34.迷宮無しの名探偵殺し事件【後編】
「犯人はお前だ!」
オレに指を差れたソイツは起き上がり様
一直線に王をもう一度殺す為、腰の剣を抜き放ちながら地を這う低い体勢で駆け出していた。
「!?」
その剣はそのまま王の首に届くかというところで別の剣に防がれた。
王とソイツの狭間にギリギリ割り込んだのは
大臣勇者ハビュレットであった。
「何故です?何故貴方が?…エクス様!」
第4王子エクス・アバンティア
コイツがこの事件の真犯人だった。
王はハビュレットがエクスの攻撃を受ける直前にはバロンビが転送魔法で俺たちの側に移動させていた。
…大臣(勇者)と女神様(魔王)の初めての共同作業です。
「何がどうなって?ワシは…?死んだのでは?」
生き返ったばかりの王は状況が飲み込めずにいた。
「エアルの親父さん。運が良かったなオレがいて。
オレが魔法で復活させた。15分以内じゃないと復活出来ないから間に合って良かったよ。」
「パパぁ!パパぁ!!」
エアルは近衛兵から解放され王に泣きながら縋りついた。
大臣と第4王子はツバ競り合いのままお互い見合って膠着している。
「そしてダイイングメッセージ。
『AR』に改竄されてたけどしっかりオレには届いたぜ!王様!
…『4P』って書いたんだろ?『P』はPrinceの『P』。つまり第4王子が犯人というわけだ!」
オレはもう一度ビシッと第4王子を指差し
ホントは全然違う方法でコイツが犯人だと気付いたんだがダイイングメッセージから名推理したことにしてドヤった!
「えっ?違うよ。ワシが書いたの『Ⅳ(フォー)』だよ。
…第4王子で『Ⅳ』。」
「・・・。
…オレは勢い良く突きつけた指を力無く下ろし
俯いて両手で顔を塞いだ。…カー!恥っず。
なるほど、そうか。確かに王様が倒れてた方向とは逆に書かれてたわ。『AR』の血文字。
『Ⅳ』⇒『AR』…なるな。逆にすると。改竄出来る。
…クソ!黙ってろよ!このクソ親父!推理違ってても結果犯人は合ってるんだからさぁ!もう!わざわざ言うなや!なんだよコイツ!もう生き返らせなきゃ良かった!こんなヤツ!くぅぅ!
オレが推理を間違えて悶えていると対局が動いた。
「クソっ!『睡魔』!」
全体睡眠魔法を第4王子が放ち
執務室内にいた全員が強烈な睡魔に落ち入りその場に崩れていった。
「「「『抵抗』!」」」
睡魔に抗ったのは3名
オレ、大臣、バロンビ以外はそのまま昏睡異常でスタンした。
…子供魔王達もLV的には抵抗出来ただろうに多分もう夜だし普通に眠かったのか抵抗せずに床でスヤスヤおねんねしていた。
「チッ!」
大臣が一瞬、睡眠魔法でチカラが抜けた間隙を突いて第4王子エクスは近くの窓を突き破り逃亡した。
大臣は追うのを一瞬、躊躇った。行動不能状態の王達を残して追って良いのか?という反応だろう。
「バロンビは残ってみんなを回復してくれ!俺たちで追うぞ!大臣!」
即座に出したオレの指示に2人はうなずきそれぞれ動き出した。大臣はオレとバロンビを信頼しているとその目で伝えてきた。
直ぐにオレとハビュレットはエクスが飛び出した窓へ同じく身を踊らせた。
執務室は前に来たエアルの部屋より城の上層部分にあった。
窓から飛び出して空中で外を確認すると真下の広い庭園に逃げたエクスの姿を発見した。
自由落下+フィールドモードの移動スピードだとエクスとの差が縮まらずこのままだと城の外へ逃げられるのでオレはアイテムボックスから相棒を取り出して投げた。
ライト:「聖剣(雷)」⇒「投げる」
聖剣は逃走しているエクスの目の前の地面に突き刺さり間髪入れずに窓から飛び出したばかりのオレが聖剣の柄を持った状態で出現した。
「クソっ!なんだ?貴様!何者だ?エアルの従者か?」
動きを止めたエクスは再び腰の剣を抜き放ち構えた。
「エクス様!ここまでです。大人しく投降して下さい。」
ハビュレットもこの場に追いつきオレとエクスを挟むカタチを取ろうとしていた。
「…舐めるな!」
ソイツは城の出口側である前方を塞ぐオレに向かって突進して来た。
「はい、おしまい。」
オレは地面に突き刺さった聖剣を抜き様
近接範囲に入ったエクスを一閃し交差。
そのままハビュレットの方に歩きながら聖剣に付いた付着物を振り落として納刀した。
「!?」
その時、大臣が見たモノは
月明かりの庭園の宙に舞う第4王子の首だった。
お読み頂きありがとうございます。
解答編、如何でしたでしょうか?
『4P』でも『Ⅳ』でも『第4王子』が真犯人と推理された方は正解とします。
今後とも宜しくお願いします。