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僕と死神の14日   作者: 姥妙 夏希
2/2

Day 2

「...はぁっっ...!!」


眼が覚めると、カーテンからうっすら光が漏れている。


6:30AM、とベッドの横のデジタル時計に書いてあるのを確認してから、僕は起き上がる。


昼から...って言っても、まぁ夕方に近かったけど...こんなに寝たのなんて久し振りだなぁ、と首を左右に振りながら、そう考えた。


そういや昨日、なんか死神が出てきて死ぬよって宣告されたけれど...。


部屋の辺りを見回しても、誰もいない。


もしかしたら、アホらしい夢だったのかもしれない。


そんな淡い期待を押し潰すかのように、黒髪の女の子がベッドの下からにゅるりと出てきて「お早うございますっ♡」と叫んだ。


...夢じゃない。


「ん?そんなに見つめてどうかしました?可愛いって?知ってますよそれぐらいっ!」


いや、そういうのいいから、ほんと。


「どうかいたしましたかぁ?なんか、嫌そうな顔してますよ?夏バテ??」


...理由はお前しかないだろ。


ツッコむのにも疲れたなぁ、ということで、着替えをしようと服を脱いだ。ハンガーにかけてあったワイシャツに手を伸ばす。と思ったら、ワイシャツがいきなりパッ、と消えた。


「ワイシャツってぇ、なんでこんなに透けやすいんですかねぇ」


莉李羽亜がワイシャツをくっしゃくしゃにしながら頭から被っていた。


それ、僕のだよね?さっき消えた???


するる、とシャツの襟元をめくり、


「どーぉ?興奮する???」


などとほざいている。


...悪いけど、お前の茶番に付き合ってる暇はないんだよ!!!


大体なぁ、そんな貧相な体つきの見た目は全然幼い少女に興奮したら僕は変態以外の何物でもないだろ!?僕を犯罪者予備軍に仕立て上げる気か?


僕はもっとこう...高校生が普通に好きそうな肉付きがいいの!!!


純粋に!!どっか行け!!!!


「ちぇぇーっ、つまんないのぉ...そんなんだから未練がないんだよぉ...っていうか、もう少しで7時半?朝ドラの時間じゃん、よし子の恋愛関係気になってたんだよねッ!!」


うるっせぇ、なんで死神に未練がないとか指摘されなきゃいけないんだって、ってかよし子って誰だよって...。


...あーーーーーーーーーーーっっっっっっっっ!?


「おい、今『もう少しで7時半』って言わなかったか?」

「ほえ?言ったけど??」


恐る恐る時計を見ると、7:29AM、と書かれていた。


ああああああ!!

やっばい!!!!!!!


「莉李羽亜!!!お前のせいで遅刻するぞ!?」

「えぇえ、なぁに言ってるんですかぁ、学校なんて始まるの8時半とかですよね?もうっ、私のせいにしてばっかだったら、余裕で告訴案件ですよ!?!?」


お前は余裕で迷惑極まりない露出狂案件だっつうの!!


「あのなぁ、一瞬で学校着けるとか思ってるわけ!?俺の学校は1時間15分かかるの!!7時に出ないと遅刻するんだよ、ばぁか!!!」


「ぷすーっ、人の子等って瞬間移動も出来ないし大変ですねぇって...馬鹿ですって!?寝言は寝てる時に言うもんなんですよ!?この私が馬鹿なはずないでしょう!?」


「あーあー、九分九厘馬鹿だな、九分九厘って分かるか!?99%、ってことだよ!!」


そこで彼女は、むむむっ、と肩を震わせると、「じゃあこれなら!?」と両手を差し出した。


「...は?」


次の瞬間、俺は空の上にいた。



***



「...えっ??あの...は?」


ひゅるるるる、と空を切る音。


今まで自分を取り巻いていた、棚やら机やらがあったごちゃごちゃした部屋はなくなり、代わりに広い青空。下を見ると、住宅地があるっぽい。


そこでやっと、自分は今落ちてるのだ、と理解した。


「はっ...えええええええええ!?」


いやっ...なんで!?


「あっ、今、なんでって顔してますねぇ」


落下する自分に、ふよふよと漂いながらついてくる莉李羽亜。


空気抵抗?っていうの?なんか風が強くてうまく喋れず、こくこく頷いたら、彼女はにこっと笑って、「魔法ですよ、ま・ほ・う!」と叫んだ。


「つまりぃ、いわゆる瞬間移動の魔法を君にかけたんですよ!どーお、伊織君、私馬鹿じゃない」


...最後の語彙力の無さ、完全に知能レベル低そうな奴のそれだったぞ?


ていうか、今落ちてるんだよ?

僕、死んじゃうよ??


「伊織君、なんか言いたげだねぇ...こーゆー時は心を直接読んでっと...え、死んじゃうの?」


うん、このままだと死んじゃう。


「...まじ?」


まじ。


だって落ちてるんだよ??

そしたら、朝からスプラッタだよ???


12日後に死ぬ前に死んじゃうよ?


「...それでもよくな〜い?」


そしたら未練たらたらだから覚悟しとけ????


「えぇぇえ、困るぅ...じゃあてぃやっ!」


ぼふぅんっ!と音がして。


...音がして?


何にも起きない。


速度を増して、落下していく僕。


やばいやばいやばいやばいやばい、まじで死ぬ!!!!


あああ、なんか通行人が真下に...ぶつかる!ぶつかるって!


頭が色んなことでパニックになりながら下へ落下していく。真下には一人の女子高生が歩いている。待って待って、ぶつかるから!!!!!


と思ったら。


女子高生が何のことか両手をスッと前に伸ばすと、落ちてきた僕のことをお姫様抱っこをするように抱きかかえた。すとん、と彼女の腕に僕の胴体が落ちる。


「...大丈夫ですか?」

「えっ、あっ、はい...」


なんで抱きかかえッ...ってか誰...どういうこと...??


情報量に耐えられず、混乱した僕を見つめる彼女を見つめ返した瞬間。


パァッ、と彼女の体は激しく輝いた。



***



「「...え???」」


空中で、互いの眼がかち合う。


「「...ええ...???」」


ワンモア。


次の瞬間、僕の体は地面に引き寄せられるように尻から落ちた。硬いアスファルトに投げ出され、込み上げてきた痛みを口を結んで我慢する。


「すっ...すみませ、ん...!?」


先程僕を軽々と抱きかかえた彼女と打って変わって、どこか消え入りそうな声で眼前の女子高生が言葉を紡ぐ。


こういう時、なんて言えばいい??


こちらこそ、空から落ちてきてすみません???


「っていうか...」


なんか。

この人、発光してない?それも、体の内部から、パァ、って。


...生物発光か、蛍の生まれ変わり的なあれ...???


「んおぇ?あれ、この人超光ってない??光合成???」


スイ〜、と何事もなかったかのように空から死神が降りてくる。


おい!!!お前のせいで散々な目にあったんだぞ!!こんなんじゃ余命全う出来る前に死ぬわ!!!!


「...あれ??この人...」


心の中で抗議する僕を見ながら、ひとり言を呟いたかと思ったら、徐々に口角を上げていく馬鹿死神。なんだよ、と視線で言うと、ニヨニヨしながら彼女は口を開いた。


「これですよ、これ。フォーリン・ラブ、ってやつ」


胸の前でハートを作りながら、彼女がそう言った。


...なわけないじゃん...。

好きな人が光って見えるとか、マイケル・ジョーダン...。


...。


『未練のありそうなものに、反応して光る魔法です』


...んん?


『って言っても、光自体はすぐに無くなったので、そこまで未練のあるものじゃないんですねぇ』


...んんん???


女子高生は、未だ強く光っている。


「?...あの...」


訝しげにまばたきをする女子高生。


僕は一礼をすると、待って、と叫ぶ女子を置き去りにして、一目散に走り出した。



***



「なんでぇ!?なんで未練があるのに、走って逃げたわけぇ!?!?」

「う、うるさいよ!!」


何故か語尾が『よ』になりながらも、何とか反論する。


いやだって、ねぇ...?


初恋?っていうの??ってか、まだ恋に恋する高校生男子が???よりによってこんなことで恋に落ちるとか?????


すっごい焦るだろそれ...。


まだ僕、何なら理解ある方だってェ...死神とかすぐに受け入れたしさァ...。

でも、これはちょっとまた、別問題じゃん...?


「...ってか、息、切れてますよ。無理しすぎ〜〜」

「ハァ...ッ。うるせぇ、なッ...!!」


悲しいかな、運動能力皆無の僕にとっては、全力疾走しながら話すとか、夢のまた夢そのまた夢だ。


「チキンハートだなぁ。揚げてフライドチキンにしますよ。ストゼロと合うのなんのってぇ」


...ハァッ...。このッ...!ハァ、アル中、めっ...!ハァ...ッ!!!


肝臓に、穴開け...。


そう思っている間に、学校の校門についた。

どうやら莉李羽亜も、一応学校付近に僕を飛ばしてくれたらしい。


...あの、抱きかかえられる事件さえなければ良かったのに...。


......あ......!!!!!!


「やだなぁ、運命の出会いをもたらした私に何そのく」

「莉李羽亜、お前、学校の中までついて来るなよ」


ああ、どうしよう、マズイ...。


ぐるぐると悩む僕を見て察したのか、莉李羽亜は「生意気な小僧!!!」と言いながらどこかに消えていった。

情景描写?そんなもん母の体に置き去った(ごめんなさいうまく書けないんです)

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