3年後の俺の日常
「……今日で三年か……長い道のりだった」
まぁまだ魔王が倒される兆しはない。最近、勇者がようやく二人目の四天王を撃破したと吉報が飛んだくらいだ。まだまだ魔王討伐までは程遠いだろう。
「トールさんどうしたんですか?」
「あぁリーンか。いや、俺もここに結構居るなって」
と俺は二年前、森に入った時に拾った少女が近くに来たのでいつもの様子で返す。彼女は記憶喪失で、現在は俺の子どものような感覚で一緒に暮らしていた。
「そうですね!畑も拾ってくれた時と違ってすごく大きくなりましたもんね!」
と二人で笑い合う。
「ところで……何の用だ?お前が畑に来るのは珍しいな?いつもは何故か来たがらないが?」
と俺はリーンに聞く。彼女は何故か畑には滅多に来ないのだが……
「いや、さすがに私もそろそろ仕事する時期かなって……」
「ん?あぁ出会った時は小さかったもんな、そろそろ見た目は10歳か」
この世界だと10歳からが働き始めと言われている。学校なんてものは貴族の子どもたちしか行けない高級なものだ。だから正直安値で学校を作って稼ごうと思ったが手続きやら建設費やらで馬鹿みたいに金が飛びそうだったのでやめた。
「そうか……だがリーンはなぁ……お前を畑仕事させるのは……色々無理があるだろ」
何せ彼女は虫は無理だし、クワは重すぎて持てないしで圧倒的に農家には不向きなのだ。
「じゃぁ、どうすれば……?」
「そうだな……今日の畑仕事は終わったし、お前の仕事場でも探す…………か?」
と少し考えてみるが、別に今すぐに働いて欲しい訳では無いし、なんならうちの癒しとしてずっとここにいて欲しいし……
「いや、ダメだ。リーン、少し待てお前をどこかに働きに出すのは俺が許せない。どんな変な虫が付くかわかったもんじゃない」
「お?嬢ちゃん働きたいんか?」
一番ダメなやつが来た。
「いや、俺が許さん、帰れ」
「おうおう、なかなか冷たいこった」
ヤレヤレと肩をすくめるのは富裕層のジジイだった。俺の野菜を買ってくれる常連だが、いかんせんウチの子にセクハラ紛いの発言をしてるため俺からしたら天敵のようなものだ。しかも定期的に金を払ってくれるから無下に扱えないのもダルい。
「まぁまぁ、そうカッカすんな、今日もお前さんの新鮮な野菜を買いに来たんだ。そうだな、じゃあ諦める代わりに少し安くして貰おうか」
「金持ちなんだからそこら辺は気前よく払ってもらいたいもんだけどな」
「ハッハッハ、いつも悪いと思っとるよ」
と言いつつもまぁ常連なので多少のサービスをさせてもらうのが商売だ。
「いつもより多く買うな、パーティーでもするのか?」
「そうなんだが、生憎お前さんは招待出来ないぞ」
「招待されても行かねーよ、俺はお偉いさんたちのご機嫌取りなんざ下手なんでね、あんたに対してもな」
「ハッハッハ、ソイツは上手い」
と軽口を叩きあいつつ、サクサクと売っていく。
「おっと、じいさん、コイツはどうだ?野菜の中でも甘みがダントツで高いこの葉野菜、細かく切れば盛り付けにもアクセントとして加えられる、そして何より今なら二つで一つオマケしてやろう」
「ふむ、なるほど?少し高めだがオマケがつくのなら、アリだな、よし買った」
「はーい、毎度あり!」
と言ったやり取りをしたりして中々にじいさんは買った。
「荷物重そうだからせっかくなんで持ってってあげましょうか。サービスですのでお気になさらず」
「ふむ、なら頼もうか、さすがに私もコレを一人で持つのは難しい」
「リーン、少しの間留守番を頼む、俺はこのじいさん送ってから少しギルドに寄ってくるからその間店に来た客とお話でもして時間を稼いでてくれ」
と少し茶化しつつ、リーンに留守番を頼む、さすがに店を閉じる訳には行かないのだ。
「はーい、気をつけてね」
しかし彼女も伊達に二年一緒に住んでるだけあってすぐに反応、店先にちょこんと立つ姿はとても愛らしい。……いや、俺はロリコンじゃない、娘が可愛くて仕方がないテンションでこれを言っているから俺のことは親バカと言ってもらおうか。断じてロリコンではない。
と、脳内で語りつつも俺はじいさんの荷物を半分以上持たされてじいさんの屋敷へと向かった。
余談
「目に入れても痛くないっていう表現はきっとリーンのことを言うんだろうなぁ……」
「是非ともウチで働かせたかったんだが……」
「ダメだダメだうちの子は誰にも渡さん」
「いや、メイド服だけでも着させたい……私は諦めんぞ」
「メイド服、着させたいのは分かる……が!ソレでも……」
「ふむ、それならいいことを考えた、ウチのメイド服をお前さんに貸そう。そして次私が買いに来た時に着させて見せてくれ」
「……なん、だと……?」
その後少しじいさんと仲良くなった。
感想やらレビューやらお待ちしてます。
では次回にでも……