14.プリンちゃん
待ち合わせ場所には既にスプリントの姿があった。
「姉御ぉ!すびばぜん!!通常シナリオどころかサブイベントまで踏んじゃいまして色々立て込んでて姫やら騎士団やらハイブリッドエルフやら片付けてたら遅れてしまいましたぁ!誠に申し訳ありません!!」
そう、エアルイベントのあと城から脱出するのに騎士団を殲滅したり行き倒れた変な混合エルフに殺されかけたり色々あったんだがもう全部オレTUEEEで端折って急いで姉御の元へ駆けつけた。
だが集合時間にはだいぶ遅れてしまい姉御と合流出来たのはもう昼中になっていた。
オレは姉御に再開するや否や開口一番平謝りした。
「…ん、大丈夫だ。ライト。オレもさ、色々ゴタついて、今来た、トコ、だから…。」
良かった。俯き加減でフードに顔が隠れて表情は見えないが怒ってないみたい…てか?ん?
あれ?元気がない。姉御?
「!?」
なんか…
「姉御っ!!」
変だ!!
オレは姉御のフードをひっぺがした!
「おい、やめっ!」
「・・・。」
「…それ…ナニ、どうし…?え?…姉御?誰に?コレ!誰にやられたんだよ!?どーしたんだよ!!これは!!!!」
姉御の顔は見るも無残に腫れ上がっていた。
右目は開けないほど膨れ上がって周りは青黒いアザになっていた。頬や顎も輪郭がおかしくなるほど真っ赤に膨れ上がったうえ口の周りは血で滲み鼻血はまだ止まっていないようでコクコクと落ちないようにオレに気付かれないように飲み込んでいた。
「…ライト、コレはケジメだ。オレの問題だ。お前は手出し無用だ。これ以上聞くなら兄弟の杯は返上させてもらう。悪いが今から早々にアジトに引き返すぞ。」
姉御は、スプリントは真っ直ぐオレの目を見てそう言った。
「・・・でも。」
「ほんと悪いな。ライト。…街、案内するって約束したのに…。」
有無を言わさずそういうとオレに背をむけ街の出口へ歩き始めた。
気が狂いそうな気分だ。オレの姉御を、オレのスプリントを、オレの理想を、オレの天使を、オレの一番を、オレが命を賭しても共に生きると決めたヒトを。
ヨロヨロ歩く姉御の後ろをナニも言えずとぼとぼと歩いていると、ふと自分の手に痛みを感じた。
気付けば拳を千切れそうなほど握り込んでいたようで、オレの手からは血が滴り溢れていた。
「!?」
街の出口付近で明らかにその筋の巨漢3人に囲まれた。
「おープリンちゃん。コイツかー?新入りってやつはぁ?待たせやがってクソが。コロスぞ!」
「ほんとにガキじゃねーか?だが情報通りだ。ちゃんと持ってやがる。クソが。コロスぞ!」
「なんだぁ?こういうナヨったヒョロガキが好みなのかぁ?プリンちゃんよぅ?そりゃオレらにツレねーわけだわ!ヒャヒャヒャ!クソが。コロスぞ!」
「お、お前ら、約束が違うぞ!手打ちにしたはずだ!お前らのボスと話しは付いてるんだぞ!」
姉御は取り乱して巨漢どもに掛け合っていた。
「あ?手打ち?馬鹿かてめぇ?ありゃボスのストレス発散だろうが!勝手に勘違いしたんだろ?テメェが?」
「そうそう、おいさっさとガキ沈めて持って帰ろうぜ!ボスは気が短けーからよ。とばっちり喰らうのは御免だぜ!」
姉御はパンパンに腫れた顔を蒼白くし必死になって食い下がっていた。
「やめてくれ!ライトは関係無いじゃないか!オレが下手打っただけだ。」
「だからボスはテメェで持ってこいっつったんだろうが!ボケが!テメェのせいでオレらがわざわざ出張る羽目になったんだろうが!」
姉御は巨漢共に遜っていた。
「やめっ、やめて、やめてください。コイツには手を出さないでください。お願いします。もう一度ボスと話しをさせて下さい!」
「馬鹿か!オレ達ぁボスにテメェのアト付けてガキからブツ奪ってこいと言われてんだよ!下手打ってオレらまでテメェみたいなツラになりたかねーんだよ!クソが!」
「ガキぃ!とりあえずそのぶら下げてる武器寄越せや。うちのボスが御所望なのよ?素直に渡せばよぉ?プリンちゃんよりはマシな殴りかたしてやるぜぇ?ぎゃは」
姉御は絶望した表情でオレに必死に語りかけた。
「ご、ごめん。ライトぉ。断ったんだ。オレは、ボスに、オレ、ライトと出会う前に手下を全員失っただろ。それの落とし前着けろって。ココに入る前に門兵いただろ?アイツはギルドの息がかかった構成員なんだ。アイツ、ライトが下げてるその剣をボスに報告してた。レアアイテムだって。ボスはソレを持ってくれば手打ちだって言ったんだけど…。」
「・・・。」
姉御は血と滲んだ涙で悔しそうなくしゃくしゃの顔で…
「…オレは、出来ない!そんなことは出来ないって断ったんだ!そしたらオレを殴って仕舞いにしてくれるって。や、約束
…逃げ、逃げてくれライト。
コイツらはオレが引き留めるから、早く。」
「・・・全部・・・」
「おい!テメェ!逃すわけねーだろ!」
巨漢達が痺れを切らして俺たちに襲い掛かって来た。
「・・・オレのせいじゃないか・・・」
オレがスプリントをこんな目に合わせていたんじゃないか…許せない。自分のことを許せない。自分のした事を黙って、ウソをついて騙してスプリントを傷付ける結果に
スプリントがオレを守るように巨漢達に立ち塞がった。
絶対に後ろへは通すまいと小さなナイフを抜いた。
「ライト!逃げろ!」
バトルモードへ切り替わる。
「・・・」
ライト(LV99):「聖剣(雷)」⇒「使う」
抜刀した瞬間。光。刹那、雷音。