお小遣いかな?」
「お母さんがコレで買ってきてって」
「そうか、なら200シルバーにまけちゃう!50シルバーはこっそりお小遣いにしちゃお」
と子どもが来たら当然こっそり値引きしたりもする。
もちろん……
「お母さんには秘密にしておくから……」
こういうことが情操教育上よろしくないんだろうなぁと思いつつも、まぁ子ども割引ってことにしよう。
「お母さんにヨロシク伝えといてね」
「はーい!わかったー!」
と、コレが俺流の商売なのです。
弱きを助ける。俺の商売するに当たってのポリシーみたいなものだ。
余談
「あの爺さんってのはなんで一文無しだったんだ?」
「聞いた話だと誰かからお金を毟り取られたらしいぞ」
「へ?誰に」
「聞いた話だと……確か「ゆ」で始まるやつらしいが……」
「ふーん」
「ゆ」……果たして一体どこの輩なんでしょうねぇ
感想やら評価やらしてもらえるとやる気が増えます。
ではまた次回に。