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#11 浮遊岩

この世界でもっとも非常識なものは、やはりあの浮遊岩だろう。

だいたい岩石などというものが宙に浮くなど、常識的に考えておかしい。しかもその浮遊岩、前回の魔獣狩りの際に遭遇したあのゴーレムが出現する要因になっているとも聞く。僕も実際に、目の前で浮遊岩の破片がゴーレムに変わるところを目撃した。


では一体あの上は、どうなっているのか?


当然だが、浮遊岩の上に何があるのかを知る者は、この地上にはいない。様々な魔術がありながらも、空を飛ぶ手段だけは存在しないからだ。それゆえにこの星の人々でさえ、あの岩のことをほとんど知らない。パレアレス王国の人々にとっての浮遊岩とは、時折あの恐怖のゴーレムをもたらし、しかしそのゴーレムに乗せて貴重な魔石をもたらしてくれる恵みの岩、という程度の存在だ。

技術士官としては、いや、僕個人としてもあの岩の上がどんなところなのか、非常に興味がある。だから僕は、艦長に浮遊岩上の調査の許可を貰うため、艦長室に赴く。


「なあ中尉、そんなもの調べて、どうするつもりだ?」


しかし、この艦長には好奇心というものがかけらもない。ただただ、実利主義の塊、何の利益も生まないものに、労力を割くことには抵抗感がある。


「ゴーレムの出現は、地上にとっては脅威となります。安全保障上理由からも、あの空に浮かぶ岩の調査をすべきではないかと。」

「そのゴーレムを、貴官はたった一撃で倒せる技をすでに見つけているじゃないか。何も脅威となるべき理由は、見当たらないと思うが。」


僕の調査理由に、正論で返すセザール艦長。うう、こんなことなら、ゴーレム戦の報告などするんじゃなかったな。

いや、待てよ?ゴーレムはあの浮遊岩から落ちてきた岩が変異したものだ。そしてあのゴーレムからは、あるものが得られた。ということは、あそこにはもしかして……


「もう一つ、理由があります。」

「なんだ、それは?」

「端的にいうと、金になります。」

「は?金に!?」


僕のこの唐突な発言に興味を持ったようで、若干身を乗り出したように見える。


「しかし中尉よ、たかが空に浮かぶだけの岩が、金になるなどとはとても思えないのだが。」

「はい、ですが先日のゴーレム戦で、貴重な魔石を得ることができました。一方、この魔石は地上では滅多に見つからない。ということは、魔石というものはあの浮遊岩にしか存在しないのではないか、ということです。」

「なんだ、魔石とは?」

「なんでも、魔力を貯めておくための石だそうで、この王国ではかなり珍重されているようです。」

「……その魔石とやらには、どれくらいの価値があるのか?」

「正確には分かりませんが、クレセンシア殿によれば、相当な貴重品のようです。我々で言うところの装飾品向けの宝石類を、遥かに超える価値があろうかと。」


この一言が決め手となり、浮遊岩への調査が許可された。


「お前、やっぱり変わっているな。」


こちらから見れば十分変わり者な女勇者が、第3格納庫で発進準備をする僕に向かってこう言い放つ。


「そうか?4日前のあのゴーレムとの戦いを振り返れば、至って当然の結論だろう。」

「そうだな。魔石がゴーレム経由でしかもたらされない以上、あの浮遊岩にのみ存在すると考えるのが妥当だろうな。私も、興味はある。」


などと言いながら、ちゃっかり人型重機によじ登って、その後席に収まるクレセンシアは、いたく上機嫌なご様子だ。なんでも、先日手に入れたあの魔石を今、職人に頼んで例の聖剣に取り付けてもらっているところらしい。


「あれが魔石の力でさらに強大になれば、西方に誕生したと言う魔族の国など、あっという間に滅ぼしてくれよう……ふっふっふっふっ……あの剣が、どれほど強くなるのであろうな。今から楽しみでしょうがない。」

「楽しみなのは分かったけど、今回はその聖剣なしで出かけるつもりなのかい?」

「当然だろう。ここは私の席だ。それに、出るとすればゴーレムくらいだろうから、聖剣などなくても、この人型重機だけで十分戦えるではないか。」


後席が自分の場所だという主張以外、言っていることは正しい。確かに、ゴーレム相手にはあの聖剣は対して役には立たない。岩が主成分の化け物となれば、炎は効かない。ゆえにクレセンシアといえども、あのゴーレムとまともにぶつかって戦っても勝ち目はない。

パレアレス王国のゴーレム対策でも、正面からの戦いは行わないこととされている。いかなる魔法も剣も、やつには通用しない。だから挑発して崖に誘い込み、そこから突き落として粉々に砕く。それがここの対ゴーレム戦術だという。

それに比べれば、この人型重機には削岩機がある。これがまさかあの岩の化け物に対する決戦兵器になるなどとは、予想だにしなかった。これが元々、人型重機についている理由は、まったく別の目的のためだ。


我が艦は、哨戒活動を主任務とする哨戒艦だ。その活動内容は、敵艦隊の行動を捕捉、追尾すること。だが、単艦でそれを行うのは難しい。そこで、宇宙空間に浮かぶ小惑星などに、レーダーや通信機器を埋め込んで、索敵の補助として使うことが多い。

この人型重機は、その際の工作任務を目的に搭載されている。で、小惑星に機器類の取り付ける際には、その岩石表面を整形する必要があるため、その目的でこの人型重機の削岩機が使われる。

基本的には、岩石の持つ固有振動数を解析し、その振動数を発振し、そこに力を加えると、あっという間に岩石が砕ける。ビームを使う手もないでもないが、ビームは出力制御が難しく、岩を貫いてしまうことが多い。そこで、この削岩機を用いる。

そんな削岩機を持って、今度はそのゴーレムの発生元である浮遊岩に乗り込むこととなった。


「そういえば、哨戒機とやらはついてこないのか?」

「今、2機とも出払っているからな。」

「……そうだったな。そういえば今また、あの深淵の森に出かけているのだな。」

「もはや、人型重機なしでも大型魔獣と戦う戦術を編み出してしまったからな。魔獣狩りは、彼らに任せるとしよう。」


先日訪れた山脈の向こうにある深淵の森と呼ばれる場所に、哨戒機が2機、向かっている。その2機の哨戒機には、技術士官のエリク少尉に砲撃科のブリアック中尉、すっかりコンビが様になりつつあるサリタとコンスタン大尉、それに2人の侍女、2人の魔術師も同乗する。2日前から、彼らはあの深淵の森に出向き、新しい戦術で数多くの魔獣を狩り続けている。

その戦術とは、エリク少尉が編み出したものだ。まず哨戒機により、森を低空で飛行する。そこからロレナのあの闇魔法を放つ。小動物にしか効かないとされていたロレナの魔術だが、それはエリク少尉が作った特殊な杖を使って強化される。簡単にいえば、ロレナの魔術は拡散しすぎるためにその威力が弱まるようで、指向性のあるガス噴出ができれば、大型魔獣にも通用するとエリク少尉は睨んだ。そこで、先端がラッパ型の奇妙な杖を作り上げる。

それを使ってロレナが闇魔術をかけると、その直下にいる魔獣は神経をやられてバタバタと倒れる。それを見計らって、サリタと砲撃科のコンスタン大尉とブリアック中尉が降り立ち、剣と銃を使って気絶した魔獣に止めを指す。それを侍女2人とサリタが血抜きをし、運搬用トレイに積み込む。

なぜイラーナが同行しているのかといえば、彼女はクレセンシアと同じく、魔獣の気配を感じることができる。いざとなれば、彼女の電撃魔術で大型魔獣を倒すことも可能だ。こうして、人型重機などいなくとも、魔獣狩りが可能となった。


「それにしてもセレステのやつ、毎日が楽しくて仕方がないようだぞ。いつも血塗れになって、笑顔で帰ってくるからな。あれほど明るく朗らかな笑顔を振りまく侍女を見るのは、主人(あるじ)としては実に喜ばしい。」

「いや、それ……喜んでいいことなのか?」


クレセンシアはセレステのことばかり語っているが、もう一方の侍女の存在をすっかり忘れいてる。カリサはといえば、未だにいやいや出撃しているようだ。で、凄惨な光景を目の当たりにしては毎日ぶっ倒れて、帰投後に格納庫からクリストフ少尉によって運び出されている。そういえば彼はどちらかと言うと冷淡な雰囲気の男だったが、カリサに対しては実に面倒見がいい。


「重機1番機より艦橋!発進準備完了、発進許可を願います!」

『艦橋より重機1番機、発疹許可了承。ハッチ開く。』


ギシギシと音を立てて、第3格納庫のハッチが開く。真下に開いたその開口部に、僕は人型重機を進める。

ハッチから飛び出すと、目の前にはすぐに地面が見える。この艦の砲身部を丘の上に乗せているため、第3格納庫のしたはその丘の斜面が迫っている。一旦、その斜面の上に着陸し、数歩歩いて我が艦の下を抜けた後、再び浮上する。

そして、近くの浮遊岩を目指して飛ぶ。


『11番艦より1番機。我が艦の2時方向に浮遊岩を確認。距離35キロ、高度3200。全長は800メートルで、速力15にて西に移動中。』

「1番機、了解!これより浮遊岩にアプローチをかける。」


最大速力で向かう我が人型重機。といっても、時速100キロだ。到達まで20分ほどかかるな。

速力15とはいえ、相手も動いている。こちらが向かう間に、随分と位置が変わってしまった。進路を補正しながら、この20分間、必死に追いかける。

ようやくその浮遊岩が見えてきた。高さ3000メートルほどのところを、ゆっくりと浮かんでいる。我が艦の倍ほどの長さの浮遊岩、しかしその分厚い岩壁は、ちょうど我々の戦艦を思わせる。

その岩壁にとりつき、そこから壁沿いに上昇する。そして壁の切れ目、浮遊岩のてっぺんにたどり着く。初めて見る、浮遊岩の上の世界。そこを目にした僕とクレセンシアは、一瞬、言葉を失う。

そこは、まるで石切場で削り取られた岩のように、真っ平らな場所だった。ところどころ雑草が生えている程度で、それ以外には何もない。いや、その広場の中央に、なにやら(ほこら)のようなものが見える。

……(ほこら)と呼ぶのは、おかしいな。あれはきっと、岩か何かだろう。にしても、そこには人工的な香りのする何かにも見える。


「……平たいな……」

「ああ、平たい。」


下から見る浮遊岩は、それこそ険しい山をひっくり返したような姿だ。だからてっきりその上も、同じようにゴツゴツした場所かと思っていた。しかし、意外にもここは、真っ平らな場所だ。

もしかするとゴーレムの(もと)というのは、下の岩から発生するのだろうか?考えてみれば、地上に落っこちてきた岩がゴーレムに変わるのだから、下側の岩が剥がれ落ちて地上に降下し、それがゴーレムへと変化する。そう考えるのが妥当か。

いや、ちょっと待てよ?確かクレセンシアは、ゴーレムを崖に追い込んで倒すと言っていたぞ。崖から転落したゴーレムは、粉々に砕けて再生することはない。しかしここは、高度3000メートル以上の場所。そんな場所から落ちた岩は砕けることなく地上に到達できるというのに、なぜ崖から落とす程度でそのゴーレムは再生不能に陥るのか?

そんな疑問が頭をよぎったが、そんなことを考えている場合ではなくなった。


「おい、前を見ろ!」


真っ平で、何もないはずのこの場所から、むくむくと湧き出すように何かが出てきた。その数、3つ。それはやがて、人型となる。

ゴーレムだ。間違いない。その3体のゴーレムは、この人型重機目掛けて接近する。


「なんだこれは!?どうしてこんなところから、ゴーレムが……」


謎ではあるが、ともかく今は反撃だ。僕は重機の左腕を動かし、削岩機を起動させる。

前衛の1体目に、その削岩機を押し当てる。やつはあえなく、土塊(つちくれ)と化す。続いて2体目、3体目と僕はゴーレムを削岩機の餌食にしていく。ただの茶白色の土塊が、次々と出来上がる。


「おお、やったぞ!しかも3体だ!すぐに魔石を……」


喜ぶクレセンシアだが、ハッチを開こうとしたその時、再び地面から、湧き出すものが見える。

またゴーレムだ。しかも、今度も3体。まるで自動防御システムでも作動したかのように、決まった数のゴーレムが湧き出してくるようにも見える。どうなっているんだ、ここは。


「回収は後だ!クレセンシア、あそこに突入する!」

「あ、あそこって、どこだ!?」


これがもしシステムだとするならば、中枢部が存在するはずだ。その中枢部は多分、いや、間違いなくあの(ほこら)のようなあの場所にあると考えた。

正面の1体に、削岩機を当てる。あっという間に土塊と化したゴーレムには目もくれず、重機を前進させる。両サイドから2体が迫るが、その2体には目もくれずにジャンプでかわし、(ほこら)のような場所に取り付いた。

真四角の岩、その中に、くり抜かれた穴がある。洞窟……と呼ぶには、あまりにきれいに整った四角い穴。これは本当に、天然の岩なのか?

体長4メートルのこの人型重機でも、十分に通り抜け可能なサイズの入り口。僕はそのまま、この入り口に飛び込む。


「……おい、大丈夫なのか、こんなところに入り込んで。後ろからゴーレムが迫って来るぞ。」

「いや、何となくだが、ここにあのゴーレムを制御している何かがあるような気がする……」

「はぁ!?ほんとか、それ!?」

「分からない。だが、倒してもまた別のゴーレムが現れると言うことはつまり、そう言うことじゃないのか?」


僕にも特に何か確証があってやってきたわけではない。だが、明らかにこの人型重機の出現をトリガーにして、あのゴーレム達は現れた。ということはこの浮遊岩のどこかに、侵入者を感知して反撃する仕組みがあるはずだ。

それをつぶせば、ゴーレムの出現を抑えられる。そしてそれは、どう考えてもこの突起物にあるとしか考えられない。

穴に入ると、奥に坂道が見える。それは螺旋状に奥へと続いている。まだ、後方のゴーレムは追い付いてはいない。

しばらく奥へと進むが、ただ真っ暗な洞窟が続くのみ。一方、ゴーレムはといえば、追ってくる様子がない。

もしかして、この洞窟内は全く別のセキュリティシステムが存在するのだろうか……いやいや、ここは人も踏み入れたことのない、天然の洞窟のはず。そんなシステムなんて、存在するはずがない。

などと考えつつも、恐る恐る進んだその先に、ようやく行き止まりが見えてきた。そしてそこには、信じがたいものがあった。

重機の照らすLEDライトで照らされたそれは、2メートルほどの大きな結晶体。赤く光るその結晶体が、岩の中に埋め込まれている。それは紛れもなく、魔石だ。


「うわっ!何だこの魔石は!?こんな大きな魔石、見たことがないぞ!」


クレセンシアの顔が、一気に笑顔に変わる。前回見つけた魔石は拳大の大きさの石だったが、今度のそれは桁違いに大きい。


「おい、アルフォンス!これ、持ち帰ろうぞ!」

「は?これを?」

「この重機とやらを使えば、簡単にできるだろう!さっさと掘り出すのだ!」


まったくこの女勇者め。目の前の宝石に目が眩んだようだ。気持ちは分かるが、こういうものは掘り出したら最後で、何かとんでもないことが起こるというのが相場だ。


「なあ、クレセンシアよ、これを掘り出すのはやめた方が……」

「何を言うか!これほどの魔石、見逃したとあっては勇者の名が廃る!いいから掘り出せ!」


ダメだ、魔石に目が眩んで、人の言葉など聞く気がないようだ……仕方がない、さっさと掘り出して、とっとと離脱しよう。僕はそう考えて、左腕の削岩機を魔石の脇に当てる。

魔石の周辺の岩を砕いていく。ある程度砕いたところで、重機でそれを引っ張り出す。しばらくはゴリゴリと音を立ててなかなか抜けようとしなかったが、ついにその魔石を引き抜くことができた。

そしてその瞬間、異変が起きる。


ゴゴゴゴッと、周囲の岩が揺れる。地震でも起きたように辺りが揺れ始め、壁が徐々に崩れ始めるのが見えた。

ヤバい、やはり何か発動した。僕は慌ててその魔石を担いで、元来たルートを引き返す。そして、あの角穴から浮遊石の上面に飛び出した。

まだ残っていた2体のゴーレムの襲来を考えて、一気に外に飛び出したのだが、そこにはゴーレムの姿はいない。どこに消えたのか?

と、その時、哨戒艦から無線が入る。


『11番艦から1番機!目標、急速に下降中!現在、高度2000!』


何だと……?下降中だって?あまりに大きな岩ゆえに気づかなかったが、確かにこいつは、下降している。この重機はホバリングしているはずなのだが、その重機から徐々に離れていくのが分かる。

これって、まずいんじゃないか?全長800メートルほどの大きな岩の塊が、下に広がる森の上に落下していく。地上に集落でもあれば、大変なことになる。

だが幸いにも、下は森しかないようだった。その森の上目掛けて、巨大岩が落下を続ける。そして……ついに、地面に激突する。

ドドーンという音とともに、周囲の木々をなぎ倒しながら、あの巨大岩が地面に叩きつけられる。力なくガラガラと崩れるその岩山。ついさっきまで、これが宙に浮いていたなどとは信じられない。

高度1000メートルで待機するこの人型重機のところまで、土煙が舞い上がってくる。しばらくの間、音を立てて岩が崩れるのが見える。が、やがて崩壊は止まり、静かになる。

後に残ったのは、この人型重機と、その重機が抱える2メートルほどの大きな魔石だけだった。


「……1番機より、11番艦。浮遊岩の墜落を確認。幸い、人里離れた森の只中に落下した模様。これより降下し、状況確認を行う。」

『11番艦より1番機。了解した、再度の崩落に注意されたし。』


僕は重機を、つい先ほどまで宙に浮かんでいたあの岩の塊に向かって降下させる。真っ平だったあの上面部分は、もはやその原型を留めてはいない。幾つにも分裂した岩が、地面に刺さっている。

その岩の一つに、重機は舞い降りた。


「おい、あれを見ろ!」


クレセンシアが指差す。その先には、なにやらキラキラとしたものが見える。


「なんだあれは……」


目を凝らして、それを確認しようと試みるが、クレセンシアのやつ、勝手にハッチを開けて飛び出した。


「ちょっと!クレセンシア!ダメだって、勝手に飛び出しちゃあ!」


僕の制止など聞かず、まだ崩落の危険の残るその岩の上に降りるクレセンシア。そして、そのキラキラとしたものを拾い上げる。


「やはりそうだ!魔石だぞ!」


拳大の魔石が、あちこちにゴロゴロしている。それを見たクレセンシアは狂喜する。


「えへえへ……これほどの魔石、一体どれほどの力になろうか?これを国中の騎士に配れば……えへへ、最強じゃないか、我がパレアレス王国は。」


ヤバいことをぶつぶつ言いながら、それを拾い集めるクレセンシアに、僕は呼びかける。


「おい!クレセンシア!もうちょっと落ち着いてから拾えばいいだろう!聞いてるのか!?」


宝石に目が眩んだ貴族令嬢のように、いや、実際にそうなのだが、そんなクレセンシアを説得して引き返すのにずいぶんと時間がかかった。結局、2メートルサイズの超大型の魔石と、200個余りの通常サイズの魔石を回収し、帰路についた。

後席の周辺に、山と積まれた無数の魔石に頬擦りしながら、ぶつぶつと何かを呟くクレセンシア。その様子を僕は、心配そうに眺める。やれやれ、早く正気に帰ってくれればいいのだが。

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― 新着の感想 ―
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