表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/47

43.魅せ場を自分で作れるタイプのヒロインPart2


宣言通り第6王子の根回しで先行して

準決勝②が行われる運びとなった。


第5王子アズール VS 王女エアル


「王候補者シングルマッチ

レギュレーションオール!両者準備は良いか?」


何かしらの因縁からかエアルはレギュレーションの決定を全てアズールに委ねた。


結局アズールは守護者を持たなかったようだ。

王位継承的に守護者無しで大丈夫か?とも思ったが

過去には武に長けた王が単独で勇者も兼任した

前例があり問題無いとのことだった。


「エアルちゃん。(ワタクシ)


貴女には前から言ってるから知ってると思うけど

貴女が嫌い。別に貴女が悪いわけじゃないのに…


だから…克服するわん♪ 貴女を」


「…アズにゃん。

ダメです。今日こそ好きになってもらいます。私を」




「「アイムレディ!」」


2人が見合い準備完了を前王に伝え


「よし!王位継承戦準決勝!始めぇぇ!」


試合の幕は切られた。



「「アバンティアストラッシュ!!」」


試合開始直後同時に

同じ構えから放たれた剣撃


「ぶべら!」

2人のカラダが交差した瞬間

エアルのみ吹き飛んでいった。


え!?


エアルのと威力が全然違うんだけど…




グシャ



『「おおーっとぉ!出ました!伝家の宝刀アバンティアストラッシュぅぅ!!!流石アズール殿下!』


『「アバンティア流剣技は一子相伝の秘剣。その正当継承者であるアズール殿下にエアル様は憧れていましたからねぇ。見様見真似で格好だけは完コピしていますが…やはり歴然の差がありましたね」』


…パクリ芸レベルだったんかーい。ストラッシュ!

『穴沢2』PVのエアルの派手な登場シーンを知ってるオレとしてはショックを禁じ得ないのだが…。



「ライト君。今回はどう見る?ああ見えてアズールはこと剣においては天才、神童とまで呼ばれる才覚がある。あの大臣とも模擬戦では勝ちを拾うことすらある腕前。エアルに勝ち筋は無いと私は見るが…」


ふむ。無いな。『索敵(サーチ)』した結果

LV自体にはお互いLV20付近でそこまで差は無いが

コイツ…『剣聖』だわ。

今回もいるか。

まあいるよなぁ固有(ユニーク)職『剣聖』。



『穴沢2』では何人いるかはわからんが

無印穴沢でも『剣聖』ジョブ持ちNPCが数人いた。

基本的にはプレイヤーへの特殊技(スキル)の伝承役キャラクターだ。



そうだな。職業(ジョブ)の差でアズールの勝ち…だな。

でも、


「…もしかしたら、エアルが勝つかもな。」


オレの呟きにまたもニールセンは(いぶか)しがる顔をした。




今の1撃で『ふんばり』瀕死スタン中のエアルのもとへアズールは悠然と向かった。…終わりだ。



「!?」



アイテムボックスからポーションを取り出し

エアルにぶっかけたアズールは舞台中央試合開始位置まで戻って行った。


「それじゃもう一度、もう(ワタクシ)の真似事はお辞めなさい。馬鹿にされている様で反吐が出ます。」


「・・・」


エアルは無言で立ち上がり落っことした警棒を拾い開始位置まで向かいアズールと再度向かい合った。


「…アズにゃんこそ馬鹿にしてるんですか?王位継承戦ですよ。今ので…勝てた。のに。…なんで?」


エアルは納得いかない顔でアズールに尋ねた。


「…王位継承戦?どうでも良いわ…そんなもの。(ワタクシ)の成りたいモノは『王』でも『勇者』でもないもの。ニールお兄様やネロはご執心の様だけど。」


「エアル。貴女、やっぱり嫌いよ。貴女が産まれた時から。申し訳ないけど。ココロを折るわ。劣等感の塊になるまで。(ワタクシ)の持つ劣等感を上回るまで付き合って頂戴。」


「アズにゃん!私が同じ相手に2度負けると思っているの?後悔させてあげる。…私の闘いはコレからだ!」


そういうとまた警棒を逆手に持ちアバンティアストラッシュの構えをとった。


…うん、ダメそうだな。

打ち切り漫画のラストみたいな事言ってるし。

エアル先生の次回作にご期待下さい的な感じになっとる。



「ぶべら!」


「ほべら!」


「あべし!」


「ひでぶ!」


「うわらば!」


「たわば!!」



そこからはもう何を見せられてんの?コレ?ってくらいフルボッコにされてるエアルの処刑シーンが続いた。

…タイトルの伏線回収お前がするんかい!?ってくらいフルボッコにされてるんだけど。


「…はあ、いい加減もう飽きたわ。やっぱりもういっそ殺してしまおうかしら?」


そう言いながらも瀕死状態のエアルの元へポーションを掛けにアズールは向かって行った。


「待って。ポーションはもういい。」


片手だけを持ち上げ手のひらをアズールに向け倒れたエアルはズタボロのカラダをゆっくりと起こした。


「…なに?…なにをしているの?ソレは?」


そしてエアルは警棒を逆手に持ち


構えた。



「死ぬわよ。エアルちゃん。今…ポーションを」


アズールはアイテムボックスから取り出そうとしていた。


「『構え』『溜め』『放ち』『振り切る』


…アズ


…師匠。


私は貴方に成りたかった。


師匠…一度だけ教えてくれた剣を


アレから私は毎日振って、振り切ってますよ。」




エアルの目だけは死んでいなかった。




「もう随分昔ね。懐かしい。

…ううん、(ワタクシ)こそ貴女に成りたかった。

歪んだ成り損ないの自分勝手な願望。自己嫌悪。

…劣等感。

ホントは貴女が大好きなのかも知れない。

だから殺したくない。…もう辞めましょう。

もう(ワタクシ)降参(こうさ)…」


「辞めません!もう一度言います。


  …私の闘いは()()()()だと。」


「!?…あ」


…なるほど、まさか

えーと、1、2、3、…さっきので7回か。

エアルの目を見てやっと狙いがわかった。


勝ちを拾いに行ったか。すごいな。

オレの想像を超えやがった。

オレは自然と口角が上がっていた。


オレはさっきまでコレをヒロイン強制イベントだと思ってエアルの勝ちを予想していた。


『剣聖』が特殊技(スキル)を伝承するのはプレイヤーだけでは無い。一部の主要(メイン)NPC(キャラクター)へもストーリー進行上その特殊技(スキル)を伝承する事は間々にある。

多分『アバンティアストラッシュ』をヒロインへ伝承する関係の勝ち確定イベント。

実際今しがたアズールは降参しようとしていたし。


だが、エアルは自らの手で勝ちにいった。

舐められたまま勝ちを譲られたくないってことだよな。


「…本気なのね。いいわ。その目。

騎士になったんだね。(ワタクシ)のせい…?

だとしたら責任…取らなきゃ…だね。

…本気でいくよ。じゃないとエアルちゃんのほうから(ワタクシ)のこと嫌いになっちゃうもんね♪」




8度目の対峙


コレまでと寸分違わぬ距離


鏡合わせの様な『構え』


同じ呼吸で『溜め』



お互い目を合わせ『放ち』


『『振り切る』』



   「「アバンティアストラッシュ!」」





無職(ノービス)』職業スキルLV8で習得する

『七転び八起き』は同一バトル中7回連続の行動不能(スタン)後の攻撃力を8倍にする。


オレも10年『穴沢』やってるが初めて見るな

このスキルの発動。

はっきり言って7回もの行動不能(スタン)は1回での戦闘では発生しない事案だ。ガチバトルでそんな状態になればすぐ殺される。

もう麻雀で言えば九蓮宝燈出たくらいのノリだ。

まあ今回はアズールの舐めプも手伝ってのことだが。


しかし『無職(ノービス)スキル』の役に立たないクズスキルの代表格を切り札に持ってくるって!

まあ、もともと手札の選択肢が少ないから出たのかも知れないが…


…痺れた。アツくさせてくれる。



オレが脳内で感想戦をしている頃には既に

目の前ではアズールが地に伏してエアルが勝ち名乗りを受けていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ