聖女を召喚したらバカップルがやってきた
やっぱりバカップルは自分たちの世界しか作りません。
「俺は聖女と結婚するんだ!」
ふわりと朗らかな風が吹き抜ける美しいバラの庭園の真ん中で、今年取れた特産品の茶葉で作られたケーキと紅茶を飲む。王妃様もこのバラの庭園でのお茶会をたいそう気に入っていて亡くなる少し前まで一緒にお茶会をしたものだ....。
そんな思い出深い庭園でそう宣言してきたこの男こそ、私が慕っていた王妃様の息子の王太子であり、私の婚約者...いや、元婚約者である。
「ええ、そうですね。あなたの長年の夢ですものね......それで?その聖女様は一体どこに?」
この問いかけも何回目だろうか....
この馬鹿とは私が産まれる前からの婚約で18年の付き合いだ。
そして、このアホの夢は昔から一切変わらずに「物語の聖女様と結婚して勇者になる」である。
周りの大人達はそんな可愛らしい子供の夢を聞き、微笑ましいと笑っていたものだが、まさか18になった今でもそんなことを言うとは思わずに大人たちは絶賛頭を悩ませ中である。
「ふっ!聞いて驚け!今日の聖女の召喚は絶対に成功する!」
「それはそれは....でも、おかしいですね?毎回そのような事を聞いている気がするのですが?」
「こ、今回は成功するんだ!今日は5年に1度の海月の日だ!前回の反省を踏まえて宮廷魔導師たちと完璧な体制をとったんだ!」
「そうですか、それはよかったですね」
話に区切りをつけ紅茶に手をつけようとすると、勢いよくテーブルに書類が置かれた。その反動で紅茶が零れてしまった。
はぁ....とため息を着く。
それに気づいているのか居ないのか、(多分後者だと思うが)話を進める。
「だから!お前とは今日限りで婚約解消だ!書類を置いておくから名前と血判しておけよ!」
「陛下から許可は貰っているのですか?」
そう尋ねていると、どこからか控えていたメイドが颯爽と倒れたティーカップを新しいものに変える。神業である。
「許可などなくても、聖女が召喚されれば婚約解消だ!」
ちゃんとやれよ!
と、捨て台詞を吐いて立ち去っていく王太子の後ろ姿は、なんともまあ.....
嵐が過ぎ去ったのを感じふぅと息をつく。
すると横から
「お嬢様、やりましたね!」
新しいケーキを切り分けながらメイドが喜ばしいと話しかけてくる
「ええ、やっとよ」
こちらも喜びが隠しきれずに口角が自然と上がる。
やっとあのバカから開放される!この18年あのバカのせいで何から何まで最悪だった!それを!やっと!!
聖女なんて召喚出来ないかもしれない、でも離縁状まで貰えればこっちのものよ!!
それに.....
するとその心情を読み取ったようにメイドは
「早くあの方へお手紙を書かなければいけませんね!!お嬢様!」
「ええ....」
そんなメイドの言葉に答えた令嬢はぽっと頬を染めた恋する乙女の表情をしていた。
それをみてメイドはとても嬉しくなったのだ。
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その夜
いつもよりも爛々と光る月を灯りに彼へ手紙を書いた。
学園で初めてあった彼に「あんたはそれでいいのか」といきなり言われた時は「なんて失礼なやつだ」と怒ったものだがあの言葉のおかげで私はどれだけ理不尽な思いをしていたか気づけたし、それに
それに.....彼に本当の愛を教えてもらった...
そんな恥ずかしいことを考えながら書いた手紙はいつもよりも多くて、自分がどれだけ浮かれているのかを感じて恥ずかしくなり、枕に顔を填めた。
彼は今何をしてるだろう.....時差があるから手紙が届く頃にはまた会えるかしら.....
そんなことを考えながらうつらうつらとしていたその時
ドォーーーン!
城全体が揺れるような衝撃を感じて浅い眠りから叩き起された。
「な、なに!?」
慌てて起き上がり窓の外を見ると爛々と輝いていた月がさっき見た時よりも大きくなっていた。
それをみて今朝の王太子の言葉を思い出した....
「まさか....ほんとに!?」
あわてて立ち上がりネグリジェの上にカーディガンを羽織りながら廊下を駆け出した。
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薄暗い地下室の中には小さい白い光の玉を円で囲むように10数人の魔道士が満身創痍の状態で汗を拭いながら立っていた。その後ろには高みの見物のようにあのバカがいる。
「王太子殿下.....これは?」
「ああ、来たのか!みろ!!聖女の召喚に成功したんだ!」
すると、バカの言葉に反応するように円の中に白い光が一気に輝き始めた
ゴクリとその光景に何も言えずに立ち尽くしていると、光の玉は目の前が見えなくなるほどに輝き、光が消えるとその場には黒い髪をした美しい少女が座り込んでいた.....
黒髪の男性の膝の上に。
「おお!聖女!........は?」
と駆け寄ったバカもそれに気づき立ち止まった。
周りの魔道士は力を使い切ったのか倒れており誰もこの状況を説明できるものが居ない......いや、こんな状況説明できるのだろうか?
「え!?なに?ここ!たーくん怖いよぉ!!」
黒髪の美少女はそう言いながらたーくん?らしき人に抱きついている。
「大丈夫だよ、あーちゃん!何があっても俺が守るから!」
そう抱きつかれたたーくん?は、あーちゃん?を抱きしめ返している......
バカは固まっているようで一切動かない。
仕方ないので頭を叩く。そう、仕方ないのだ。
「殿下!しっかりしてください!」
「あ、ああ....」
意識を取り戻した殿下は顔を引きつらせながら聖女らしき美少女に近づく。
「聖女よ、よくきたお前を私の伴侶に迎えよう」
最低....
と、思いながら私は関わりたくないので成り行きを見守る。
「うわー何この人、めっちゃイケメン!!え?伴侶?なにそれ?私が結婚するのはたーくんだよ?」
殿下が差しのべた手を一瞥し興味が無いのか、たーくんとやらに抱きつく。殿下に見せつけるように。
その動作に怒った殿下は男性を睨みつけた。
「私は勇者だ!聖女は勇者の伴侶なんだ!そこの男、聖女から手をはなせ!」
と、バカは剣を抜き男性へ向ける。
さすがにまずいと思い私が声をかけようとすると
「殿下!いけません!その方は勇者様です!」
と、さっきまで力尽きていた魔道士が立ち上がり殿下を止めに入る。
「な、なに!?」
「見てください!王家の剣が反応しています!」
バカが持っている剣を見てみると剣の柄に埋まっている宝玉が赤く光っている。
「そして文献には聖女と共にくる男は勇者だとも書かれています!」
「え?俺が勇者?」
と、呆然とたーくんが言っている。
それに反応した少女はすかさず
「え?私は聖女なんですよね?たーくんが勇者ならそこのイケメンが言ってように伴侶になるのが掟なんですか?」
この少女、話聞いてなかったみたいなのにそんな都合のいいところだけしっかり覚えているのね....
その問いに魔道士は
「ええ、そうです!奇跡だ!まさかこの国に勇者と聖女が同時に召喚されるなんて!すぐにこの国で婚姻の義をあげなければ!」
大はしゃぎである。
その言葉に2人は
「えー!婚姻の義だって!結婚式できるのー?」
大はしゃぎである。
スピード解決である。
そんな訳の分からない空間を虚ろな目で見つめる殿下は剣を落とし呆然としている。
そんな殿下に私は近づいていき
「殿下、おめでとうございます。念願の聖女様は召喚されましたね」
その言葉に殿下は私を見ると、顔を真っ青にさせながら「あ、あの...いや...」
と、言葉をつまらせている。
「殿下、安心してください。しっかりと離縁状は陛下にお送りしましたから」
安心してくださいと満面の微笑まれ、ほっとした表情の殿下は次の言葉で一気に青ざめ、崩れ落ちた。
そんな殿下を放っておき
とりあえずこの場を収めようと、満面の笑みで私はまだはしゃいでいる2人の方を向く
「ようこそ、聖女様勇者様。あなたたちが現れるのを心待ちにしておりました」
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そんなこんなで召喚されたバカップルは婚姻の義を上げ後にこの国に降かかる災いを跳ね除けこの国のシンボルになり、思った以上に気の合う聖女様と殿下の婚約者は大親友になり、その後色々あった殿下の「元」婚約者は本当に愛する人と婚姻の義を上げ、その場には大親友になった聖女様も参列し、それはそれは盛大に行われた.....というのは遠くない未来の話です。
ちなみにこのバカップルたちは高校卒業と同時に結婚しようとしていて互いの両親からまだ早いと止められていて駆け落ちも考えてました。はい、バカです。
でも、恋愛に関してバカなだけで人としては通常です。
公爵令嬢とは恋バナに花を咲かせて楽しそうにやってます。
このお話はプロローグ的なノリで書いたので、本筋の部分は自粛が続き暇になったら書きたいなーと思ってます。




