8.死がふたりを分かつまで
ライト君の決意表明
姉御の乗った馬車が見えなくなるまで見送ったあと
オレはメインメニューを開いてログアウトコマンドを確認した。
「…さて、そろそろやべーな。もしかして死んだ?オレ。」
ログアウトの文字は選択不可のグレー、未だロック状態だった。
こっち(穴沢2)で約1週間経ったってことは現実では大体3日は経ってるってことだから自宅のベットでそのままだとしたら死んでいる可能性すらある。
運営へDMは送り続けているが返信はゼロ。
さすがに実家だし親に気付かれず死んでるってこともないと思うが放任主義の旅行好きの両親だからそれもあり得るかもしれない。
「最初の街まで来ればロック解除されるかと期待したけどダメか。」
ただ、死んでる人間が体感AR世界で意識だけ生きてる状態ってのは聞いたことがない。そんなことができれば現実世界がひっくり返るような不死技術だ。
おそらく、だが。オレは生きていると考えている。
我思うゆえ我あり、だ。
どういう状態かはわからないが。
帰る手段は2つ、オレが死ぬか、スプリントが死ぬか。
バグの影響もあるのだろうが未だあのチュートリアルイベントが終了していないのがログアウト不能の原因だと思う。
多分、DMも送信出来てないんだろうな。
ただ、その2つの手段は死んでもするつもりはない。
…例え本当に死んでも。
それほどスプリントといるイマという日々が楽しいからだ。
どーしちまったんだ?今まで愛だの恋だの絶対に無縁だと思っていたのに。出会った瞬間からもう二度と離れたくないという覚悟に似たナニカを感じている。
相手はNPCだというのに…。
イロイロ思考したが結局、結論は出そうにないので考えるのをやめ、スプリントが戻ってくるまで言われたように時間を潰すことにした。