16.盗賊ギルドを、ぶっ壊す!
もうもはや、
ただの八つ当たりでしかないのかもしれないが
オレは盗賊ギルドをぶっ壊すことにした。
「盗賊ギルドを、ぶっ壊す!」
どこかの政党みたいなスローガンだが
アジェンダとしては2つ
ひとつは「オレの可愛いスプリントをプリンちゃんと呼ぶ奴を本日中にゼロにします。」
そしてもうひとつは「今後、プリンちゃんと呼んでイイのは俺だけとします。」以上、解散。
…はぁぁぁぁああああぁぁぁぁ。
プリンちゃんって呼びたかったなぁ。なあ、おい。
「痛いおい!やめやめやめ痛いいあいいやいやいやい
やいやいやい取れる取れるもう引っ張らないでくでぇ痛い痛いいあいい千切れるぅちげれりゅからいああああいいあああいいぁあああいい」
「…で、次は?」
「み、みぃいぎぃぃぃぃぃぃぁあああいいぃいいいぃぃ!!!だめだめとととれりゅぅぅっぅみっみぃぃぃ!!!!」
とりあえず、そもそも盗賊ギルドの場所がわからないので、街の出入り口の城門に行き、
このクソチクリ門兵野郎にTUEEEしてこうして耳掴んで引き摺って盗賊ギルドまで王都の街道を案内してもらっている。
…はぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ。
ホントは姉御とのデートで街を案内してもらうつもりだったのにチクショウ!千切るぞ!
着々と盗賊ギルドまでの道なりは進んでいたが
ただ、なんか周りはバタバタわーわーしていた。
「お、おい止まれ、止まれ!止まれ!…止まらなぁぁぁーーーい!!」
「この、無駄な抵抗はやめて、大人しく捕まりっうわぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁ!!!」
「もう無理ぃ!何回近づいてもなんか優しめにフワって吹っ飛ばされるぅぅぅ!!!」
「おいっ!騎士団はどうした?早く騎士団に応援を要請しろ!」
「ダメです。騎士団まったく応答ありません。警ら隊へは連絡が繋がり現在コチラへ急行中です。」
「クソ!警ら隊(姫さまファンクラブ)かよ!まあいい!さっきの突然のカミナリといいなんなんだ!」
城門にいた他の門兵やら街にいた衛兵やらがワラワラと取り囲みオレの行動を止めようと躍起になって頑張っている。まあ、無関係な人達をTUEEEしちゃうのもなんなので『風魔法(弱)』で向かってくる奴らを千切っては放り投げ千切っては放り投げと力士のぶつかり稽古みたいに繰り返し、もう無双ゲーみたいに湧いてくるのを次から次へとブッ飛ばしている。
「ら、らいとくんっ!?」
大通りから裏通りに入りしばらく進むと
姫警備員が王立警ら隊を引き連れやってきた。
「…よう。」
姫さま危ないです!近づくのはおやめ下さい!とか爺さんや隊員に止められているがエアルはお構いなしでグイグイ詰め寄って話しかけてきた。(ちょ、近っ!?相変わらず距離感おかしいぞ。このヒト。オレじゃなきゃ絶対勘違いするわ。惚れてまうやろ!普通。ヒロインかよ!?あ、ヒロインか。)
「え〜っと、ナニ?、してるのかな?」
聞きづらいことをストレートに尋ねてきたのでストレートに返答することにした。
「・・・
ちょっと、いや、ものすごく嫌なことがあってな。
ちょっと盗賊ギルドをブッ潰しに行くところだ。
…で、どうする?…止めに来たんだろ?」
「・・・
一瞬ぽかんとした表情をしたが
エアルはしばし空を仰いでジッと見つめてからオレの顔を同じようにジッと見つめ口を開いた。
「…らいとくん、私は貴方には助けてもらった恩があるし、今の私には貴方がイマのやっている事の良し悪しの判断が付かない、ので……見届けさせて欲しい。
…立場的にはホントはダメなんだろうけど何故だか貴方をひとまず信じてみたいと思います。」
「…その上で、貴方を、らいとくんを止めなくてはならないのなら全身全霊を掛けて貴方を止めます。
…でも、あっという間にお空のてっぺんまで行っちゃうヒトを
…私に、止められるかは…わからないですけど…。」
「・・・。」
「…でも、責任は取って下さいね?」
「…わかった。」
真剣な表情で言葉を選びながらオレへそう語りかけたあと、すぐに警ら隊や門兵、衛兵に指示を出し、オレへの攻撃を辞め、距離を取るよう少し後退させた。
オレはそのまま門兵野郎を引き摺り雑居ビルが立ち並ぶ裏街のボロいビルの前にたどり着いた。
「ココ?」
「そ、そ、そうですぅぅぅ。こ、ココが盗賊ギルドのアバンティア支部ですぅうぅぅぅう。だ、だから、もう、もぉはなぢでくだざぁいぃぃ。これ以上イったら耳がぢぎれちゃいますぅぅ。」
「…あ”?まだ半分はくっ付いてっし大丈夫だろ?
耳はあともう一個あるし。」
(…どうせそのくらいのキズ安い薬草で治るだろ。)
耳からパッと手を離すとヒィィとか言いながら耳を押さえ這いつくばり
「こ、こんなことしてお前。終わりだ。終わりだぞ。
バイパーさんに、こ、殺されるだけだ。ざまぁみやがれ!」とか喚きだしたので
「バイパーって誰?」と
むんずとうずくまってる門兵野郎の襟首を捕まえて尋ねる。
「ヒィィ、す、すいましぇぇん!ボスですぅ!盗賊ギルドアバンティア支部の支部長バイパーさんですぅぅぅぅ!!腕っぷしでのし上がった叩き上げで超こぇぇぇんすようぅぅぅ!!」
「姉御をやったヤツか?バイパーって?」
「あ、姉御?ああ、プリンちゃんっすか?そーいやなんかボスに口ごたえしてしこたまボコられたって聞いたっスわぁ。アホっすね。プリンちゃん。」
「…ほう、プリンちゃん、ねぇ。そっかお前もかぁ。…そっか、そっか」
(もう解放してあげようと思ったのにアホだなぁ。)
「えっ?…なにを?…
オレはおもむろに門兵の襟首を掴んだままスタスタと盗賊ギルドのほうへ駆け出した。
そして、なんだか急にボーリングがしたくなったので門兵を大きく振り上げ盗賊ギルドの正面玄関に勢いよく投げ飛ばした!
「ぎにぃあぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!!!」
モンペは正面玄関ど真ん中を突き破り中にいたゴロツキ10名ばかりをスカパーーーーン!!と吹き飛ばし奥のほうに消えていった。
「……すっとらーーーーーいく!!!!」
オレはキッチリ、フェニッシュポーズを決め
これからまるでハイタッチでもしに行くように
テクテクと軽快にギルド内に踏み込んでいった。