35.不死偽遊戯
「あ、ああ。…エ、エクス…さ…ま…。」
ドサ…
オレがハビュレットのところまで歩いて辿り着くタイミングで後方でナニカが落下する音がした。
ドサ…
ハビュレットがオレを見ずにそのまますれ違いナニカに駆け寄ろうとして数歩前に出たタイミングでまた今度はナニカが倒れる音がした。
オレが振り返りハビュレットを目で追うと
立派な服を着て仰向けに倒れている首の無いほうの第4王子の元へハビュレットは近づこうとしていた。
「大臣。それ以上近づくと危ないぞ。」
「!?」
それを聞いた、首無しの王子は不自然にその仰向けに倒れたカラダをかかとを軸にまっすぐ起き上がらせた。
「本当に何者だ?エアルのバカに何故お前の様な者が付き従っている?…盗賊ギルドの件もお前なのか?」
草むらに転がっていた首の方の王子がオレに喋りかけてきた。
…肺とか喉とかもう関係無いんかな?声出すのに。
とかどうやって声出してるのか気になり出したが
オレは答えた。
「エアルとは…なんか知らんがあいつが勝手にオレに付き纏ってくるってだけの関係だ。あと盗賊ギルドはムカついたのでオレがブッ潰した。以上。」
「な、なにが?どうなって?」
大臣は目の前でオレが生首とお喋りしている状況に理解が追いつかず混乱していた。
「ハビュレット!コイツは不死者だ!吸血鬼系かな?エアルも軽く操ってたっぽいし。」
そう、オレがコイツを真犯人だと確信したのは王やコイツを復活させた時だ。
王と第1王子は普通に復活のエフェクトの発光が見られたがコイツだけは不自然なエフェクトだった。
多分『抵抗』したのだろう。不死者に『死者蘇生』かけたらダメージ喰らうもんな。そうならない様に抵抗したのが運の尽きだ。
それまで死んだフリしてやり過ごそうとしていたんだろうがバレちまったってぇ訳だ。…まあ、実際死んでるからわかんなかったわな。木を隠すなら森。死を隠すなら不死者ってか?
「凄いな!君は。王と第1王子さえ殺せばあとは残りカスの様な兄弟が馬鹿な権力争いを起こしこの国は自然と衰退するという算段だったのだが。」
首無し王子はゆっくりと草むらまで歩き落ちていた喋る首を拾いあるべき場所へ戻した。
「何故です!?貴方は人間だった筈だ!私は貴方が生まれた時から貴方を知っている!貴方に剣を教えたのはこの私だ!」
大臣がようやく一つになった王子に叫んだ。
王子の首の傷はまるで何事も無かったように消えていた。
「ふはははははは!チカラだよ!私はチカラを授かった!お前にはわかるまい!大臣!いや、勇者ハビュレットよ!オレがどれだけお前に憧れていたか!そのチカラに!才能に!…だがどれだけ足掻いてもオレにはそんなチカラは得られなかった。それがあの方から頂いたチカラによって簡単に。クク、本当に簡単にお前をも遥かに超えるチカラを得ることが出来たのだよ!ククク。はーはっはっは!」
「まさか!あやつが!?名前を呼んではいけないあ奴らが!?ダメです!エクス様!取り込まれては為りません!ヤツらはアバンティアの血を欲しているのです!」
…うわぁ、なんか始まったよ。通常ストーリー。
なーんか知らんがペラペラとどんどんストーリーの伏線貼り始めてやがる。誰だよ?あの方とか。あ奴らとか。アバンティアの血とか。知らんわ。
「…あのぅ、なんかお取り込み中の様なので僕、帰ってもいいですか?」
「…12使徒。その復活のトキは近い!」
「なん、…だと!?」
なん、…だと!?完全にオレをシカトしてバンバン進めやがる!
『運命・宿命システム』フルブーストか!?
「あのー、盛り上がってるとこ申し訳ないんですがぁ。もう12使徒とかそういうのやめてもらっていいっすかぁ?…多いんすわ。コレから12人も出る程で話されてもぉ。そんないっぱいキャラ出ると渋滞するんでぇ。絡むのも面倒くさいんでぇ。」
大臣と王子はオレをチラ見して
ちょっと空気読めやという顔をして
ひとつ咳払いをするとせーのとまた仕切り直した。
「第六天魔王を復活させるおつもりか!」
「今更、気付いても遅いわ!既に封印の一つは解け…
「じゃかしいボケェ!!!!!増やすなっつってんだろ!!!」
オレはブチ切れて大臣ごと王子を空の彼方までぶっ飛ばした。